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月光の花嫁
騎士と宝剣VSおっさんと魔法剣
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マーガレットが盾を手放した。その盾は地面へ落ちきる前に光の粒子となって消えていく。
「こちらも不要です」
そう言って残った剣をも手放すと同じように光の粒子となって消えた。マーガレットの言葉から武具を消した事がこれからする事の発動条件になっているわけではないようだ。
「降りてきて……」
空いた両手を上に掲げてソレが降りてくるのを待つ。やがてマーガレットの頭上に光が集まっていく。それが一つの物体を形成していきマーガレットの両手へと収まった。
「剣……か……」
マーガレットが柄を両手で握る一振りの剣。長剣よりも柄は少し長く、刃幅も広い。刃が真っ白な美しい大剣である。グラネスの持つ大剣よりは小さくまとまっているがとんでもない力が秘められていると傍目から見ても分かる程の業物だ。
「宝剣クラウ・ソラスです」
打ち合えば大地が能力で召喚したとはいえ鉄の剣は粉みじんに砕けてしまうだろう。だからこそ大地もマーガレットと打ち合える程の武器を出さなければならない。
それ程の凄い剣を一つだけ思い出した。所持していた奴が言うには名剣らしく岩も軽々しい切れる……らしい。
「借りるぜ……レン」
召喚したそれは魔法剣と呼ばれるもので刃がキラキラと輝いている。大地はそれを両手で構える。
「なぁお前さ。負けたら騎士を辞めろよ」
「なっ!国も王も忘れるなんて出来るわけない!」
「おっと……そうじゃない。別に忘れなくて良い。ただ、ここを一人で守り続けるのを止めろと言っているんだ。それとも俺に負けるのが怖くて約束できないか?」
「言わせておけば変態め……良いでしょう。私が負けたら騎士を辞めて貴方の奴隷でも何でもなってあげましょう!」
「そこまでは言ってねぇよ!!」
二人は無言で飛び出した。マーガレットが繰り出す最初の一刀。大地は魔法剣で何とか受け止めるが先程よりも重い一撃になっているのがわかる。
直ぐに押し返した大地は剣を素早く振るう。一撃一撃が軽くなるが構わない。小回りが利かない大剣ならば防ぎきれないと考えた。その予想通りにマーガレットは防ぎきれず大地の剣をその身に受ける。
「おいおい、マジかよ」
だが、受けきれないならばいっそ。と考えたのかマーガレットは防御を捨てて全力でクラウ・ソラスを振り下ろした。
咄嗟に横へ回避した大地が受けることはなかったが地面に当たるととんでもない轟音と、今までの攻防で傷がつかなかった地面が抉れる。
そして、マーガレットは直ぐ様に横振りの大振りで大地を狙う。
クラウ・ソラスは恐らくとんでもない魔力が内包された剣だ。女神によって魔力攻撃をカットされはするものの……恐らくそれすらぶち破って大地をまっぷたつに出来る力があるかもしれない。
つまり受ければ死ぬ。
真横も真後ろも大剣の範囲内だ。上に避けるのが定石か?……だが、相手は人間ではない。安易な逃げかたをすれば殺られる。
大地は振りきられる前にマーガレットへ飛び出すように向かう。この大剣の範囲外。回転切りじゃ無いことを祈って横切る形で背中へと回り込んだ。
「消えた!?」
大剣を振り切ったマーガレットが大地を見失った。そのチャンスを生かすように大地は魔法剣で横払いに切りつける。
しかし、当たったのほんの少しだけだった。触れた瞬間にマーガレットが反応して前へと飛び込むように逃げたのだ。
「……だいぶボロボロになってきたな」
流石の魔法剣といったようでマーガレットの鎧を切り裂くことは難しくない。
「よくも私の鎧をこんなボロボロに……そうやって女性の衣服も破くんでしょう。この変態!」
「な、なんだと!そんなことしたこともねえよ!!だいたい鎧って言ってるが、それも魔道具なんだろ?」
「ええ。本体の私が入ることで動かせるようになるパーツですね」
「ならボロボロになってもいいじゃねえか!」
「貴方……替えの服があるから破いても良いと女性に言うんですね。これだから変態は!!」
ぐぬぬ……。
「はぁ。やはり女に口では勝てないな」
「どうぞ剣でも負けて下さい」
「それは出来ないな」
お互いが静止して向き合う。それは次の一刀で決まるとわかり……お互いが同時に飛び出した。
マーガレットはロケットブースターを点火させ通常よりも何倍もの速さで近づいていき大地へと大剣を振るった。
大地とマーガレットは交差した後、少し先で止まった。
そして、マーガレットの体が斜めに切り裂かれていた。大地はマーガレットがロケットブースターを使用して最高加速で攻撃してくると踏んでいた。だからこそ、マーガレットの加速した速度に反応し、大地の体を真っ二つにする為に振られたクラウ・ソラスの軌道を読み掻い潜ってマーガレットに一撃を叩きこむことが出来たのだ。
マーガレットはバチバチと音を立てる自身の体を見て負けたのだと理解した。
