初めての異世界転生

藤井 サトル

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フェアリーダウン

必殺のモンスター爆弾

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 ザルドーラの手に風が渦巻いているのがわかる。先ほどは雷に気を取られていて気づけなかったが……。

「そう何度も同じ手を食らうと思うなよ」

 ガトリング砲をザルドーラに向けて砲身を回転させる。円形に並べられたいくつもの長い銃身が回転により弾丸の装填や排莢はいきょうを行って連続して弾丸を発射する事ができ、一発の威力と連射時間により高火力を叩き出せるとんでもない武器だ。

 そのガトリングの砲身の回転速度がすぐに規定値に達し、銃口から大量のマズルフラッシュが発生する。数えるのもばからしい程の弾丸の雨がザルドーラへと放たれた。

 しかし、その弾丸はどれもザルドーラのかざした掌の前で止まってしまい程なくして地面へと落ちていってしまう。だが、その行動をすると踏んでいた。そして得られる情報はこれで得る事ができて大地が予想通りの展開に笑みをこぼした。

「何を笑っているんですか?」

 大地が余裕そうにしていることを不快に思ったザルドーラがイラつきながら言う。

「貴方の攻撃が全て無力化されたというのにそんな余裕があるんでしょうか。ねぇ!?」

 ザルドーラが残った手を持ち上げる。この動作はほぼ確実に大地へ危害を加える前動作だろう。だからそのタイミングを狙って大地は足元にスモークグレネードを落とした。一瞬にしてガトリングを撃っている大地を煙が包んでいく。

「……煙ごときでこの私の魔法から逃げ切れると思わないでください!」

 虚を突いたことで相手の攻撃タイミングを一瞬だけ遅らせた。でも、煙で完全に隠れることはできずにザルドーラからは薄っすらと煙に隠れた大地が見えてしまっていた。

 ザルドーラは浅はかな考えだと切り捨てながら口橋を釣り上げ、そして持ち上げている手を軽く斜めに振った。煙で隠れた大地の影を見えない何かで切りつけるように。その瞬間、ザルドーラの手からいくつもの真空の刃が生まれて飛んでいく。

 真空の刃が影へ命中すると風を巻き起こし煙も吹き飛ばしていった。刃によって煙を無理やり晴らせると切り刻まれた姿があらわになっていく。

 だけど、ザルドーラが考えていた無惨な姿はなかった。現れたのはごつごつとしていて、その姿は鉄のように硬く……というより鉄できていた。そしてザルドーラは嵌められたことに気づく。

「まさか!?」

「引っかかってくれると思ったぜ!」

 煙の中でガトリングを撃っていたのは召喚したメカ大地(不細工なでき)だ。簡単な人型で大地に似せただけだが煙の中でならメカだとはわからない事を想定した。そして、見事にザルドーラは大地の思惑に引っかかったということだ。

 もちろん大地は既に移動し終わっている。ザルドーラから距離をとりつつその横っ腹にロケットランチャーをぶち込むために。

「くらいな!」

 大地がロケットランチャーの引き金を引いた。カチリと音が鳴りロケット弾がバシュッと発射される。誘導式ではないものの動かない相手ならしっかり狙えば当たるはずだ。

 ロケット弾はその考え通りにまっすぐザルドーラへと向かった。それでもザルドーラはガトリングガンを受けながら残りの手をかざしてロケット弾を防ぐ。

「虚を突いたつもりでしょうが防ぎきれないと思っていましたか!!」

 張り裂けそうな声で叫ぶザルドーラだが大地からしたらそれは焦りの表れにしか見えない。何せ弾丸の雨とロケット弾で両手がふさがっているのだから3発目を防ぐ余力などないだろう。だってもう手に余りがないのだから。

 大地がにやりと笑みを浮かべた。その大地が見せる余裕の笑みに違和感を覚えたザルドーラが上を見上げた。

「気づいたか。だが……」

 ザルドーラが気づいたこと。それは自分に影がかかっていることだ。はるか上空には確かに何かの塊が見える。それほど小さい……1秒前はそう思っていた。だがそれは誤りだ。その1秒後にははっきりと見えるほど近づいてきている。

「もう遅い!」

 ザルドーラの上空から力を加えてものすごい速さで落とす武器。それは大きな岩の塊と言ってしまえるのだが燃え盛っていて表面には黒い模様が三つついている。まるで顔のように。そしてそれはモンスターの名前をとった兵器だった。

「つぶれろ。フレアスター!!」

 火山であったモンスターのフレアスターはサッカーボールくらいの大きさだ。しかし、大地が兵器として似せて召喚したフレアスターの大きさはとてつもない大きさである。その大きさはなんと!二階建て一軒家に匹敵するほどだ。

「――なんだとっ!?」

 ザルドーラが大地の兵器を見た瞬間に驚きの声を上げた。今両手は弾丸の雨とロケット弾で手いっぱいだ。つまり上から降ってくる大きな塊を防ぐ余力なんてない。

「くっ……」

 フレアスターがザルドーラに落ちる。飛行していたザルドーラはその衝撃を一身に受けるとフレアスターごと地面へと叩き落されると、地面が揺れて亀裂が走り破壊音が鳴り響く。

 しかし、それでもザルドーラは倒れることはない。燃え盛るフレアスターに当たる瞬間、ザルドーラはロケット弾を無力化し、弾丸の雨を甘んじて受けながらフレアスターへ防御を回したのだ。

 体にはっている防御魔法によってガトリング弾はなんとか耐えられる。そのおかげもあってフレアスターは直撃にはならなかった。でも大地の召喚したフレアスターを完全に止めることは出来ず、また、すぐに壊すことも出来ないせいでザルドーラは釘付けになるしかなかった。

「この……程度で……」

 それでも抗い続ける。魔法を使って一撃で粉砕しすぐに真空の刃を大地に向けて打つ。即座に判断したザルドーラはフレアスターを壊すために魔力を集め始めた。3秒。その時間があればパンドラの魔力であれば十分破壊することが出来るだろう。

「ああ。この程度で終わらねぇよ!!」

 ザルドーラが何かを行う前に大地が叫んだ。そしてその言葉に呼応する様にフレアスターの炎は一段と燃え盛っていく。そして大きな岩の塊に亀裂が入っていき炎の臨界点を突破した瞬間に大爆発を起こした。

 上空まで燃え上がる爆炎と煙。周囲の乾いた砂を吹き飛ばす爆風。そして地面まで揺らすほどの轟音がザルドーラを包み込んだ。
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