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月光の花嫁
力の差があっても退けない時はある
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マルクスの手刀がモリスの胸を貫く寸前で止まった。
「……出てくるとは中々殊勝な心がけじゃないか。と言いたいところだが、俺の部下達はどうした?この城の外も中も見回りをしているはずだが?」
マルクスの眼光は声の主であるシーラへと向けられていた。ただ、その視線には明らかな不機嫌さが混じっている。
「ああ。それなら全員動けなくしておいた」
シーラの隣へ立った大地がそう告げるとマルクスは『誰だお前?』といった様子で見る。だが次の瞬間、マルクスは何かを納得する。
「なるほど……良いだろう少し交渉でもしようか。この男の命を助けたければ――」
そう言った直後、マルクスは一度だけ畳を強く踏みつけた。
「おいおい、せっかちだな」
マルクスが足を退けると大地が召喚した小蜘蛛が破壊されていた。
まじかよ……。小蜘蛛を感知したことも驚きだけど壊せるとは思わなかった……。
「んで話の続きだ。シーラと言ったよな?お前と引き換えだ」
「そんなこと……させるか!」
マルクスが視線をシーラに向けたことでモリスは好機と踏んで小刀を振るった。だが、マルクスの拳で刀が弾かれ、背後に回られ、後ろから首を捕まれてしまった。
「そのダメージじゃろくに動けないだろう……バカな奴だ」
「や、やめて!!」
シーラが再び叫んだ。
「わ、わかりました。私がそちらに行くから……モリスを離して!」
「シーラだめだ!!こいつらは君を利用してデルラトを呼び出すつもりなんだ!そんな凶悪なモンスターが放たれれば大変なことになってしまう!!」
「でも!!このままじゃモリスが!」
「俺のことは――ぐぅっ!!」
モリスが最後までいう前にマルクスがモリスの首を掴む手に力を込める。
「さぁおしゃべりは終わりだ。助けたければ来い!」
「だ……め……だ……」
モリスが何とかその言葉を振り絞るが、その意図に反してシーラはマルクスへと近づいていく。そして、もうすぐ手がシーラに届く範囲に入るとわかったマルクスはモリスを押し出して投げるように離してシーラへと近づきながら手を伸ばした。
「そこで終わりだ」
マルクスの手がシーラに届く前に大地が割って入る。敵がモリスから離れて隙を見せた絶好の機会だ。
当然、大地は拳を振るう。しかし、マルクスの腕に遮られてしまいしっかりとしたダメージを与えることはできなかった。それでもシーラから離す事はできたのは行幸だろう。
「リリア!」
「わかってます!」
モリスの治療を頼もうとしたがリリアはすでに動いていた。なれば……後はそこの男を締め上げればまずは一段落だ。
「なるほど。お前強いな……何者だ?」
「答えてやる義理はないな」
大地はハンドガンを召喚すると共に引き金を引いた。音を立てながら弾丸は発射されマルクスの肩を簡単に射ぬいた。
肩から血が吹き出し、腕を伝って畳の上にポタリと血が垂れる。だが、マルクスは笑みを浮かべていた。
「俺ではお前に勝てないだろう……だが、使命は果たす」
その直後だった。大地の足元付近にいつのまにかに転がされていたちっちゃな玉が破裂した。その音はかなり大きく、そして辺り一面をまばゆい光で包んだ。
『くそ!フラッシュバンか』
確かに大地はそう言ったのだが、先程の爆音と閃光によって自分の言葉が自分の耳に届かない。それどころか視界すら正常に機能していないのだ。
どこから攻撃してくる?
