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第9章 よそのダンマス求めて300里

第328話 交渉は時として冷たく当たらないと儲けが出ません。

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  何事もなく、次の日となり、そして、ゴザを引いた露天に人は集まる。脇にはちゃんとシードルの樽がある。便でない理由は単純で瓶が開発されていないからだ。勇者大陸ではポーションは加工された”木の水筒”に入っており、これは聖女水も、飲み物も一緒。区別用に木にマークや文字が付いている。場所によっては紙でマーキングされており、他の大陸では飲み物があるだけで、それも、木を加工した器が多い。鉄や銅はまだ出回り始めたばっかりでしかも鉄に不純物が多く鋼鉄は山岳同盟の抱える”特産品”だ。銀や金はそれなりに…あると思う。
「皆さん、欲しいのはあるだか?」
 この時代娯楽はなく、時折来る行商人はそれ自体が娯楽であり、村での大イベントの一つだ。
「このシードルというのは?」
「うちらの飲み物でいいなら開けるだ。これどうだべ?」
 そう言うと、馬車から。奥原と陽華の二人が、木の板に載せ、木の器に並々とシードルを注ぎ、持ってくる。
「いいのか?」
「一人一杯だべ。たくさん飲まれると、売るもんがなくなるだ。」
 ただ、警戒してか、数人だけが、飲み物を受け取る、体格を見ると、かなり恰幅のいい男性が多い。
「ん!これは!」
 その言葉に数人の…顔に全員が注目する。
「どうだ?」
「甘いな。しかもさっぱりする。かなり上質な酒だな。」
「んだよ、うまくて腰が蕩ける、甘い酒だ。女も飲めば股を開く旨さだべ。胴だ、飲んでみるか?」
「いくらだ?」
「一樽、金貨2枚だべ、この旨さ、領主に献上してもおかしくないべ。」
 その場で全員の手が止まる。横に置かれた樽の大きさはそこまで大きい物ではなく、40㎏とかの1/4バレルほどの大きさで、そこまで大きくない。
「どうにかならんか?」
 囲みの中から老人が一人。前に出る。
「んだば、これを漬けこんだ木の実も高いべ。」
「銀貨40.だな。出せるのは。」
「商売にもならんべ、怒られるべ、」
「60.」
「元は領主にも出せるものを…それにみんなの顔を見てみるべ。」
 実はこれも…見世物として人気なのだ。ニンフたちの報告によるとこういう”値引き合戦”も店舗ではときどき行われる交渉という”ショー”だ。少し高めに値段を張り、それを安くさせる事で、買った側も、売った側も器量を魅せる事ができる、売る側は値引いてやったって事で。買った側は、みんなの為に交渉したという名誉が残る。その為
この時の会話の。面白さや返し言葉を楽しむという文化があるんだそうだ。その為、ニンフやキューピットたちから聞き出し、練習した。このためにタミさんは三日の準備期間を練習に使った。
「65.わしも飲みたいが、それをいくつも飲めないじゃあ、価値もない。」
「んだば…。第一どれだけほしいだよ?」
 そして、公証人のおじいさんが周りを見渡すと、数人が手を上げる。
「8じゃ。」
 少し多めの数を見積もる。
「んだば…。合わせで10でどうだか?」
 周りの顔は難色を示している。
「一樽70の5枚と銀貨60.が、6で。」
「…現金あるべか?」
 金貨は中世ファンタジーでは一枚村の中にあれば御の字の物だ。金貨5枚と言えば大金で、情報が知られれば村が襲われかねない大金だった。
「…ぐ…。」
 苦い顔をして顔を下げる。ただ、そこまでして買う価値があると思っているのだろう…。
「鬼じゃないべ、買取もするべ。9でどうだべ?」
「8で手を打とう。」
 シードル8樽が金貨9枚。4割近い割引だが。これでも想定より少し高めに売れている。
「後誰かあるべか?ないなら、お題を貰うべ、」
 ただ、こういう商売で一番時間がかかるのがこうした”現物が絡む清算”だ。ここから9枚になるように金貨、銀貨等を村からかき集め、道具を持ち込む。こうして集めた道具を次の町までに目利きして値付けをして売りながら旅をするのが”行商人”なのだ。但しここではもう観客はいないので値引き交渉は行われない。なぜなら最後に翻して
売ってもらえない。これが一番困るからだ。
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