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フェアリーダウン
メイドが嫌いな男の子はそんなにいない説
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「それにしても貴族を殴る何て恐ろしい事する一般人がいるんだな」
ゲルゴス達と別れたあとしばらく町の中を歩きながら先ほどの話を思い返す。
「そんな事したら牢屋に入れられるんだけど、どんだけ怖いもの知らずな奴なんですかね。兄貴」
レイヴンが隣を歩きながらそんな怖いもの知らずの男がどういう奴なのかを考える様に空の雲を眺めながら言った。
「全くだ。正直、そんな無鉄砲な馬鹿と会いたいとも近寄りたいとも思わないな」
やれやれ。といように両手の掌を上にあげて首を横に振った大地がミルへ視線を移すと何故か彼女はこちらをずっと見てきていた。
「な、なんだ?」
「……あんた本気で言っているの?」
彼女の表情が信じられないものを見ているような顔へと変わっていた。
「え?えーっと?」
妖精のミルが少し呆れた顔をしながら「まぁいいわ」と言って離れて行くのをただ見ている事しか出来なかった。
「一体何なんだ?……まぁとりあえずこれからどうするんだ?」
「今回は調査を依頼してきた人に会うのが先だな」
レルムがその依頼人とされる人物の居場所を知っているようで迷わない足取りで町の中を歩いていく。
一体誰なんだろうな。と思いつつも出会ってきた貴族の殆どは嫌な奴という印象が強い。そして大地の勘が告げるのは今回も嫌味たっぷりな奴な気がしてならない。だ。
「あー、俺は基本的に貴族と話す必要はないんだよな?」
少しだけ苦々しい表情で聞く大地にレルムは頷く。
「もちろん。俺が表立って話すから後ろに控えていてくれ」
それを聞いて安心した大地は心の鬱屈が晴れた様に晴れ晴れとした表情へと変わっていった。
「兄貴。そんなに貴族と話したくないのか?」
「ああ。貴族とはあまりいい出会いがないからな。出来れば関わりたくない」
そう言い切る大地を見る視線は何故か悲しそうなものだった。
「ミルといいレルムといい。さっきからその視線は何なんだよ……」
「いやまぁ……有名人は大変だなって」
他人事のようにレルムは言ってくるがこちらはたまったものではない。知らぬところで名前が広がっていちゃもんをつけられるのだから。
……あれ?名前でいちゃもんをつけられたことあったかな?
気づくとレルムが足を止めていた。まだ何かあるのかと思ったがそうではないようだ。目の前には大きな門だ。立派な門は庭へと続きその先に屋敷。そこに貴族が住んでいるのだろう。
「ここがそうなんだよな?」
確認を含めて聞くとレルムが頷き再び歩みを開始した。既に開かれている門へ足を踏み入れ綺麗な色とりどりの花が咲いている庭の中央を通っていく。
「あら……中々良い花が揃ってるのね」
フラフラと咲いている花へとミルが飛んでいく。開いている黄色く美しく咲いている花弁に触れている絵は実に目を引く。
大地の世界のお伽噺に出てくる妖精のイメージにピッタリとはまる。
「ミル。余り離れないでくれ」
その行動をレイヴンが窘めるように言った。てっきり何か言うにしてもレルムが動くのかと思っていただけに少々意外である。
「そうね、ちょっと残念だけど」
そう言って尾を引きながらも素直に戻ってくるミルは確かに表情からも残念そうにしているのが伺えた。
「やっぱり花は好きなのか?」
「そうね。綺麗に咲けている花は好きよ?花によっては蜜も美味しいしね」
「おお、妖精っぽいな」
思わず笑いながら言う大地にミルは少しムッとした顔をしながら抗議する。
「失礼ね、私は立派な妖精よ!」
そう言いながらミルは無断で大地の肩へと座る。
「悪い悪い。ついな。飯を奢るから許してくれ。レイヴンが」
「ええ!?俺っすか?」
急な振りで貴族の庭の中ということも忘れてレイヴンは驚きながら大地へ振り向いた。
「今手持ちないしな」
「いつもでしょ?」
ミルの素早い切り替えしに放った言葉のトゲで大地は心臓を射抜かれるがギリギリ耐えられた。
「……あれだったら報酬の取り分から引いてもいいからよ」
「……いえ!こんな機会も滅多にないんで奢りますよ!ここでの依頼が終わったら飯にしましょう」
少し考えたレイヴンは爽やかそうにそう言ってから目の前までに来ていた屋敷の扉についているノッカーを鳴らす。
直ぐに扉が開くとメイド服を着た侍女が出迎えてくれた。その案内を受けて屋敷へと入っていく。
「ずっと見ているけど、やっぱりメイド服が好きなの?」
まさかミルに難癖をつけられるとは思わなかった。まったく酷いもんだぜ。
「何を言っているんだ?丈が長くていいなとか、白と黒の割合が素晴らしいなとか、メイドっていいなとかって思いながら見てねぇよ?」
「語るに落ちてるわよ……あんた……」
あるぇー?