数秒待っても何もアクションを起こさない。となると……。
『しまった!』
ままならない視界のまま先程シーラがいた場所へと手を伸ばす。だが、その手が何かを掴むことはなかった。
ようやく耳と目の機能が戻るとシーラとマルクスはその場におらず、精霊のシルフが連れ去られたと慌てふためいている。
「リリア大丈夫か?」
未だ少しだけ目を回しているリリアへ声をかけると「は~い~。まだ少しくらくらしますが~」と状況を全くわかっていない事がありありとわかる間延びした声で返ってきた。
「シーラは何処に!?」
フラッシュバンのダメージから復活したモリスがシーラのいた場所までよろよろと歩いてきて言った。彼の受けたダメージはあの短い時間でリリアが完璧に治しているが体力までは治らず歩くのも辛そうだ。
「連れ去られた」
そう大地が伝えるとモリスは「そんな……」と項垂れる。
「やつらがシーラを連れて向かう先は何処かわかるか?」
その問いに答えたのは偉そうな服を着た男だった。とは言え先程から気にはなっていた。モリスもそうだが、ここの住人は全員ウサギの亜人らしくウサ耳である。
「恐らく月光の塔だ……」
「月光の塔……ね。んであんたは?」
「ワシは月の都を統括しているプラム・ロンドメアだ」
げ!……統括ってことはこのお城の主だよな?ため口で話しているけど偉いおっさんだったわけだ……よし!今さら遅いだろうから諦めてこのまま勢いに任せていこう!
「そうか。その月光の塔は何処にあるんだ?」
「ここから南西だ……だが、なぜお主らがそれを聞く?それに何故シーラと一緒にここへ来た?お主らは何者で目的はなんだ?」
「一度に聞きすぎだろ!悪いがさっきからシルフが急がないと危険だと急かしてきているんだ。全部答える時間はない。だから一つだけ、俺の名前は大地であっちのちんちくりんがリリアだ。じゃあな!」
そう一息に大地が言うと「ちんちくりんじゃありません!!」とリリアから抗議の声が聞こえてくる。だが、リリアも大地は表に出さないが焦りを感じているのを理解しているのか、プラムにペコリとお辞儀してから「すみません。後でまた来ますからお話はその時に」と言って大地の近くまで駆け寄る。
「土足で上がってすまなかった。あと、シーラを助けに行ってくる」
廻縁と呼ばれる縁側へ立つ。そして空飛ぶ乗り物を召喚する。それは少し大きめな箱で四隅に扇風機のような回る羽がついている。まるでドローンを大きくした物だ。とても簡素な作りだが今はデザインにこだわる余裕はない。
それに大地が先に乗り込んだ後、リリアへ手を伸ばして乗るのを手助けする。そして、いざ行こうとした時、天守閣の間から声が聞こえてきた。
「待ってくれ!俺も……俺も連れて行ってくれ!!」
モリスが近づきながらそう言ってきた。先程よりは体力が回復しているだろうけど危険だと判断せざるを得ない。
「またあいつらと戦うことになるぞ?」
「わかっている」
「なら、来るなよ。次戦ったら死ぬぞ?」
少しだけ黙ってしまったモリスは顔をあげる。
「……それでも、それでも俺は行きたい!頼む!」
「シーラを心配しての事だろうけど、俺がしっかり助けてくるからそこで待ってろよ」
何かの物語に出てくる主人公を突き放して功績を独り占めしようと画策する噛ませ犬キャラの台詞になってしまったが、一応モリスを心配しての言葉だ。
「嫌だ!」
だが、モリスは聞き入れない。……だだっ子め。
「何でだよお前の力じゃあぶねぇって言ってんだよ!」
さっきの男にぼこぼこにされていたのを知っているからこそ、力の差がわかり次は死ぬだろうと予測できてしまう。そして、大地の言い方に困り顔をしているリリアが口を出さないのもわかっているからだ。
「好きだからだ。俺は巫ひ……シーラが好きだからだ。俺が彼女を守れるほど強ければこんなことにならなかった。でも!だからこそ!俺はせめて彼女が何処にいても助けに行ける男で在りたい!!!」
おや、見た目クール系なのに熱い男だ。
「そうか、わかった。じゃあ乗れよ」
「え"!?」
大地の変わり身の速さにリリアが驚きながら顔を向けてきた。その顔には「なんで?」と言いたげである。
「いやだって……惚れた女を助けに行くほどのロマンは俺には止められないからな」
移動手段は大地が出したものだから権限は大地にあるが、危険なことにはかわらずリリアが「でも!」と言った。それにたいして大地はリリアの耳元でそっと聞くように言う。
「リリアだって捕まった時に助けに来てほしいだろ?」
