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第9章 よそのダンマス求めて300里

第335話 大山鳴動して鼠一匹もいない

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「通過します。」
 お互い緊張のまま、普通の、何もない野原の上を馬車が通る。

カポッ、ガラガラガラ。ガタガタガタ

「通過完了。」
 全体の緊張は解けないまま、通り過ぎる。
「…。」
 そして馬車は無言のまま、街道の先、森林分まではいると、全員が一斉に息を吐く。
「大丈夫だ?」
「だと思うが…。そう言えば…。」
「ダンジョン領域で変なところでアラーム入れッと、うるさくて寝れんだ。」
 タミさんたちがほっと息を吐き、振り返らないように直進をしていく、月下の庭園の一応領域の線を抜け、馬車は内部に入っていく。
「だがこの線のひき方は国境線か?」
 一応今回は黒川が前の馬車。そして勇者パーティが後ろの馬車にいた。どちらにも即応できる戦力比にするためだ。何事もなく通るが、実際コアがやろうと思えばこの境界線から、更に視界内まで見る事ができるから、曲がるか、しばらく先までは監視体制となるが、ここからは距離のアドバンテージでどうにかなる。
「そっちさしらんけ、うちらだと、これ、国境線でなくて、容積地確保用の線だと言っていたべ。ほら、お前たち頼んだだよ。」
 馬車の荷台の中に隠れた庭の小鳥が旅立つ。今までは内部に入り込んだため内部からの調査となる。
「それにしても厄介だな。」
「リスク最小限がいいべ。今刺激すっと、与しやすいから、こっちに飛び火するべ。」
 わざと主語を抜き、お互い、聞かれてもいい会話に終始する。
「んだば、上だとこれ、領地確保用導線の可能性あるっぺ。だから…。」
「そんな無駄なことするのか?」
「前にテストしただ。あの細さの国境線だと、気が付いてもコアの視界を移動している間に通り抜けれるべ。」
「そうか…となるとそっちだな、唾つけか?」
 唾つけというのは、村とかの周りをダンジョン領域で囲み他のダンマスが飛び越えない限り占領不可能にする状態だ。村の領地の占拠には村人の許可が欲しいため。そこから作戦を立てて、領地化するという手が取られる。
「んだば、それも怪しいだ。外からの感触だと、大きい村なのに導線があっても支配してないとか、小さくても領域が無理矢理ひかれて占拠済みとか、あるべ。」
 実際千鳥万花ではマルワール帝国全土を領域化済みと、大森林南部を唾つけして囲ってある。ついでに大森林南部は大陸南部の7割を覆い、後の3割を国盗りで争う形であり、そのうち7割が魔王国、後の付随属国で占めている。後のごく少数領域をマルワール帝国で占めるが。ここに穀倉地帯や湿地帯が重なるため、食料においては優位に働く。が、戦争や動乱がないなら無論国土の大きい魔王国側の方が多く生産できるであろう、大平原を所有している。。ただ、マルワール側も大森林を縦で囲み、他の国からの開拓が出来ないように縦長の国土で守っている。大森林は莫大な資産でもあるからだ。ただ大森林は南北を巨大な山脈で分けるため開拓は一筋縄ではいかない。
「ここからが正念場だな…。」
「んだ。」
 それに対し、このザガートン大陸南部は広大な土地にいくつかの小型の山脈で南北が分断。侵攻ルートは限られる、がそれ以外は各国土毎に森林、平原や川湖が配置されており、豊かな国土を形成している、がその分、分裂した国家となっており、それが戦争の原資となっている。
「後は、村による際は注意が必要だべ。」
 この先もいくつも村占拠用導線が引かれた月下の領域や他の月下傘下のダンマスによる船が引かれ、どこが生きた監視船か不明だ。そのため・・・ここからは一筋縄でいかないだろう。
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