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月光の花嫁
メカの最後は爆発で決まり
しおりを挟む「はぁ!?何でだよ!」
まさか騎士のまま死ぬとかそう言うのか?冗談じゃねぇぞ!!
「パーツを破棄する部品が壊れてしまいました。たぶんこのまま爆発するでしょうけど小規模だと思います。ですから……貴方の奴隷にはなれそうにないですね」
「ふざけろ……」
大地はマーガレットへそのまま近づいていく。
「危ないですよ……ダイチ……」
「俺の名前知っているのか?」
「先程からそこの女性が呼んでいましたから……」
「そうか。多少強引になるが許せ」
マーガレットのガラスケースに入った魔道具。それを取り出せればこいつは死なずにすむかもしれない。その後のその魔道具をどうするかとかは考え付かないが……きっとなんとかなる。
「きゃっ。人の胸に触るなんてやっぱり変態ですね」
反射的に言い返そうとしたが今はそれどころじゃない。大地はマーガレットの鎧を切り壊して本体部分を露にした。
「本当に服を破くのが好きなんですか?」
「悪いな。どうやらそうらしい。ついでにお前の魔道具もはずさせてもらう」
「……わかりました。好きに使ってください。負けた私は貴方の奴隷になるしかないんですから」
「だから奴隷になんてしねえっての!」
そう言ってガラスケースを壊して手を入れる。その中から魔石が取り付けられているテニスボールくらいの魔道具を取り出した。あとはきっと代わりになる体を作るか探すかすればまた話せるだろう。
「あ!でも、もうちょっと優しく持ってくれますか?」
いきなり魔道具から声が聞こえてきて驚いた大地は魔道具を落としそうになる。
「あ、あ、あぶな、危ないですね!!!」
「お前喋れるのかよ!!」
「私の本体はこっちですよ!喋れるに決まっているじゃないですか!」
その言い分に「ええ……」と呟きながら大地はリリアに『そうなのか?』と訪ねようとして顔を向けるが、リリアも同じように唖然としていた。
「ところで……もう少しリリア……と言う女性に近づいて貰えますか?」
マーガレットが何を思ってそう言ってきたのかはわからず訝しげに「わ、わかった」と指示に従い大地はリリアへ近づいていく。
「この辺りで良いか?」
手を伸ばせばリリアに触れられる距離まで歩かされ、リリアはリリアでそれを固まっているように動きを止めてじっと見ていた。
「はい。ソレくらいなら安全です」
しかし、マーガレットが伝えてきたのはやや不可解な言葉だった。
「「安全?」」
大地とリリアがそう聞き返した直後だった。大地の後方で爆発が起きたのだ。
「きゃっ!」
「うわ!?」
大地とリリアは急に発生した音に驚いて声をあげるのだが、グラネスだけは特に何も反応しなかった。
こいつのハートは鋼鉄かよ。そう思いながら大地は爆発音が聞こえてきた方向性へ振り替えるとマーガレットの鎧だったものがその場にあった。
「だから小規模の爆発が起きると言ったでしょう……」
もし、マーガレットが何も言わなかったら大地は爆発に巻き込まれていただろう。
「それでは安全になったことですし……アロン陛下の前に行って貰えますか?」
無理難題を言ってきやがった。あの骸骨となった仏さんの前に行くの?俺が?まじで?
「ほら早く!」
一歩も動こうとしない大地に魔道具だけとなったマーガレットが急かしてくる。
こいつ目でもついてるのか?……これじゃあどっちが勝ったのかわからねぇな。
とはいえ、嫌がらせ目的で言っていない事は明白であり、何よりマーガレットには必要な事だから大地はアロンの骸の前に立つ。
「アロン陛下……申し訳ありません」
マーガレットが亡きアロンに向けて言う。それはきっと別れの挨拶であり……新しく生きるための一歩でもある。
「私は負けてしまいました。ですので騎士を辞めて……」
少しだけ間を空けるマーガレットは何を考えていたのだろうか。いきなり生き方を変えろと言った大地にもわからないが、それでも覚悟をする為の時間だったのだろう。
「これからはダイチ様の奴隷となります」
「待て!そんなことを言った覚えはないぞ!!」
マーガレットのおふざけだろうか?……むしろおふざけであって欲しい。もしホワイトキングダムでそんな言葉を振り撒いたらそこかしこで命が狙われてしまう。
「名も知らぬ客人よ。マーガレットを止めてくれたのだな」
先ほど聞いた魔道具を通したアロン陛下の声だ。このタイミングで言うってことは、まさか本人が死んでても出てくるような魔道具じゃないだろうな?
「これはマーガレットの鎧が壊れたのを感じた時に記憶した声を流しているのだ。安心しろ、私は化けて出るような人間ではない」
うおっ!?俺の考えを予測していたのか!?
「さて。マーガレット……お主が生きているか完全に壊されているかわからぬ。だが、もし生きていた時のために伝えよう。よく今まで騎士の務めを果たしてくれた」
「いえ……もったいないお言葉です」
「だが、この国は弱死病なる病が蔓延したことで滅びているだろう。……だから、マーガレットよ。もし自由に生きられるのならこの場に囚われるな。生きて世界を楽しんで欲しい」
「アロン陛下……」
「そして、客人よ。玉座の後ろに我が国の魔道技術の結晶。その一つがあるはずだ。持っていくがよい」
それ以降、アロン陛下の声が聞こえなくなり、玉座の後ろの壁が一部下がっていく。その奥は部屋へと繋がっているようだ。
「ダイチ様……ありがとうございます」
最後のお別れを言えたマーガレットが素直にお礼を言ってきた。
「お安いご用だ」
大地はそう言うと玉座を横切って奥の部屋へと入る。
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