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月光の花嫁
記憶に残る感触をもう一度
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朝目が覚めると目の前にリリアの顔が飛び込んできた。抱き合って……と言うわけではないが、引っ付いて寝たのだから目の前にあるのは当たり前なのである。
そのリリアはまだ寝ているのかまぶたは閉じられている。今が何時くらいなのかわからないがフルネールに呼び出されたことで睡眠ほぼとれなかった。
だが、お告げの中で触れた頬の感触が微かに思い出せる。すべすべして柔らかかった頬が。
そのせいか、頭が働かない大地はその柔らかさを求めて手を伸ばしてしまった。その手の行き着く先はリリアの頬である。
ピトっと大地の掌がリリアの頬に触れた。
「ひゃう!」
と、一瞬リリアは閉じていたまぶたを開いて驚いた。そして、取り繕うように慌てて目を閉じる。
「……アー、リリアサン。モシカシテオキテマス?」
リリアの反応で自分がやったこと、そして、狸寝入りを決めていたリリアを見て大地の頭の中では『通報』やら『牢屋』やら『セクハラ』などの単語がドンドン出てくる。
「えっと……はい……」
大地のカタコトによる問い詰めに観念したようにリリアはゆっくりと目を開けた。
「え、えへへ……」
誤魔化す笑みを浮かべるリリアだ。とりあえず急に触れたことで怒っていないことにほっとする。
「あ、すまん。すぐ――」
「待ってください」
手を離そうとしたタイミングで何故かリリアから『動くな』の指示が来た。もしかしたらこの状況からゆするつもりなのか?と一瞬考えたが、リリアはそんなことを言う女の子ではないと考えを改める。
「ど、どうした……」
「そのままでいいんですけど……私もダイチさんに触っても良いですか?」
ゆすられた方がマシだった気がする。え?何その提案は。これ断っても、断らなくても人生つんだのか?
「……構わないけど良いもんじゃないぞ」
どのみち、現状の主導権はリリアだ。ここでヘタに動けば(社会)人生が終わる。
「はい」
リリアの手が大地の頬へ伸びる。ピトりとひんやりした指が触れた。そして触れる面積が徐々に増えていく。
「ダイチさんの頬はざらざらしていますね」
「そらおっさんの頬だからな。何を期待してたんだ?」
「えへへ……」
不思議とリリアは自分の頬が熱くなるのを感じる。頬だけじゃない。顔が耳が熱い。そして胸からドキドキと音がなるのが聞こえてくる。
前にもあった……この不思議な感覚。その時よりも一段と鼓動が早い気がする。わからないけれど……ずっと感じていたい。そう思ってしまう。
直後、襖が動く気配を感じた。大地とリリアはそれにより飛び起きると同時に少し離れて正座する。そのタイミングで襖が開かれた。
「あら、ご朝食の準備ができていますので御呼びに来たんですが二人とも起きてらしたんですね」
このお城に使える女中がそう言ったあと、布団をちらりと見た。
「昨日はお楽しみだったんですね」
「何もしていないから!!」
クスクス笑っている女中が「お布団がお一つしか使われていないようですし」と、現状を把握しているといった様子で答える。
それについて更に弁明する大地を他所にリリアは何の話しかわからず首をかしげ、話についていけないリリアは窓から覗く清々しい朝に全部無事に終ったことを実感的するのだった。
そのリリアはまだ寝ているのかまぶたは閉じられている。今が何時くらいなのかわからないがフルネールに呼び出されたことで睡眠ほぼとれなかった。
だが、お告げの中で触れた頬の感触が微かに思い出せる。すべすべして柔らかかった頬が。
そのせいか、頭が働かない大地はその柔らかさを求めて手を伸ばしてしまった。その手の行き着く先はリリアの頬である。
ピトっと大地の掌がリリアの頬に触れた。
「ひゃう!」
と、一瞬リリアは閉じていたまぶたを開いて驚いた。そして、取り繕うように慌てて目を閉じる。
「……アー、リリアサン。モシカシテオキテマス?」
リリアの反応で自分がやったこと、そして、狸寝入りを決めていたリリアを見て大地の頭の中では『通報』やら『牢屋』やら『セクハラ』などの単語がドンドン出てくる。
「えっと……はい……」
大地のカタコトによる問い詰めに観念したようにリリアはゆっくりと目を開けた。
「え、えへへ……」
誤魔化す笑みを浮かべるリリアだ。とりあえず急に触れたことで怒っていないことにほっとする。
「あ、すまん。すぐ――」
「待ってください」
手を離そうとしたタイミングで何故かリリアから『動くな』の指示が来た。もしかしたらこの状況からゆするつもりなのか?と一瞬考えたが、リリアはそんなことを言う女の子ではないと考えを改める。
「ど、どうした……」
「そのままでいいんですけど……私もダイチさんに触っても良いですか?」
ゆすられた方がマシだった気がする。え?何その提案は。これ断っても、断らなくても人生つんだのか?
「……構わないけど良いもんじゃないぞ」
どのみち、現状の主導権はリリアだ。ここでヘタに動けば(社会)人生が終わる。
「はい」
リリアの手が大地の頬へ伸びる。ピトりとひんやりした指が触れた。そして触れる面積が徐々に増えていく。
「ダイチさんの頬はざらざらしていますね」
「そらおっさんの頬だからな。何を期待してたんだ?」
「えへへ……」
不思議とリリアは自分の頬が熱くなるのを感じる。頬だけじゃない。顔が耳が熱い。そして胸からドキドキと音がなるのが聞こえてくる。
前にもあった……この不思議な感覚。その時よりも一段と鼓動が早い気がする。わからないけれど……ずっと感じていたい。そう思ってしまう。
直後、襖が動く気配を感じた。大地とリリアはそれにより飛び起きると同時に少し離れて正座する。そのタイミングで襖が開かれた。
「あら、ご朝食の準備ができていますので御呼びに来たんですが二人とも起きてらしたんですね」
このお城に使える女中がそう言ったあと、布団をちらりと見た。
「昨日はお楽しみだったんですね」
「何もしていないから!!」
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それについて更に弁明する大地を他所にリリアは何の話しかわからず首をかしげ、話についていけないリリアは窓から覗く清々しい朝に全部無事に終ったことを実感的するのだった。
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