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第一章 流れ者の村
第18話 ダンジョンの本来の形
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「お前ら!あのガキぶっ殺して、あいつの武器を奪うんだ、そうすればこのクズみたいな武器じゃないもっとすごい武器が手に入るはずだ!」
「おー!」
村人たちは気勢を上げ、目的の洞窟周辺に来る…この辺りは木が切られ、開けている。
「…この奥にあったんだよな?家?」
「ああ。だが数本のあれしかなかった。こんな石っころじゃない。きっと奥にもっといいものがあるはずだ、隠したあいつは気に食わない、殺してしまえ。」
男たちの目は地走り、もはやそれは直線的な事しか考えられない目だった。が入った彼らが見たのは…広く広大な家々がある…大通りみたいな状態の町そのものだった。周囲は明るく、
光は洞窟内にもかかわらわず、煌々と照っていた。
「なんだ?」
「いや、これは前にはなかったぞ。」
流石の光景に男たちがざわつく…。
『警告いたします。この建物はマスターの建造物です。立ち入りに許可を持たない者は、敵意ある存在と認証します。敵で無いなら、外に出てください。出ないなら、あなた方を敵と認証し、排除します。また、その際に生死は問いません。ご了承ください。』
無機質の音量が響き渡る。流石に全員、この声には慌てた。この世界においてこういう”放送”に経験はない。
「なんだ!あのガキを出せ!あいつの道具が壊れたんだ。私達の兄貴がかすり傷を負ったんだ。お前らが私たち村人を殺そうとしたんだ!」
長が声を上げる。
『退出を未確認。抹殺します。パターンA。』
その声と共に村人の足元に狼が牙をたて、バランスを崩し、倒れ込む。周囲の建物から狼が現れ、続々と村人たちを襲い、噛みつく。それはもう、不意打ちが成功し、全員に3体ずつ襲う
狼20体の群れに飲み込まれ、それはどんどん噛みつかれていく。
「ぎゃー!」
叫び声がこだまする。そのあまりの状況に村長は周囲を…
「ウガァ!」
足元に一体のみならず四肢をすべて一匹ずつ噛みつき、その牙を全力で突き立てる。あまりの痛みに叫び声をあげる。このために木を伐り準備したのは、20体の狼たちだった。警備部隊であり、元々自分もウルフだった彼はその有益性を理解していた。今回の件を了承した者、えさ場の作成であるパークボアのスポナーを建設し、狩りが可能だったからだ。その猛攻を前に一人、一人、命を散らせていく。最後に立っていた…村長も、もう十分立つ頃には血まみれであり、腱も切れ、もはや立っているだけの姿となった。狼たちが人間を食べなかったのはコアによる命令で死体を5体満足の状態で保存するためだ。
「な、なんだよ…。これはよ!」
最後の一人である。村長が、フラフラになりながら見る先には…あの男がいた。そして、手空きの狼たちは全て整列して、主を迎えた。
「ここはダンジョンだ。侵入者は殺すのが掟だ。君は死んでもらう、強いて言うなら”君たちはここに来なかった”いいね。」
「何だと!」
そして、井原は姿を狼に戻し、口に黒曜石のナイフを咥えた。
「せめて…死ね。」
その言葉にイハラが駆け寄ると、一気に奇美元をナイフで切り裂く。鋼鉄に近い硬さと鋭さを持つ黒曜石は、それだけで鋼鉄に近い…文明の力に勝ちうる”自然”だった。その鋭さは、すっと軽くなぞるだけで、物が切れる…そんな黒い…石だった。そして、その黒曜石が…。血に染まっていった。
「…これは…。」
モアレたちは、料理が終わり、それを置いたまま、いつの間にかいなくなった井原を探していた。そしてみたのは…さんざんに死ぬ村人たちの男衆と…。その前にたたずむ狼たちだった。