「お見事です。これで私の使命は終わってしまいますね……」
「俺の勝ちだ。その鎧を捨てて――」
「それは……残念ですが出来ません」
「こちらも不要です」
そう言って残った剣をも手放すと同じように光の粒子となって消えた。マーガレットの言葉から武具を消した事がこれからする事の発動条件になっているわけではないようだ。
「降りてきて……」
空いた両手を上に掲げてソレが降りてくるのを待つ。やがてマーガレットの頭上に光が集まっていく。それが一つの物体を形成していきマーガレットの両手へと収まった。
「剣……か……」
マーガレットが柄を両手で握る一振りの剣。長剣よりも柄は少し長く、刃幅も広い。刃が真っ白な美しい大剣である。グラネスの持つ大剣よりは小さくまとまっているがとんでもない力が秘められていると傍目から見ても分かる程の業物だ。
「宝剣クラウ・ソラスです」
打ち合えば大地が能力で召喚したとはいえ鉄の剣は粉みじんに砕けてしまうだろう。だからこそ大地もマーガレットと打ち合える程の武器を出さなければならない。
それ程の凄い剣を一つだけ思い出した。所持していた奴が言うには名剣らしく岩も軽々しい切れる……らしい。
「借りるぜ……レン」
召喚したそれは魔法剣と呼ばれるもので刃がキラキラと輝いている。大地はそれを両手で構える。
「なぁお前さ。負けたら騎士を辞めろよ」
「なっ!国も王も忘れるなんて出来るわけない!」
「おっと……そうじゃない。別に忘れなくて良い。ただ、ここを一人で守り続けるのを止めろと言っているんだ。それとも俺に負けるのが怖くて約束できないか?」
「言わせておけば変態め……良いでしょう。私が負けたら騎士を辞めて貴方の奴隷でも何でもなってあげましょう!」
「そこまでは言ってねぇよ!!」
二人は無言で飛び出した。マーガレットが繰り出す最初の一刀。大地は魔法剣で何とか受け止めるが先程よりも重い一撃になっているのがわかる。
直ぐに押し返した大地は剣を素早く振るう。一撃一撃が軽くなるが構わない。小回りが利かない大剣ならば防ぎきれないと考えた。その予想通りにマーガレットは防ぎきれず大地の剣をその身に受ける。
「おいおい、マジかよ」
だが、受けきれないならばいっそ。と考えたのかマーガレットは防御を捨てて全力でクラウ・ソラスを振り下ろした。
咄嗟に横へ回避した大地が受けることはなかったが地面に当たるととんでもない轟音と、今までの攻防で傷がつかなかった地面が抉れる。
そして、マーガレットは直ぐ様に横振りの大振りで大地を狙う。
クラウ・ソラスは恐らくとんでもない魔力が内包された剣だ。女神によって魔力攻撃をカットされはするものの……恐らくそれすらぶち破って大地をまっぷたつに出来る力があるかもしれない。
つまり受ければ死ぬ。
真横も真後ろも大剣の範囲内だ。上に避けるのが定石か?……だが、相手は人間ではない。安易な逃げかたをすれば殺られる。
大地は振りきられる前にマーガレットへ飛び出すように向かう。この大剣の範囲外。回転切りじゃ無いことを祈って横切る形で背中へと回り込んだ。
「消えた!?」
大剣を振り切ったマーガレットが大地を見失った。そのチャンスを生かすように大地は魔法剣で横払いに切りつける。
しかし、当たったのほんの少しだけだった。触れた瞬間にマーガレットが反応して前へと飛び込むように逃げたのだ。
「……だいぶボロボロになってきたな」
流石の魔法剣といったようでマーガレットの鎧を切り裂くことは難しくない。
「よくも私の鎧をこんなボロボロに……そうやって女性の衣服も破くんでしょう。この変態!」
「な、なんだと!そんなことしたこともねえよ!!だいたい鎧って言ってるが、それも魔道具なんだろ?」
「ええ。本体の私が入ることで動かせるようになるパーツですね」
「ならボロボロになってもいいじゃねえか!」
「貴方……替えの服があるから破いても良いと女性に言うんですね。これだから変態は!!」
ぐぬぬ……。
「はぁ。やはり女に口では勝てないな」
「どうぞ剣でも負けて下さい」
「それは出来ないな」
お互いが静止して向き合う。それは次の一刀で決まるとわかり……お互いが同時に飛び出した。
マーガレットはロケットブースターを点火させ通常よりも何倍もの速さで近づいていき大地へと大剣を振るった。
大地とマーガレットは交差した後、少し先で止まった。
そして、マーガレットの体が斜めに切り裂かれていた。大地はマーガレットがロケットブースターを使用して最高加速で攻撃してくると踏んでいた。だからこそ、マーガレットの加速した速度に反応し、大地の体を真っ二つにする為に振られたクラウ・ソラスの軌道を読み掻い潜ってマーガレットに一撃を叩きこむことが出来たのだ。
マーガレットはバチバチと音を立てる自身の体を見て負けたのだと理解した。
「お見事です。これで私の使命は終わってしまいますね……」
「俺の勝ちだ。その鎧を捨てて――」
「それは……残念ですが出来ません」
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