それを聞いたリリアが黙って俯いたことで了承と取る。今大地が言った言葉で『カッコいい男に』と言う一文をいれ忘れたがきっと勝手に保管したのだろう。日が落ち始めていて彼女の顔が赤くなっているかわからないが照れているようにも思える。
やはりリリアもお姫様だな。
「すまない。よろしく頼む」
モリスがこのドローンへ乗った事を確認した大地は月光の塔へ向けて動かし始めた。
「……出てくるとは中々殊勝な心がけじゃないか。と言いたいところだが、俺の部下達はどうした?この城の外も中も見回りをしているはずだが?」
マルクスの眼光は声の主であるシーラへと向けられていた。ただ、その視線には明らかな不機嫌さが混じっている。
「ああ。それなら全員動けなくしておいた」
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「そのダメージじゃろくに動けないだろう……バカな奴だ」
「や、やめて!!」
シーラが再び叫んだ。
「わ、わかりました。私がそちらに行くから……モリスを離して!」
「シーラだめだ!!こいつらは君を利用してデルラトを呼び出すつもりなんだ!そんな凶悪なモンスターが放たれれば大変なことになってしまう!!」
「でも!!このままじゃモリスが!」
「俺のことは――ぐぅっ!!」
モリスが最後までいう前にマルクスがモリスの首を掴む手に力を込める。
「さぁおしゃべりは終わりだ。助けたければ来い!」
「だ……め……だ……」
モリスが何とかその言葉を振り絞るが、その意図に反してシーラはマルクスへと近づいていく。そして、もうすぐ手がシーラに届く範囲に入るとわかったマルクスはモリスを押し出して投げるように離してシーラへと近づきながら手を伸ばした。
「そこで終わりだ」
マルクスの手がシーラに届く前に大地が割って入る。敵がモリスから離れて隙を見せた絶好の機会だ。
当然、大地は拳を振るう。しかし、マルクスの腕に遮られてしまいしっかりとしたダメージを与えることはできなかった。それでもシーラから離す事はできたのは行幸だろう。
「リリア!」
「わかってます!」
モリスの治療を頼もうとしたがリリアはすでに動いていた。なれば……後はそこの男を締め上げればまずは一段落だ。
「なるほど。お前強いな……何者だ?」
「答えてやる義理はないな」
大地はハンドガンを召喚すると共に引き金を引いた。音を立てながら弾丸は発射されマルクスの肩を簡単に射ぬいた。
肩から血が吹き出し、腕を伝って畳の上にポタリと血が垂れる。だが、マルクスは笑みを浮かべていた。
「俺ではお前に勝てないだろう……だが、使命は果たす」
その直後だった。大地の足元付近にいつのまにかに転がされていたちっちゃな玉が破裂した。その音はかなり大きく、そして辺り一面をまばゆい光で包んだ。
『くそ!フラッシュバンか』
確かに大地はそう言ったのだが、先程の爆音と閃光によって自分の言葉が自分の耳に届かない。それどころか視界すら正常に機能していないのだ。
どこから攻撃してくる?
数秒待っても何もアクションを起こさない。となると……。
『しまった!』
ままならない視界のまま先程シーラがいた場所へと手を伸ばす。だが、その手が何かを掴むことはなかった。
ようやく耳と目の機能が戻るとシーラとマルクスはその場におらず、精霊のシルフが連れ去られたと慌てふためいている。
「リリア大丈夫か?」
未だ少しだけ目を回しているリリアへ声をかけると「は~い~。まだ少しくらくらしますが~」と状況を全くわかっていない事がありありとわかる間延びした声で返ってきた。
「シーラは何処に!?」
フラッシュバンのダメージから復活したモリスがシーラのいた場所までよろよろと歩いてきて言った。彼の受けたダメージはあの短い時間でリリアが完璧に治しているが体力までは治らず歩くのも辛そうだ。
「連れ去られた」
そう大地が伝えるとモリスは「そんな……」と項垂れる。
「やつらがシーラを連れて向かう先は何処かわかるか?」
その問いに答えたのは偉そうな服を着た男だった。とは言え先程から気にはなっていた。モリスもそうだが、ここの住人は全員ウサギの亜人らしくウサ耳である。
「恐らく月光の塔だ……」
「月光の塔……ね。んであんたは?」
「ワシは月の都を統括しているプラム・ロンドメアだ」
げ!……統括ってことはこのお城の主だよな?ため口で話しているけど偉いおっさんだったわけだ……よし!今さら遅いだろうから諦めてこのまま勢いに任せていこう!