「ところで『やっぱり』って俺がメイド服好き見たいに言うんだな?」
「実際に好きなんじゃないの?ここに来る前にフルネールが言ってたわよ?」
アイツ……なんて余計な事を。
今レヴィアと楽しんでいるだろうと思うフルネールへ恨み言を心の中で呟く。
「あのなぁ俺はメイド服が――」
その時、前を歩いていたメイドが目的の場所へ着いたのか止まって扉へと彼女は向いた。問題はその時の所作だ。メイドはくるりと少しだけ勢いをつけて振り返ったのだ。それが故意かわざとはか分からないがその動きによって起きた作用が大地の目をくぎ付けにさせた。それは……遠心力によってメイドのスカートが少しだけふわりと浮き上がったのだ。
「好きです……」
「素直でよろしい」
「こうやって俺のシークレット情報がどんどん流出するんだ」
しくしくと泣きまねする大地にミルが少し呆れ顔しながら大地の頬を掌で押し込んで遊ぶ。
「いいじゃない別に」
脳天気に入ってくる妖精に性癖を暴露される事のダメージは分かるまい……。
恨み言のような事を心で呟くもミルの声と小さな手が頬にめり込む感触は女の子とイチャついている感が醸し出していて、これはこれで良いものだと思い精神的ダメージが緩和された気がした。
ふと視線をメイドに戻すと彼女が口を開いた。
「あの……そろそろよろしいでしょうか?」
メイドが少し困った顔をしながらこちらを見てきていたのだ。確かに茶番をしたままでは開ける事も出来ないだろう。それに少しだけ申し訳なく思いながら掌で扉を開くように促す。
「あ。はい。すみません。どうぞ」
メイドが一礼した後に精工に出来ている扉へ向き直るとその取手に手をかける。手に力を込めるとほんの少し音を立ててながら扉が開いていく。
ゲルゴス達と別れたあとしばらく町の中を歩きながら先ほどの話を思い返す。
「そんな事したら牢屋に入れられるんだけど、どんだけ怖いもの知らずな奴なんですかね。兄貴」
レイヴンが隣を歩きながらそんな怖いもの知らずの男がどういう奴なのかを考える様に空の雲を眺めながら言った。
「全くだ。正直、そんな無鉄砲な馬鹿と会いたいとも近寄りたいとも思わないな」
やれやれ。といように両手の掌を上にあげて首を横に振った大地がミルへ視線を移すと何故か彼女はこちらをずっと見てきていた。
「な、なんだ?」
「……あんた本気で言っているの?」
彼女の表情が信じられないものを見ているような顔へと変わっていた。
「え?えーっと?」
妖精のミルが少し呆れた顔をしながら「まぁいいわ」と言って離れて行くのをただ見ている事しか出来なかった。
「一体何なんだ?……まぁとりあえずこれからどうするんだ?」
「今回は調査を依頼してきた人に会うのが先だな」
レルムがその依頼人とされる人物の居場所を知っているようで迷わない足取りで町の中を歩いていく。
一体誰なんだろうな。と思いつつも出会ってきた貴族の殆どは嫌な奴という印象が強い。そして大地の勘が告げるのは今回も嫌味たっぷりな奴な気がしてならない。だ。
「あー、俺は基本的に貴族と話す必要はないんだよな?」
少しだけ苦々しい表情で聞く大地にレルムは頷く。
「もちろん。俺が表立って話すから後ろに控えていてくれ」
それを聞いて安心した大地は心の鬱屈が晴れた様に晴れ晴れとした表情へと変わっていった。
「兄貴。そんなに貴族と話したくないのか?」
「ああ。貴族とはあまりいい出会いがないからな。出来れば関わりたくない」
そう言い切る大地を見る視線は何故か悲しそうなものだった。
「ミルといいレルムといい。さっきからその視線は何なんだよ……」
「いやまぁ……有名人は大変だなって」
他人事のようにレルムは言ってくるがこちらはたまったものではない。知らぬところで名前が広がっていちゃもんをつけられるのだから。
……あれ?名前でいちゃもんをつけられたことあったかな?
