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月光の花嫁
有限の長さ
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「ダイチさん!!」
リリアがたまらずにそう叫ぶ。しかし、大地としてはこの展開が十分に予測できていた。
「こうされると困るんじゃないか?」
大地が動いた。マーガレットの背後へ瞬時に回り背中をポンと押して光線へと突きだした。
バランスを崩し、目の前からは自分が放ったブリューナクの光線がやって来ている。
でも、それは一度やられたことがある。
瞬時に翼を羽ばたいた。マーガレットが一気に上昇することで自分の光線を回避し、体勢を立て直し、光線の先を大地へ向ける。たったの一挙同でマーガレットは三つの事をしたのだ。
「げっ!?」
驚きはしたが咄嗟に体が動き、迫りくる光線を避けて最後の一発を剣で弾いた。
しかし、これで相手に距離を取られてしまった。
「これで貴方は終わりです」
十分な距離から大地を見下ろすマーガレットは自身の自慢の武器に命令するように言った。
「「ブリューナク発射!!」」
その言葉はマーガレットしか言わないと思っていた。だが、敵である大地も同じことを口走ったのだ。
マーガレットは大地を注視する。いくらなんでも口走っただけだろう……と。ただ、大地がどこからともなく武器を出すことが引っ掛かっていた。
その引っ掛かりがマーガレットの視線を釘付けにさせる理由だった。
マーガレットの視界には映った。大地の背後が光って自分と同じ白い線が出てくるのが。……あれは間違いなくブリューナクの光線だ。
お互いの光線がぶつかり合い相殺されていく。
「な、何故貴方がブリューナクを使えるんですか!!」
「それは教えてやれないな」
マーガレットのその武器を召喚したのだが、それについて大地は笑みを浮かべながら秘匿した。
ブリューナクでの戦いでは埒が明かないと思ったのかマーガレットが急降下した。狙いはもちろん大地で激しくぶつかる。
再び接近戦での戦いになる。盾で防ぎ、剣で攻撃と動きを分けられるマーガレットに対して剣一本だけしか持っていない大地は剣のみで攻撃と防御を行わなければならない。
それはやや不利となるのだが大地はそれをものともしない。マーガレットの剣を避けると大地は直ぐに反撃を移る。それにたまらずマーガレットが距離を取ると大地はブリューナクで追撃する。
「お前疲れないのか?」
「辛いなど意味の無い感情です!!」
そうやってマーガレットは拒絶するが、大地からしたらそうは思えなかった。
「……お前はもう休んでもいいんだぞ?」
『……お前はもう休んでもいいんだぞ?』
それはアロンが最期の時を迎える際にマーガレットへ伝えた言葉。既に国は地へ落ち、アロンは弱死病という不治の病にかかってしまい、国を終わらせる時に口にした言葉。
「あああああああああっ!!!」
大地とアロンの姿が重なって見えた瞬間、マーガレットは絶叫にも似た声を盛大に上げた。
それに困惑しているとマーガレットは大地へ向いて言う。
「何で貴方はアロン陛下と同じことを言うんですか!!!」
表情の読めないマーガレットが怒っていると声量や声質でわかる。
「同じ事……ね」
最初に会ったマーガレットは完全にロボットと思える言動をしていた。それが変わり始めたのは『記憶をダウンロード』するといっていたことだ。
何故記憶?戦闘プログラムとかならわかる。とは言え記憶が戻ることで遥かに強くなっているのも確かだ。何故マーガレットは記憶を戻す必要があった?
これがバイク姿で会った時、一番始めに思ったことだ。それと先ほどのマーガレットの言葉を考えると……。
ああ。そうか。ここの国の王はこうなるとわかっていたから止めてくれって託してきたんだな。
「たくっ。しゃーねーな……」
アロンが言った事が『壊してくれ』と同義だとしたら……それを叶える気はない。
「そこの王と同じ事言うのはな……お前を見て思うことが同じだからだろ」
大地の台詞でアロンや国を思い出していく。楽しく、嬉しく、永遠だと思った時を。それが辛くて耐えかねたマーガレットが「やめろ」と叫んだ。
「幸せか?……貴方はそう聞きましたね。私は……この国を護っていたい。この国を失いたくない!ずっとこの国の騎士でいたい!!それが私の幸せだ!!」
いつの間にか大地もマーガレットも攻撃の手は止めている。
「それならどうして記憶をずっと持っていなかった!!」
マーガレットが息を飲んだように怯んだ。恐らく今一番突かれたくない事のはずだ。
「二回目に会ったときだ。戦闘プログラムとかをダウンロードしてくるならわかる。記憶をダウンロードってなんだよ!お前はずっとここにいて辛かったから記憶を保つのを止めたんだろ!!」
「うるさいうるさいうるさい!!!貴方に何が分かる!!ここにいてアロン陛下や兵士の皆と過ごした時を思い出してしまう私の……何が分かる!!」
ああ。やっぱりこいつは騎士で居る誇りと国の人が好きである事の板挟みにあっていたんだな。
