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月光の花嫁
冥土の土産って情報聞けるイベントだよね
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モリスと呼ばれた男は黒い衣装に身を包んでいた。闇にとけて敵を暗殺するための衣服だ。
「シーラは無事か?」
プラムが落ち着いた様子で訪ねるとモリスは少しだけ伏し目がちに言う。
「巫女姫樣は……精霊の魔法でお逃げになられました。ですからその先の事までは……」
「そうか……ありがとうな」
「いえ……これくらいしか出来ない自分が不甲斐なく思います……」
そうやって落ち込む樣を見せるモリスにプラムが再び名前を読んだ。それに反応してモリスが顔をあげる。
「シーラの事を巫女姫だなんて呼んでやるな。ワシはお前がシーラを好いているのを知っておる」
「そ、それは……!!」
思い通りに狼狽えるモリスを見てプラムはニヤリと笑みを浮かべる。
「それにシーラも同じ気持ちと言うこともな。ワシはな幼馴染みのお主達が何時くっつくのか楽しみにしているんだが……」
プラムがチラリと横目でモリスを見ると固まったように俯いていた。彼の言い分もシーラの言い分も一貫して身分差故に愛してはいけない……だ。
だが、この月の都の主であり城主のプラムは考え方がまったく違う。むしろ、こんな小さい里の中で身分どうこう言っていても仕方ないと思っている。
「……これは孫を見るのもまだまだ先になるか」
等と小声で呟くと共にモリスにもシーラにも身分云々を考えさせてしまうことに謝りたいとも思う。
「さぁここから逃げましょう!」
モリスがそう言った直後だ。襖が一気に開かれた。そしてその部屋に入ってくるのはフードに白い紋様が刻まれた男。
「やっと出てきやがったな。シーラと言う娘の居場所を聞く前に少し痛め付けるか……」
マントから両手を出してフードの男はモリスへ一気に詰め寄った。
フードの男がモリスの腹めがけて掌を突きだした。だが、モリスはその鋭い掌打を体捌きでやり過ごす。しかし、その直後に鋭い蹴りがモリスの腹へと叩き込まれた。
「ぐっ……」
モリスは何とか痛みに耐え小刀を振るう。
「バカが。そんな雑に振るった攻撃が当たるものか」
攻撃距離を見極めた男が紙一重で小刀を避けると掌打を連続で打ち込んだ。
肩、腹、額へと衝撃を受け、モリスは肺の空気を吐き出されながら床へと転がされる。
「ガハッ」
口の中で血の味がする。たった四発……いや、掌打の3連撃が予想以上に威力が高くダメージをかなり受けてしまったのだ。
「……お前達は一体なにが目的なんだ!!」
痛みに耐えながらモリスが立ち上がりながら叫んだ。
「そうだな……冥土の土産に教えてやるよっ!!」
その瞬間、バキッという音と共にモリスの脇腹に激痛が走る。瞬時に蹴られたことを理解したが受け身を取ることすら出来なかった。
「まずそうだな……名乗っておこうか。俺はマルクス。ブラックボックスの副リーダーだっ!!」
倒れているモリスを蹴りあげた拍子にマルクスのフードが脱げる。髪は短い白髪がツンツンと逆立ち、そのつり目は冷酷さを表すようだった。
モリスが「ガフッ」と血を吐きだすと、地面についた手を体を起こす支えにしながらモリスは少しずつ立ち上がっていく。そして顔をマルクスへ向けた。
「俺たちの目的は精霊使いの力によって封印を解くことだ!」
マルクスがモリスへと殴りかかる。モリスは振るわれた右の拳を自分の左へと受け流す。そしてすかさず逆手にもった小刀を振るう。
だが、マルクスの頬を掠めて薄く切ることしか出来なかった。そしてそんなマルクスは自身が傷を負ったと言うのに薄い笑みを浮かべる。
「知っているか?この地にモンスターが眠っていることを」
一撃の重さを捨てたモリスが手数を増やしていく。最初は対処していたものの受けたダメージが響き体が自分の動きに追い付いてこないのだ。
「まさか……デルラトを呼び起こすつもりか!!」
プラムが心底驚いた様子で問い詰めるように言った。モリスを何度目かの畳の上に転がしたマルクスは頷く。
「その通りよ」
「ばかな……アレを呼び出せばこの地が崩壊するぞ!」
「そんなことは知ったこっちゃないな。我らの命はデルラトを呼び起こして暴れされる為なのだから。そしてその為には精霊使いが必要だ」
マルクスが倒れているモリスへ再び顔を向けると蹴りあげながら言った。
「だから……あの女を何処へ逃がしやがった!!」
宙へ打ち上げられたモリスをマルクスは真上から蹴り落として畳の上へ叩きつける。
「アイツからも連絡が入らねぇし……」
シーラを監禁していた幻覚魔法が使える男。シーラが逃げた後に探しに行くと言って飛び出したきり連絡が一切ない。ならばもう逃がした男に聞くしかない。
「シーラが何処に……行ったかだと?知っていても答えてやるか!!」
息も絶え絶えといった様子のモリスが気力を振り絞って立ち上がる。そしてそれによってマルクスの頭に血が上りきってしまった。
「そうかい……それならお前は用済みだ」