気づくとレルムが足を止めていた。まだ何かあるのかと思ったがそうではないようだ。目の前には大きな門だ。立派な門は庭へと続きその先に屋敷。そこに貴族が住んでいるのだろう。
「ここがそうなんだよな?」
確認を含めて聞くとレルムが頷き再び歩みを開始した。既に開かれている門へ足を踏み入れ綺麗な色とりどりの花が咲いている庭の中央を通っていく。
「あら……中々良い花が揃ってるのね」
フラフラと咲いている花へとミルが飛んでいく。開いている黄色く美しく咲いている花弁に触れている絵は実に目を引く。
大地の世界のお伽噺に出てくる妖精のイメージにピッタリとはまる。
「ミル。余り離れないでくれ」
その行動をレイヴンが窘めるように言った。てっきり何か言うにしてもレルムが動くのかと思っていただけに少々意外である。
「そうね、ちょっと残念だけど」
そう言って尾を引きながらも素直に戻ってくるミルは確かに表情からも残念そうにしているのが伺えた。
「やっぱり花は好きなのか?」
「そうね。綺麗に咲けている花は好きよ?花によっては蜜も美味しいしね」
「おお、妖精っぽいな」
思わず笑いながら言う大地にミルは少しムッとした顔をしながら抗議する。
「失礼ね、私は立派な妖精よ!」
そう言いながらミルは無断で大地の肩へと座る。
「悪い悪い。ついな。飯を奢るから許してくれ。レイヴンが」
「ええ!?俺っすか?」
急な振りで貴族の庭の中ということも忘れてレイヴンは驚きながら大地へ振り向いた。
「今手持ちないしな」
「いつもでしょ?」
ミルの素早い切り替えしに放った言葉のトゲで大地は心臓を射抜かれるがギリギリ耐えられた。
「……あれだったら報酬の取り分から引いてもいいからよ」
「……いえ!こんな機会も滅多にないんで奢りますよ!ここでの依頼が終わったら飯にしましょう」
少し考えたレイヴンは爽やかそうにそう言ってから目の前までに来ていた屋敷の扉についているノッカーを鳴らす。
直ぐに扉が開くとメイド服を着た侍女が出迎えてくれた。その案内を受けて屋敷へと入っていく。
「ずっと見ているけど、やっぱりメイド服が好きなの?」
まさかミルに難癖をつけられるとは思わなかった。まったく酷いもんだぜ。
「何を言っているんだ?丈が長くていいなとか、白と黒の割合が素晴らしいなとか、メイドっていいなとかって思いながら見てねぇよ?」
「語るに落ちてるわよ……あんた……」
あるぇー?
「ところで『やっぱり』って俺がメイド服好き見たいに言うんだな?」
「実際に好きなんじゃないの?ここに来る前にフルネールが言ってたわよ?」
アイツ……なんて余計な事を。
今レヴィアと楽しんでいるだろうと思うフルネールへ恨み言を心の中で呟く。
「あのなぁ俺はメイド服が――」
その時、前を歩いていたメイドが目的の場所へ着いたのか止まって扉へと彼女は向いた。問題はその時の所作だ。メイドはくるりと少しだけ勢いをつけて振り返ったのだ。それが故意かわざとはか分からないがその動きによって起きた作用が大地の目をくぎ付けにさせた。それは……遠心力によってメイドのスカートが少しだけふわりと浮き上がったのだ。
「好きです……」
「素直でよろしい」
「こうやって俺のシークレット情報がどんどん流出するんだ」
しくしくと泣きまねする大地にミルが少し呆れ顔しながら大地の頬を掌で押し込んで遊ぶ。
「いいじゃない別に」
脳天気に入ってくる妖精に性癖を暴露される事のダメージは分かるまい……。
恨み言のような事を心で呟くもミルの声と小さな手が頬にめり込む感触は女の子とイチャついている感が醸し出していて、これはこれで良いものだと思い精神的ダメージが緩和された気がした。
ふと視線をメイドに戻すと彼女が口を開いた。
「あの……そろそろよろしいでしょうか?」
メイドが少し困った顔をしながらこちらを見てきていたのだ。確かに茶番をしたままでは開ける事も出来ないだろう。それに少しだけ申し訳なく思いながら掌で扉を開くように促す。
「あ。はい。すみません。どうぞ」
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