「もうこれで本当に終わりにしましょう……」
マーガレットがそう呟きながら地面へと降り立った。
リリアがたまらずにそう叫ぶ。しかし、大地としてはこの展開が十分に予測できていた。
「こうされると困るんじゃないか?」
大地が動いた。マーガレットの背後へ瞬時に回り背中をポンと押して光線へと突きだした。
バランスを崩し、目の前からは自分が放ったブリューナクの光線がやって来ている。
でも、それは一度やられたことがある。
瞬時に翼を羽ばたいた。マーガレットが一気に上昇することで自分の光線を回避し、体勢を立て直し、光線の先を大地へ向ける。たったの一挙同でマーガレットは三つの事をしたのだ。
「げっ!?」
驚きはしたが咄嗟に体が動き、迫りくる光線を避けて最後の一発を剣で弾いた。
しかし、これで相手に距離を取られてしまった。
「これで貴方は終わりです」
十分な距離から大地を見下ろすマーガレットは自身の自慢の武器に命令するように言った。
「「ブリューナク発射!!」」
その言葉はマーガレットしか言わないと思っていた。だが、敵である大地も同じことを口走ったのだ。
マーガレットは大地を注視する。いくらなんでも口走っただけだろう……と。ただ、大地がどこからともなく武器を出すことが引っ掛かっていた。
その引っ掛かりがマーガレットの視線を釘付けにさせる理由だった。
マーガレットの視界には映った。大地の背後が光って自分と同じ白い線が出てくるのが。……あれは間違いなくブリューナクの光線だ。
お互いの光線がぶつかり合い相殺されていく。
「な、何故貴方がブリューナクを使えるんですか!!」
「それは教えてやれないな」
マーガレットのその武器を召喚したのだが、それについて大地は笑みを浮かべながら秘匿した。
ブリューナクでの戦いでは埒が明かないと思ったのかマーガレットが急降下した。狙いはもちろん大地で激しくぶつかる。
再び接近戦での戦いになる。盾で防ぎ、剣で攻撃と動きを分けられるマーガレットに対して剣一本だけしか持っていない大地は剣のみで攻撃と防御を行わなければならない。
それはやや不利となるのだが大地はそれをものともしない。マーガレットの剣を避けると大地は直ぐに反撃を移る。それにたまらずマーガレットが距離を取ると大地はブリューナクで追撃する。
「お前疲れないのか?」
「辛いなど意味の無い感情です!!」
そうやってマーガレットは拒絶するが、大地からしたらそうは思えなかった。
「……お前はもう休んでもいいんだぞ?」
『……お前はもう休んでもいいんだぞ?』
それはアロンが最期の時を迎える際にマーガレットへ伝えた言葉。既に国は地へ落ち、アロンは弱死病という不治の病にかかってしまい、国を終わらせる時に口にした言葉。
「あああああああああっ!!!」
大地とアロンの姿が重なって見えた瞬間、マーガレットは絶叫にも似た声を盛大に上げた。
それに困惑しているとマーガレットは大地へ向いて言う。
「何で貴方はアロン陛下と同じことを言うんですか!!!」
表情の読めないマーガレットが怒っていると声量や声質でわかる。
「同じ事……ね」
最初に会ったマーガレットは完全にロボットと思える言動をしていた。それが変わり始めたのは『記憶をダウンロード』するといっていたことだ。
何故記憶?戦闘プログラムとかならわかる。とは言え記憶が戻ることで遥かに強くなっているのも確かだ。何故マーガレットは記憶を戻す必要があった?
これがバイク姿で会った時、一番始めに思ったことだ。それと先ほどのマーガレットの言葉を考えると……。
ああ。そうか。ここの国の王はこうなるとわかっていたから止めてくれって託してきたんだな。
「たくっ。しゃーねーな……」
アロンが言った事が『壊してくれ』と同義だとしたら……それを叶える気はない。
「そこの王と同じ事言うのはな……お前を見て思うことが同じだからだろ」
大地の台詞でアロンや国を思い出していく。楽しく、嬉しく、永遠だと思った時を。それが辛くて耐えかねたマーガレットが「やめろ」と叫んだ。
「幸せか?……貴方はそう聞きましたね。私は……この国を護っていたい。この国を失いたくない!ずっとこの国の騎士でいたい!!それが私の幸せだ!!」
いつの間にか大地もマーガレットも攻撃の手は止めている。
「それならどうして記憶をずっと持っていなかった!!」
マーガレットが息を飲んだように怯んだ。恐らく今一番突かれたくない事のはずだ。
「二回目に会ったときだ。戦闘プログラムとかをダウンロードしてくるならわかる。記憶をダウンロードってなんだよ!お前はずっとここにいて辛かったから記憶を保つのを止めたんだろ!!」
「うるさいうるさいうるさい!!!貴方に何が分かる!!ここにいてアロン陛下や兵士の皆と過ごした時を思い出してしまう私の……何が分かる!!」
ああ。やっぱりこいつは騎士で居る誇りと国の人が好きである事の板挟みにあっていたんだな。
「もうこれで本当に終わりにしましょう……」
マーガレットがそう呟きながら地面へと降り立った。
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