魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１１章 出向社員的ダンジョンマスター

第４１4話 困難地域があるから輸送コストが発生する。

　次の日となると、月下の庭園からフルメンバーの６名が到着していた。この砂の河は砂の女王の領域みたいなもので。一応水木には連絡しておくため、亜人には話が徹せるが月下及び魔王国のメンバーがいる事は秘密裏にしないといけない。が、この砂漠には基本人はいない。オアシスを伝う一部のキャラバン以外、そのオアシスの場所もすべて基本キャラバンが秘匿していた。なので、この砂漠を渡ろうという一般人はいなかった。また、彼らの多くは苦に対しても黙秘をした。そうでなくとも大軍を動かすには、この砂漠は補給が少なすぎる上に熱で、装備を付けたままの行軍ができない。この時点で砂漠の国サンディーンの首都迄、および対岸までたどり着くことは難しかった。それ位この砂漠は過酷である。日中は基本温度が４５度から６０度になり、夜は氷点下３０度にもなる、寒暖差と砂漠の砂が織りなす、足場の悪さと山や谷が行く手を阻み、死の砂漠として恐れられていた。その強固な天然要塞であるサンディーンはその大切な水を売り買いすることで成長した国家である。この大陸で唯一南と北をつなぐ商売を行い。貴重品を売りさばく。北からは鉄を。南からは綿を持って商売をする。そうすることで成り立つ大国、それがサンディーンだ。
「この砂漠を超える…か。」
「んだよ。この北側は亜人同盟の領地の一角、ザガートン国だべ。んだけど、最近になってこのサンディーンも亜人同盟だべ。」
「厳しいな。」
　ザガートン国と交流が深く、且つ商売相手であるサンディーンの女王は亜人同盟の話を聞くと即座に降伏し、同盟を結んだ。この砂漠は火とビゴは少なく、娯楽をザガートンと南に取られている以上、双方と敵対するのは難しい。どちらかの支えがなければ、サンディーンの女王はＤPでしか国民を生存できない立場にあった。そうなると、亜人と同盟を結び、できれば食料を引き出そうとした彼女の判断はだれの目にも理解できた。
「…敵の本拠地か。」
「勝手に敵にするな、俺を巻き込むな。」
　黒川は嫌な顔をした。魔王国にとってまだ亜人は”中立”であり、敵対をすぐにするつもりもない。月下はするつもりでも、これに巻き込まれたくない。
「そんな有名なのですが、亜人同盟は。」
　美玖は不思議そうに、目的地である咆哮の空を見た。何もないように見える。
「この世界最大の商会”ギルド”を持つ、世界最大のダンジョン組織だ。そして勇者を抱え込んで動く。巨大組織だ。」
「そうなんですか。」
「連中は人をだまし、人々をを不幸にする。我々の宿敵だ。」
「そうなのか？」
　流石に、その辺は黒川も知らないようだが。一方の黒川たちもフル装備の上８名が付き添っていた。このせっかくのタイミングで亜人同盟に調査員を送り付けれるなら情報が欲しい。当然寝返り工作をするにもまずは、状況の確認が欲しい。その為にえりすぐったエージェントたちだった。
「クカカカカ。そんなものは騙し合いの世の中だ、当たり前だろう、」
「そう言うのが嫌いなんだ。」
　どうもフルフェイスでわからないが。巨体の魔人もいる。
「今回は我が第一の僕も連れてきた。長丁場になるからな。」
「そういう事だ、クカカカカ。私はヴァンドレイという、よろしく頼む。お嬢もな。」
「…よろしく。」
　多少ぎこちないものの。美玖とヴァンドレイは握手していた。
「出発するだよ、この大砂海は非常に厳しいだべ。」
　その言葉に全員が歩みを始める。本来なら、タミさんが、メンバー全員をダンジョンに押し込み、飛行で通過する予定が、この厄介な物たちを連れて行かないといけない。が、マスターに問い合わせたところ。そういう事なら、見つかった場合、追いかけられたとして逃げるが、それまでは同行して、行方をつかんでおけという事になった。というのも、月下の庭園及び魔王国のメンバーだけでも実はこの砂漠を渡ることが可能だと判断できたからだ。主にダークボックスや水魔法である。物資さえ気にせず移動するだけなら、このメンバーなら厳しい自然があるというだけで、渡れる。という話である。そうであるなら、この”護衛”を頼む環境を利用して、連中の潜入先を特定しやすくしておく必要がある。
「行くだべ。」
　タミさんの影からいくつもの小鳥…ミヨちゃんをトップとする井原建築事務所厳選の”偵察部隊”である。それが空に飛び立つ。
「あの子たちが、警戒網の隙間探して呉れるべ。」
「行くぞ。」
　この旅最大の難所”大砂海”…厳しい旅路に全員が引き締め、一歩を踏み出した。