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叶わぬ願いと望んだ未来
不思議なガラス玉
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「クラリス。無事だったか?」
ようやくギルド長がやってきた。あとはこのおっさんに悪党を引き渡して終わりだろう。
大地は依頼が無事に終わることを安堵してギルド長とクラリスの様子を見守ることにした。
「ダイチさんのおかげで大丈夫です」
なんの不調もない様にクラリスはいった。
そのクラリスの表情や息遣い、声の抑揚を鑑みるにクラリスが嘘をついていないとギルド長は判断した。――いや、それどころか……むしろなんか嬉しそうにしている。
「……クラリス。お前捕まってたんだよな?」
普通なら捕まっていた緊張や恐怖で疲労するはずだ。しかし、今のクラリスにはそれがない。
ギルド長は訝しみながら確認するようにクラリスへと聞いた。
「え?そうですけど?」
ケロリと首をかしげながら答えるクラリスだ。ギルド長が何を聞きたいのか分からないが少なくとも地下の部屋に押し込められていたのだから捕まっていた事に相違ない。
「……そのわりには顔がニヤケていると思ってな」
その言葉を聞いたクラリスは「うそっ!?」と言いながら直ぐに自分の顔を確かめるように両手で触った。が、自分の顔をさわった程度じゃニヤケていたかどうかなんてわかるわけがなかった。
「嘘だ。ニヤケてまではいねぇよ」
いい反応をするクラリスに頃合いを見計らったギルド長が暴露してクックックと喉で笑う。
それを見て騙されたことに気づいたクラリスは頬を膨らませて怒った。
「もー!」
顔はにやけていないがそれでもニコニコと嬉しそうにしていた……上機嫌なのは間違いないだろう。クラリスがそうした様子を見せる原因はやはり大地だろうか?とギルド長は大地に視線を向けた。
「どうした?」
クラリスと話していたギルド長が突然こちらに向いてきた。つまり用事があるのだろう。
「クラリスを無事に助けてくれて礼を言う」
会って直ぐにクラリスを茶化していたはずのギルド長だったが、クラリスを助けた事のお礼を言うその表情からは真剣味が感じられた。
「依頼を忠実にこなしただけだ。それより確りと報酬をくれよ」
「もちろんだ。と言ってもお前……報酬についてクルスと話していないだろ?」
「あー。そう言えば何も聞いてないんだよな」
依頼を聞いたときの事を思い出すと依頼の内容は聞いていたが報酬についてはこれっぽっちも話していない。と言っても緊急性が高そうだと判断したのだから仕方がない。
「まあ、そうやって急いでくれたからクラリスや捕まっていた娘達も無事だったんだ。クルスもそれなりに報酬を用意するだろ」
他の娘たちが無事だと知っているのはクルスから聞いたのだろうか。どちらにせよ今の話しでわかることは今日受け取れる報酬はないと言うことだ。
この事実は後でフルネール達にも伝えるとしよう。
「ところでダイチ。クラリスは何で機嫌良いんだ?」
「うん?」
そうなのか?
