魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第４章 始動！千鳥万花

第１７０話 行商する勇者”ヤマシロ”

「で、あの子はどうするだわさ。」
「しばらくは教育だな。こっちで暮らすにはきつい。」
　ゆっくり村に向かって歩いていた。一応向こうのダンジョンの出入り口の閉鎖前にこの大陸の村を見るべく鳥海、シロウ、井原が道路を歩いていた。ミヨちゃんが護衛に小鳥となって肩に乗っていた。
「だわさ。けどここも平和だわさ。戦乱とかないだわさ。」
「爺さんがこっちで余生を過ごす気になったのもわかるな。スローライフに縁はないと思ったがな…。」
「お前、生真面目か？肩の生き抜けよ、適度にサボった方が仕事は…。」
　シロウ…一応あんた真面目過ぎて死んだ口だぞ？
「ん？どうした？」
　目の前にゴーレムが引いた荷車が通っていく。馬型のゴーレムの為気が付きにくいが、あれはゴーレムだった。
「…あんたら…。」
　馬車が途中で止まると…数人の女性と男性が一人おりてきた。
「何だ？何かついているか？」
「魔王の手下か？」
「何だわさ？」
　ステータスをこっそり見る…。
「あんたら…勇者か？」
「有名なのか？目立たないはずだがな…一応俺達は通称”山岳の勇者”ヤマシロだ。この辺で行商を行い、支援活動を行っているが…ダンマスが3人か。」
「大丈夫？」
「なんだ？｝
　シロウも構えるが手でせき止める。
「いや、戦う気はない。この辺に知り合いがいるんでね。そいつに・・・。」
「あのスライムじいさんか？」
「ああ、世話になったことがある。だからまあ、酒でも持って遊びに来たんだ。」
「勇者様！」
　流石に勇者の取り巻き…どう見てもチーレムだが。それが武器を構える。
「いや…勝てないだろうな…俺達はあまり強くないんだ。それに…。ここで争えば、村が…。」
「分かっているだわさ。戦うとかするだわさ？闘うのは愚か者がすることだわさ。」
　こっち側は自然体のままだ、実はミヨちゃんがこっそり構えているうえに領域守護ＬＶ10を展開していた。これは周囲にいる味方のステータスを上げるので、支援になる。
「…。だわさ？」
「口癖だ。気にするな。闘う気はないって事だ。であんたらはどうしてここに？」
「ああ、行商だ、この辺の村に商品を届けに来たんだ。この辺の村には助けてもらったお礼があるからな。村に足りない物資を買い付けて、売りに来るんだ。そしてここから様々な物を持って売りに行くんだ。」
「私たちが何か買おうか？私たちはこういう人里に出てくるのが初めてでね。」
「…ダンマスだからか？凶悪ダンジョンを出す魔王の卵とは思えないな。」
　いろいろお互い情報の齟齬が凄いな。
「田舎者でね、物々交換はうちで作ったハムとかでいいか？」
「あの爺さんの所には行ったが、今からか？」
「そうだな、行くつもりだ。」
「うちの商会の商品は魔道具か食品しかないんだ。いいか？」
「構わないぞ、田舎者だからな。俺達は。ミコト、持って来て。」
「はい。」
　少し緊迫した空気が流れるが白い布が引かれ、その上に商品がバット開かれる。
「何か急に出てきたな。」
「ああ、アイテムボックスって奴だ。」
「どんなものか知らんが、凄いな…。」