「ダンジョンは本来、侵入者を餌にして。そいつを殺すことで収益を得る。殺さなくてもいいが…殺す方が高いDPがもらえる。」
「・・・。」
ひときわ大きな狼である井原が、元の姿に戻る。
「私はこう見えて人間ではない。君たちと本来手を結び友好的にしようと考えていた。だが…あの様子では搾取しか私にはなかった。理解してくれるかな…。」
「…こいつらに下卑た目で見られたのは一度ではないが…悪い連中ではなかった。」
『今回のバトルで12万DPの収益がありました。またその死体を売却することでさらに14万DPを得る事が出来ます。どうしますか?』
「欲しがる奴はいるのか?」
『人型モンスターの材料として、進化材料に使います。取っておくことでもいいので。』
…さすがの言葉にモアレたちは黙ってしまった。
「せめて弔う時間はくれてやれ。そして、売らん。進化素材で取っておく。・・・モアレたちにとっては、近しい人間が死んだんだぞ、少しは気を使え。」
『これはあるダンジョンマスターが言われたことばに”せめて有効利用して、無駄でない生であった”と弔う事こそが、最大と聞いておりましたので。』
「確かにそうだ。…が、少し…せめてか弱い父母がいなくてよかった。」
モアレは絞り出すように声を上げた。それは弱弱しい者だった。
「これが…。」
「ああ、ダンジョンマスターだ。ダンジョンを作り、そして、人を招き、餌にして自分たちは存続する。但し餌にするのは人間の肉体だけではない。・・・”人間の魔力”も餌らしい。その代わり、共存体制でお互いに益を渡して生きていくことも可能だ。が、襲い来る敵を手放しで迎えるほど私達は甘くない。」
捕虜も提案したが、その為に食事も出さないといけない事。収益でプラスになるには”十年単位”での保存が欲しい事を考えると、友好的な人員以外このダンジョンで生かしておくには少し辛い事が分かっている。何しろ困窮しているのだ、今残っている村人でもその件は用が足りるのだ。
「すまない…せめて…いや、やめておこう、君たちの機嫌を損なうと死ぬのは私達だ。」
「おー!」
村人たちは気勢を上げ、目的の洞窟周辺に来る…この辺りは木が切られ、開けている。
「…この奥にあったんだよな?家?」
「ああ。だが数本のあれしかなかった。こんな石っころじゃない。きっと奥にもっといいものがあるはずだ、隠したあいつは気に食わない、殺してしまえ。」
男たちの目は地走り、もはやそれは直線的な事しか考えられない目だった。が入った彼らが見たのは…広く広大な家々がある…大通りみたいな状態の町そのものだった。周囲は明るく、
光は洞窟内にもかかわらわず、煌々と照っていた。
「なんだ?」
「いや、これは前にはなかったぞ。」
流石の光景に男たちがざわつく…。
『警告いたします。この建物はマスターの建造物です。立ち入りに許可を持たない者は、敵意ある存在と認証します。敵で無いなら、外に出てください。出ないなら、あなた方を敵と認証し、排除します。また、その際に生死は問いません。ご了承ください。』
無機質の音量が響き渡る。流石に全員、この声には慌てた。この世界においてこういう”放送”に経験はない。
「なんだ!あのガキを出せ!あいつの道具が壊れたんだ。私達の兄貴がかすり傷を負ったんだ。お前らが私たち村人を殺そうとしたんだ!」
長が声を上げる。
『退出を未確認。抹殺します。パターンA。』
その声と共に村人の足元に狼が牙をたて、バランスを崩し、倒れ込む。周囲の建物から狼が現れ、続々と村人たちを襲い、噛みつく。それはもう、不意打ちが成功し、全員に3体ずつ襲う
狼20体の群れに飲み込まれ、それはどんどん噛みつかれていく。
「ぎゃー!」
叫び声がこだまする。そのあまりの状況に村長は周囲を…
「ウガァ!」