「そうか。その月光の塔は何処にあるんだ?」
「ここから南西だ……だが、なぜお主らがそれを聞く?それに何故シーラと一緒にここへ来た?お主らは何者で目的はなんだ?」
「一度に聞きすぎだろ!悪いがさっきからシルフが急がないと危険だと急かしてきているんだ。全部答える時間はない。だから一つだけ、俺の名前は大地であっちのちんちくりんがリリアだ。じゃあな!」
そう一息に大地が言うと「ちんちくりんじゃありません!!」とリリアから抗議の声が聞こえてくる。だが、リリアも大地は表に出さないが焦りを感じているのを理解しているのか、プラムにペコリとお辞儀してから「すみません。後でまた来ますからお話はその時に」と言って大地の近くまで駆け寄る。
「土足で上がってすまなかった。あと、シーラを助けに行ってくる」
廻縁と呼ばれる縁側へ立つ。そして空飛ぶ乗り物を召喚する。それは少し大きめな箱で四隅に扇風機のような回る羽がついている。まるでドローンを大きくした物だ。とても簡素な作りだが今はデザインにこだわる余裕はない。
それに大地が先に乗り込んだ後、リリアへ手を伸ばして乗るのを手助けする。そして、いざ行こうとした時、天守閣の間から声が聞こえてきた。
「待ってくれ!俺も……俺も連れて行ってくれ!!」
モリスが近づきながらそう言ってきた。先程よりは体力が回復しているだろうけど危険だと判断せざるを得ない。
「またあいつらと戦うことになるぞ?」
「わかっている」
「なら、来るなよ。次戦ったら死ぬぞ?」
少しだけ黙ってしまったモリスは顔をあげる。
「……それでも、それでも俺は行きたい!頼む!」
「シーラを心配しての事だろうけど、俺がしっかり助けてくるからそこで待ってろよ」
何かの物語に出てくる主人公を突き放して功績を独り占めしようと画策する噛ませ犬キャラの台詞になってしまったが、一応モリスを心配しての言葉だ。
「嫌だ!」
だが、モリスは聞き入れない。……だだっ子め。
「何でだよお前の力じゃあぶねぇって言ってんだよ!」
さっきの男にぼこぼこにされていたのを知っているからこそ、力の差がわかり次は死ぬだろうと予測できてしまう。そして、大地の言い方に困り顔をしているリリアが口を出さないのもわかっているからだ。
「好きだからだ。俺は巫ひ……シーラが好きだからだ。俺が彼女を守れるほど強ければこんなことにならなかった。でも!だからこそ!俺はせめて彼女が何処にいても助けに行ける男で在りたい!!!」
おや、見た目クール系なのに熱い男だ。
「そうか、わかった。じゃあ乗れよ」
「え"!?」
大地の変わり身の速さにリリアが驚きながら顔を向けてきた。その顔には「なんで?」と言いたげである。
「いやだって……惚れた女を助けに行くほどのロマンは俺には止められないからな」
移動手段は大地が出したものだから権限は大地にあるが、危険なことにはかわらずリリアが「でも!」と言った。それにたいして大地はリリアの耳元でそっと聞くように言う。
「リリアだって捕まった時に助けに来てほしいだろ?」
それを聞いたリリアが黙って俯いたことで了承と取る。今大地が言った言葉で『カッコいい男に』と言う一文をいれ忘れたがきっと勝手に保管したのだろう。日が落ち始めていて彼女の顔が赤くなっているかわからないが照れているようにも思える。
やはりリリアもお姫様だな。
「すまない。よろしく頼む」
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