初めての異世界転生

藤井 サトル

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叶わぬ願いと望んだ未来

トカゲの液体飛ばし

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 奥へと進むと少しずつ足場と溶岩の差が縮まっている。熔岩が少しずつ上って来ているのだろうか。

「魔石の場所までまだ掛かるのか?」

「はい。もう少しかかります」

 心なしか熱さが増してきている気がする。溶岩が近くなった事で熱量が増しているのか……或いは魔石の力が強まっていると言うことか?

「ダイチ構えろ!モンスターだ!」

 グラネスが大剣を重々しい音を立てて構えた。直後に目の前に炎の塊が目の前に飛び出してきた。

 宙に浮いているそれは……火の玉。見た目からしてその名前がしっくりくるが大きさはなんとサッカーボールくらいだ。

 ……大きいな。

 その炎の体に黒い模様が3つあり、それが顔のように見える。

 ふよふよと浮かんでいる火の玉が動き出した。その場で八の字を描くようにぐるぐる回る。何をしているのかわからず様子を見ていたら次第に奴が動いた軌道上に小さい火が残されていく。

 これは奴の攻撃だ。そうわかったのも束の間、小さい火がゆっくりと大地達に向かって飛び始めた。その小さい火がどういうものかわからないが、少なくとも敵意をもって攻撃してきているのら当たるわけにはいかない。

 避けるか迎撃か。その考えを弾き出す前にグラネスが動いた。大地とリリアの前に立つとその大降りの剣を振るった。

 剣の面を向けて斬るではなく叩くように小さい火を3つ4つ同時に振り払った。小さい火が剣の面に当たると小さく爆発を起こす。だが、そこは流石のグラネスだ。振るった剣の勢いは小さい爆発では衰える事はなかった。

 だが、数がどんどん増えていく。しかもゆっくりと飛んでくるものものだから圧倒されそうにもなるが……黙ったまま何もしない大地ではない。

 ハンドガンを召喚する。何時もの黒くて使いやすい形状のだ。弾丸がグラネスの脇を通り抜ける様に狙いを定めて引き金をひいた。

 少しだけ響く火薬が破裂した音を立てながら弾丸が発射される。回転しながら飛んだ弾丸は火の玉モンスターに命中した。それがわかるのは火の玉は弾の命中と共に少し後ろに弾かれなから地面にポトッと落ちたからだ。

 でも、直ぐに火の玉は浮かび上がった。ど真ん中に命中したはずだがモンスターの体を包む炎で貫通しているのか弾かれたのかがわからない。それどころか血のようなものも出ていないから効果があるのかもわからない。

「このモンスターは何なんだ?」

「フレアスターと言うモンスターです」

 え?何それ。こんな火の玉ボールがそんなカッコいい名前なの?丸いと星なの?それだったら俺だってだせらぁい!

「なる……ほど?ゴーレム見たいな無機物なのか?」

「そうだ。そしてこの手のモンスターは体を半分ほど瓦解させれば倒せるぞ。こうやってな!」

 グラネスが大地にお手本だと言わんばかりに言い放つと大剣の面を盾にしながら突っ込んだ。空中に漂っていた小さい火を剣の盾で全て爆発させながら一気にフレアスターに近づくとそのまま剣の面を縦に振り下ろしてモンスターを叩き潰した。

「体半分を壊すんじゃなくて全壊させてんじゃねぇか!」

「うむ。潰せれば何でもいいだろ?」

 いやまぁそうだけど……。

「それで……今のがチュートリアル戦か?」

 大地は周囲を見るとフレアスターの他にトカゲのモンスターが現れてきた。
 トカゲと言うにはだいぶ皮膚が固そうにゴツゴツトゲトゲしているが……。

「ダイチ避けろ!!」

 グラネスの言葉が早いか、モンスターの行動が早いか。モンスターの口から赤い液体がピューッと飛ばされた。その液体を大地は反射的に避けると地面に付着した後、じゅ~っと音を立てて石に変わっていく。

 溶岩……!?そんなの飛ばすのはゲームの世界だけにしてくれよ!!

 トカゲのモンスターがほほを膨らませていた。明らかに攻撃の合図だ。だが、あいつが飛ばすより弾丸の方が早い。それならば飛ばしてくる前に撃つ。

 ハンドガンを構えて3発の音を続けて鳴らした。どれもトカゲの皮膚に食い込んでいて手応えはある。しかし、死なない。いや、死なないどころか怯まない。

「あぶねぇ!」

 再びピューッと飛ばしてきた溶岩液を避けつつ反撃する。しかし、敵の皮膚が分厚いのか致命打にすらなる気配がない。

 ハンドガンではダメだ。

 別の武器で戦うことを決めてハンドガンを消した。リリアやグラネスは別の敵と戦っている。リリアはたぶん魔法だろうが聖女ビームで応戦し、グラネスは相変わらずのごり押しだ。

 しかし、その状態ならこちらに来ることはないだろうし巻き込むことも無い。ショットガンを召喚してガシャリとポンプアクションを行い装填すると狙いを定めた。

 大地が引き金を引くと小粒の球を内蔵している弾丸が発射された。その弾丸の後部が空中で炸裂すると詰められている細かな球が勢いよく射出される。

 一つ一つは小さくてもその威力は高く、トカゲのモンスターに幾つもの小さな穴を開けて怯ませた。だが、トカゲは鳴きはすれど死ぬに至ることはなかった。

 ゴツゴツしているから硬いかもと思ったがこれは予想以上の硬さだ。だがまるっきり効いていないわけではない。ならば次に溶岩を飛ばしてきたときにもう一度叩き込む!

 そう意気込みながらトカゲを見つめていると再びほほが膨らみ……はしなかった。少しだけ膨らむのだが、大地が開けた小さい穴からモンスターが生成した溶岩がこぼれ始めたのだ。

 そしてその溶岩が自分の皮膚を焼き始めた。体内で作られたからと言って自分の皮膚が耐えうるとは限らないと言うことだ。

 やがて溶岩を溜めることはしなくなったトカゲはそのまま虫の息になり動きを止めた。だから大地は確実に仕留めるために散弾ではなくスラッグ弾という大口径の弾であり破壊力は散弾の比ではない弾丸を装填した。

 ポンプアクションを行いトカゲへ銃口を向けると引き金を引いた。

 ドンッ!と言う音が鳴り響くとトカゲに大きな穴が開いて確りと仕留めるのだった。
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