足元に一体のみならず四肢をすべて一匹ずつ噛みつき、その牙を全力で突き立てる。あまりの痛みに叫び声をあげる。このために木を伐り準備したのは、20体の狼たちだった。警備部隊であり、元々自分もウルフだった彼はその有益性を理解していた。今回の件を了承した者、えさ場の作成であるパークボアのスポナーを建設し、狩りが可能だったからだ。その猛攻を前に一人、一人、命を散らせていく。最後に立っていた…村長も、もう十分立つ頃には血まみれであり、腱も切れ、もはや立っているだけの姿となった。狼たちが人間を食べなかったのはコアによる命令で死体を5体満足の状態で保存するためだ。
「な、なんだよ…。これはよ!」
最後の一人である。村長が、フラフラになりながら見る先には…あの男がいた。そして、手空きの狼たちは全て整列して、主を迎えた。
「ここはダンジョンだ。侵入者は殺すのが掟だ。君は死んでもらう、強いて言うなら”君たちはここに来なかった”いいね。」
「何だと!」
そして、井原は姿を狼に戻し、口に黒曜石のナイフを咥えた。
「せめて…死ね。」
その言葉にイハラが駆け寄ると、一気に奇美元をナイフで切り裂く。鋼鉄に近い硬さと鋭さを持つ黒曜石は、それだけで鋼鉄に近い…文明の力に勝ちうる”自然”だった。その鋭さは、すっと軽くなぞるだけで、物が切れる…そんな黒い…石だった。そして、その黒曜石が…。血に染まっていった。
「…これは…。」
モアレたちは、料理が終わり、それを置いたまま、いつの間にかいなくなった井原を探していた。そしてみたのは…さんざんに死ぬ村人たちの男衆と…。その前にたたずむ狼たちだった。
「ダンジョンは本来、侵入者を餌にして。そいつを殺すことで収益を得る。殺さなくてもいいが…殺す方が高いDPがもらえる。」
「・・・。」
ひときわ大きな狼である井原が、元の姿に戻る。
「私はこう見えて人間ではない。君たちと本来手を結び友好的にしようと考えていた。だが…あの様子では搾取しか私にはなかった。理解してくれるかな…。」
「…こいつらに下卑た目で見られたのは一度ではないが…悪い連中ではなかった。」
『今回のバトルで12万DPの収益がありました。またその死体を売却することでさらに14万DPを得る事が出来ます。どうしますか?』
「欲しがる奴はいるのか?」
『人型モンスターの材料として、進化材料に使います。取っておくことでもいいので。』
…さすがの言葉にモアレたちは黙ってしまった。
「せめて弔う時間はくれてやれ。そして、売らん。進化素材で取っておく。・・・モアレたちにとっては、近しい人間が死んだんだぞ、少しは気を使え。」
『これはあるダンジョンマスターが言われたことばに”せめて有効利用して、無駄でない生であった”と弔う事こそが、最大と聞いておりましたので。』
「確かにそうだ。…が、少し…せめてか弱い父母がいなくてよかった。」
モアレは絞り出すように声を上げた。それは弱弱しい者だった。
「これが…。」
「ああ、ダンジョンマスターだ。ダンジョンを作り、そして、人を招き、餌にして自分たちは存続する。但し餌にするのは人間の肉体だけではない。・・・”人間の魔力”も餌らしい。その代わり、共存体制でお互いに益を渡して生きていくことも可能だ。が、襲い来る敵を手放しで迎えるほど私達は甘くない。」
捕虜も提案したが、その為に食事も出さないといけない事。収益でプラスになるには”十年単位”での保存が欲しい事を考えると、友好的な人員以外このダンジョンで生かしておくには少し辛い事が分かっている。何しろ困窮しているのだ、今残っている村人でもその件は用が足りるのだ。
「すまない…せめて…いや、やめておこう、君たちの機嫌を損なうと死ぬのは私達だ。」
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