マルクスは自身の手を刃のように揃え、刺突のようにモリスの心臓めがけて突き出す――その直後、襖が勢いよく開いた。
「やめて!!!」
「シーラは無事か?」
プラムが落ち着いた様子で訪ねるとモリスは少しだけ伏し目がちに言う。
「巫女姫樣は……精霊の魔法でお逃げになられました。ですからその先の事までは……」
「そうか……ありがとうな」
「いえ……これくらいしか出来ない自分が不甲斐なく思います……」
そうやって落ち込む樣を見せるモリスにプラムが再び名前を読んだ。それに反応してモリスが顔をあげる。
「シーラの事を巫女姫だなんて呼んでやるな。ワシはお前がシーラを好いているのを知っておる」
「そ、それは……!!」
思い通りに狼狽えるモリスを見てプラムはニヤリと笑みを浮かべる。
「それにシーラも同じ気持ちと言うこともな。ワシはな幼馴染みのお主達が何時くっつくのか楽しみにしているんだが……」
プラムがチラリと横目でモリスを見ると固まったように俯いていた。彼の言い分もシーラの言い分も一貫して身分差故に愛してはいけない……だ。
だが、この月の都の主であり城主のプラムは考え方がまったく違う。むしろ、こんな小さい里の中で身分どうこう言っていても仕方ないと思っている。
「……これは孫を見るのもまだまだ先になるか」
等と小声で呟くと共にモリスにもシーラにも身分云々を考えさせてしまうことに謝りたいとも思う。
「さぁここから逃げましょう!」
モリスがそう言った直後だ。襖が一気に開かれた。そしてその部屋に入ってくるのはフードに白い紋様が刻まれた男。
「やっと出てきやがったな。シーラと言う娘の居場所を聞く前に少し痛め付けるか……」
マントから両手を出してフードの男はモリスへ一気に詰め寄った。
フードの男がモリスの腹めがけて掌を突きだした。だが、モリスはその鋭い掌打を体捌きでやり過ごす。しかし、その直後に鋭い蹴りがモリスの腹へと叩き込まれた。
「ぐっ……」
モリスは何とか痛みに耐え小刀を振るう。
「バカが。そんな雑に振るった攻撃が当たるものか」
攻撃距離を見極めた男が紙一重で小刀を避けると掌打を連続で打ち込んだ。
肩、腹、額へと衝撃を受け、モリスは肺の空気を吐き出されながら床へと転がされる。
「ガハッ」
口の中で血の味がする。たった四発……いや、掌打の3連撃が予想以上に威力が高くダメージをかなり受けてしまったのだ。
「……お前達は一体なにが目的なんだ!!」
痛みに耐えながらモリスが立ち上がりながら叫んだ。
「そうだな……冥土の土産に教えてやるよっ!!」
その瞬間、バキッという音と共にモリスの脇腹に激痛が走る。瞬時に蹴られたことを理解したが受け身を取ることすら出来なかった。
「まずそうだな……名乗っておこうか。俺はマルクス。ブラックボックスの副リーダーだっ!!」
倒れているモリスを蹴りあげた拍子にマルクスのフードが脱げる。髪は短い白髪がツンツンと逆立ち、そのつり目は冷酷さを表すようだった。
モリスが「ガフッ」と血を吐きだすと、地面についた手を体を起こす支えにしながらモリスは少しずつ立ち上がっていく。そして顔をマルクスへ向けた。
「俺たちの目的は精霊使いの力によって封印を解くことだ!」
マルクスがモリスへと殴りかかる。モリスは振るわれた右の拳を自分の左へと受け流す。そしてすかさず逆手にもった小刀を振るう。
だが、マルクスの頬を掠めて薄く切ることしか出来なかった。そしてそんなマルクスは自身が傷を負ったと言うのに薄い笑みを浮かべる。
「知っているか?この地にモンスターが眠っていることを」
一撃の重さを捨てたモリスが手数を増やしていく。最初は対処していたものの受けたダメージが響き体が自分の動きに追い付いてこないのだ。
「まさか……デルラトを呼び起こすつもりか!!」
プラムが心底驚いた様子で問い詰めるように言った。モリスを何度目かの畳の上に転がしたマルクスは頷く。
「その通りよ」
「ばかな……アレを呼び出せばこの地が崩壊するぞ!」
「そんなことは知ったこっちゃないな。我らの命はデルラトを呼び起こして暴れされる為なのだから。そしてその為には精霊使いが必要だ」
マルクスが倒れているモリスへ再び顔を向けると蹴りあげながら言った。
「だから……あの女を何処へ逃がしやがった!!」
宙へ打ち上げられたモリスをマルクスは真上から蹴り落として畳の上へ叩きつける。
「アイツからも連絡が入らねぇし……」
シーラを監禁していた幻覚魔法が使える男。シーラが逃げた後に探しに行くと言って飛び出したきり連絡が一切ない。ならばもう逃がした男に聞くしかない。
「シーラが何処に……行ったかだと?知っていても答えてやるか!!」
息も絶え絶えといった様子のモリスが気力を振り絞って立ち上がる。そしてそれによってマルクスの頭に血が上りきってしまった。
「そうかい……それならお前は用済みだ」
マルクスは自身の手を刃のように揃え、刺突のようにモリスの心臓めがけて突き出す――その直後、襖が勢いよく開いた。
「やめて!!!」
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