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第8章 勇者プロデューサーへの道

第312話 定食屋、風切り亭

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 次の日になると、勇者たちは飯垣を除いて奥原の経営するカフェ…ではなく定食屋”風切り亭”に来ていた。
「へぇ…。」
 乾いた声が音無から漏れる、というのも外見は異世界定番風アメリカンバーだからだ。広い店内に間隔をあけられ導線重視の丸いテーブル。上を見ればゆったりと回る空気の撹拌ファン。渋い感じのバーという形態がそこにあった。
「凄い…ですね。」
「それが本当はね…。」
 奥原は億のいつもの席に座る。奥からコック帽をかぶった一人の美人の女性が現れ…。
「あらあら…。うフフフ…。」
 テーブルに料理とティーセットを持ってくるが、その笑みが…怖い。
「…えっと?」
「この子は、メイディオのメイ。」
「ヨロシクねぇ。」
「…よ、よろしく。」
 恐る恐る右手を出すと、名は両手でそれを握り…しばらく手の甲をさする。そして、不自然に含み笑いをしている、
「これでも、一応うちのダンジョン最大の戦力にして…。」
「戦力にして…。」
「うん。苦手なのよね。」
 一応料理はタミさん譲り。ダンマス向け料理もするのだが、可愛いもの好きのため…その妄想だけで手いっぱいだ。
「そうなんだ。」
「で、うちのコック。基本頼めば全部作るから。」
「ただ衣装浮いてません?」
「ああ…うん、」
 メイはコックなのだが、どう見ても衣装はウェイトレス風で、周りの衣装と完全なミスマッチだった。
「仕方ないのよ。」
「そうです。お嬢様は私のためにこんな衣装を用意したのですから。」
「…こんな…違う………。」
「すいません、陽華お嬢様。」
 メイは恭しく礼をする。
「どういう事なんです?」
 流石の葉隠さんも意味が変わらなかった。
「もともとここはカフェ開く予定で店建てたんだけど、井原含めみんなの反対にあって、定食屋になったのよ。セット料理全て全部銀貨5枚で出すって奴。」
「へぇ…。」
「で、あなた達にはこれを。」
 出してきたのは…普通の長い白を基調としたロングスカートのワンピースだった。
「ん?そっちの子みたく、ウェイトレスじゃないの?」
「それがね…後でわかったのよ…まず短い布の衣装は基本ここだと”貧しい”か”性を売る”かどっちかしか見られないのよ。」
「へ?」
「で、店明けた時本当は、ダンジョンから数人ウェイトレス出す予定だったのよ。だけど全員まあ一時間に一回は言い寄られるわ。繁盛時だと数人。」
「…それは…。」
 流石に、店で働くたびにそれでは仕事にならない。
「しかも断られると、周りの客が騒ぐ騒ぐ。で、一時的に男性を追っ払ったのよ。…そしたら、女性が見たら”不倫推奨”みたく見えたらしくて、女性は衣装を見た瞬間に去っていくわ…。あれは散々だった。」
「理解がないのがつらいですね、こんなにかわいいのに。」
 メイも自分の衣装のどこが悪いのか、わかっていないようだった。
「で、数人捕まえて、聞いて、衣装を普通の服に変えたのよ。で、女性向けの、集まれるカフェ風にはなったんだけど…。」
 奥原がダークボックスから取り出したのは数種類あるミニスカートがらウェイトレス衣装だった。
「こういうの来てやる店…っていうのが憧れだったのに…できないのよ。で…これ見たメイが、飛びついたわけ。」
「そう言う訳だったんですね。」
「で。一応この店は2階に個室。地下は一階が従業員控室と食糧庫。後冷蔵庫もあるわ。で…。2階からダンジョン。」
「ダンジョンですか。」
「一応ね、うちら”千鳥万花”は基本”親しき中にも礼儀あり”って事で、念の為に防衛施設を作って裏切り対策してあるのよ。」
 井原からすれば、イーハグループを狙う”貴族”が出た場合軍隊を出して蹂躙することも考えられたのでそれ対策を兼ねた防衛施設の水晶だった。
「さすが…。」
「一応、ここは私と陽華の二人がダンジョンマスターだから並のダンジョンより、きついはずよ。」
「へ?この子…ダンジョンマスターですか?」
「…霊…ヨロシク………。」
 陽華が…絞り出すような小さい声で小さく頭を下げた
「こんな子でもダンジョンマスターですか。」
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