魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１１章 出向社員的ダンジョンマスター

第３９０話 行為の過程で不正を疑う者は意外と多いです。

何が…。」
　村に戻ってきた奥原と、黒川たちが見たのは、村人に囲まれ、石を投げられているミレイの姿だった。
「でも。」
「魔女が！」
「厄持ちが！」
　そこに一応…音無たちも歯噛みして見つめていた。
「どうしたの？」
「いえ、村人の一人からこの麦の実り方がおかしいと。そして私たちが畑を見ていたことは知っていたようで。どうも、ミレイさんが何かをして麦がこうなったのではないか。という話になって…。」
　歯切れの悪い葉隠の話によるとどうも、この収穫で実った麦が今まで取れた中で一番実っていた。夜の件はばれていなかった。が前日までの枯れた麦を知っていた彼らはこの麦の様子をいぶかしがった。いくら雨でもこの成長っぷりはない。と村人は考えた。がでミレイは”雨が降ったから”と説明した。これはみんなで打ち合わせた今回の
件への言い訳だった。がこれがまずかった。そこで出てきたのは気持ち悪いとか、雨は嘘で、植物を唾で育成したに違いない等の、彼女への非難だった。そしてそれはこのように石を投げて、非難するまでになっていた。
「でめえら！」
　その言葉を聞いた黒川が大声をあげる。
「なにしくさってんだよ！お前ら、村が助かったのに娘を石で打ち付けるしかできねえのかよ！」
　急な大声に黒川に全員が向く。
「お主たちは黙ってもらいたい。村の事じゃ。」
「お前らは。村の事なら、餓鬼を石で打ち付け、殺すこともいいのかよ、しかもこいつは村のために働いたんだろ？それが成功したら気持ち悪い？ふざけるな！」
　言葉とともに、村長を拳でブチ殴った。
「村長！」
「てめえら！…親もか！てめえらクズだ！ふざけるな！自分が理解できないことがあるからって拒絶して、しかもお前らのために働いた奴イジメるんとかふざけるな！」
　その気迫に…村全体が押される。
「お前らもだ。勇者とかいうなら、まず、こいつらからこの娘守るのが筋ってものじゃねえのかよ。それを見てるだけとかクズだ！てめえら！」
「…おらもさすがにこれは…好きではないだべよ。」
　二人のにらみに村人がたじろぐ。
「撤収だべ。これ以上ここで。モノを売るのはおらはちょっと許せねえだ。」
　タミさんからしたら、これは自分がしたことへの不当評価にしか見えなかった。
「な！」
「護衛の皆さんヨロシクだ。」
「…分かった。旗を抜け。撤収する。」
　そのまま速やかに全員はゴーレム車に乗り込み、村を去った。