改めてクラリスへ視線を移すと確かにニコニコしている。何か嬉しい事があったのか……それともギルド長が言うように大地の行動でなのか。クラリスに出会ってからの事を思い出すが……特に何もしていない……はず。せいぜい彼女を抱き上げたくらいだ。
「少し考えたが特に思い当たる節はないな」
「そうか……クラリスがいやに嬉しそうにニコニコしているから大地が何かしたのかと思ってな」
おおう。偏見もいいとこだぜ。
「俺が何かしたところで喜ぶ奴なんてごく少数だろ。それに、無事に助かったんだから嬉しくなって当然じゃないか?」
「うん?……うーん。それも……そうなのか?」
それとは少し違う喜び様な気がしないでもないところだ。
チラリとクラリスへ目を向けるが彼女はやっぱりニコニコとしている。それを見る限りホッとした嬉しさとは別ベクトルの気がしてならない。敷いていうなら何かを待ちわびるような感じがする。とはいえずっと泣かれたり俯かれたりするよりはましだろう。
「そんなにニコニコしてないですぅ!もう……!」
そう言ってプンプン怒りながら大地とギルド長から離れて行った。恐らく悪党どもを集めている場所へ行ったのだろう。
「……なぁ、ダイチ。モンスターがどういう経緯でいきなりこの場所へ現れたんだ?」
クラリスが離れた事でようやくギルド長は切り出したかった本題を口にした。
ここは王都の中だ。外壁の回りにはモンスター避けの魔法の結界が施してある為、外から入ってくる事はまず不可能だ。Sランクのモンスターだった場合はどうにもならないが……それ以下のモンスターが侵入を試みれば結界の力で弾かれるだろう。
それがわかっているからこそギルド長はモンスターが出現した経緯を知る必要があるのだ。
「悪党の親玉が綺麗なガラス玉を出したんだ。それが割れるとモンスターが出現した。見た感じそのガラス玉にモンスターを閉じ込めていたんだと思う」
ありのままを報告すると聞いたこともない魔道具の存在にギルド長は「ふぅむ」と唸り声をあげた。にわかに信じがたい話で今回の一件が無ければ「冗談だろ?」と笑い飛ばしているところだ。だが、現にモンスターが街中で突然現れた。
この世界で突然何かを出現させる方法として魔法による転移はある。だが、街中に魔法の転移で移動する場合はいくつかの条件があり、その条件を掻い潜らなければ移動する事は出来ない。正確には結界によって魔法が無効化されるのだ。
だからこそ大地の言う魔道具に信憑性は増すばかりとななのだ。
「詳しくはあの親玉の口を割らせた方が速いと思うぞ?」
あのガラス玉を所持していたんだ。自分たちより知識を持っている可能性が高いのなら聞きださない手はない。
「そうだな……だが、その魔道具が量産されていればかなり脅威になるな」
いつでもどこでもモンスターを呼び出せるとなれば攻め放題である。当然いたるところで危機が訪れてもおかしくない。これは早急に対策を練らねばならないのだ。
「とりあえず悪党たちのところにいくか。フルネール達が見張っていてくれているはずだ」
「そうだな」と頷きながら大地とギルド長は振り返りながら悪党達を捕らえている場所へと歩いて行った。
ようやくギルド長がやってきた。あとはこのおっさんに悪党を引き渡して終わりだろう。
大地は依頼が無事に終わることを安堵してギルド長とクラリスの様子を見守ることにした。
「ダイチさんのおかげで大丈夫です」
なんの不調もない様にクラリスはいった。
そのクラリスの表情や息遣い、声の抑揚を鑑みるにクラリスが嘘をついていないとギルド長は判断した。――いや、それどころか……むしろなんか嬉しそうにしている。
「……クラリス。お前捕まってたんだよな?」
普通なら捕まっていた緊張や恐怖で疲労するはずだ。しかし、今のクラリスにはそれがない。
ギルド長は訝しみながら確認するようにクラリスへと聞いた。
「え?そうですけど?」
ケロリと首をかしげながら答えるクラリスだ。ギルド長が何を聞きたいのか分からないが少なくとも地下の部屋に押し込められていたのだから捕まっていた事に相違ない。
「……そのわりには顔がニヤケていると思ってな」
その言葉を聞いたクラリスは「うそっ!?」と言いながら直ぐに自分の顔を確かめるように両手で触った。が、自分の顔をさわった程度じゃニヤケていたかどうかなんてわかるわけがなかった。
「嘘だ。ニヤケてまではいねぇよ」
いい反応をするクラリスに頃合いを見計らったギルド長が暴露してクックックと喉で笑う。
それを見て騙されたことに気づいたクラリスは頬を膨らませて怒った。
「もー!」
顔はにやけていないがそれでもニコニコと嬉しそうにしていた……上機嫌なのは間違いないだろう。クラリスがそうした様子を見せる原因はやはり大地だろうか?とギルド長は大地に視線を向けた。
「どうした?」
クラリスと話していたギルド長が突然こちらに向いてきた。つまり用事があるのだろう。
「クラリスを無事に助けてくれて礼を言う」
会って直ぐにクラリスを茶化していたはずのギルド長だったが、クラリスを助けた事のお礼を言うその表情からは真剣味が感じられた。
「依頼を忠実にこなしただけだ。それより確りと報酬をくれよ」
「もちろんだ。と言ってもお前……報酬についてクルスと話していないだろ?」
「あー。そう言えば何も聞いてないんだよな」
依頼を聞いたときの事を思い出すと依頼の内容は聞いていたが報酬についてはこれっぽっちも話していない。と言っても緊急性が高そうだと判断したのだから仕方がない。
「まあ、そうやって急いでくれたからクラリスや捕まっていた娘達も無事だったんだ。クルスもそれなりに報酬を用意するだろ」
他の娘たちが無事だと知っているのはクルスから聞いたのだろうか。どちらにせよ今の話しでわかることは今日受け取れる報酬はないと言うことだ。
この事実は後でフルネール達にも伝えるとしよう。
「ところでダイチ。クラリスは何で機嫌良いんだ?」
「うん?」
そうなのか?
改めてクラリスへ視線を移すと確かにニコニコしている。何か嬉しい事があったのか……それともギルド長が言うように大地の行動でなのか。クラリスに出会ってからの事を思い出すが……特に何もしていない……はず。せいぜい彼女を抱き上げたくらいだ。
「少し考えたが特に思い当たる節はないな」
「そうか……クラリスがいやに嬉しそうにニコニコしているから大地が何かしたのかと思ってな」
おおう。偏見もいいとこだぜ。
「俺が何かしたところで喜ぶ奴なんてごく少数だろ。それに、無事に助かったんだから嬉しくなって当然じゃないか?」
「うん?……うーん。それも……そうなのか?」
それとは少し違う喜び様な気がしないでもないところだ。
チラリとクラリスへ目を向けるが彼女はやっぱりニコニコとしている。それを見る限りホッとした嬉しさとは別ベクトルの気がしてならない。敷いていうなら何かを待ちわびるような感じがする。とはいえずっと泣かれたり俯かれたりするよりはましだろう。
「そんなにニコニコしてないですぅ!もう……!」
そう言ってプンプン怒りながら大地とギルド長から離れて行った。恐らく悪党どもを集めている場所へ行ったのだろう。
「……なぁ、ダイチ。モンスターがどういう経緯でいきなりこの場所へ現れたんだ?」
クラリスが離れた事でようやくギルド長は切り出したかった本題を口にした。
ここは王都の中だ。外壁の回りにはモンスター避けの魔法の結界が施してある為、外から入ってくる事はまず不可能だ。Sランクのモンスターだった場合はどうにもならないが……それ以下のモンスターが侵入を試みれば結界の力で弾かれるだろう。
それがわかっているからこそギルド長はモンスターが出現した経緯を知る必要があるのだ。
「悪党の親玉が綺麗なガラス玉を出したんだ。それが割れるとモンスターが出現した。見た感じそのガラス玉にモンスターを閉じ込めていたんだと思う」
ありのままを報告すると聞いたこともない魔道具の存在にギルド長は「ふぅむ」と唸り声をあげた。にわかに信じがたい話で今回の一件が無ければ「冗談だろ?」と笑い飛ばしているところだ。だが、現にモンスターが街中で突然現れた。
この世界で突然何かを出現させる方法として魔法による転移はある。だが、街中に魔法の転移で移動する場合はいくつかの条件があり、その条件を掻い潜らなければ移動する事は出来ない。正確には結界によって魔法が無効化されるのだ。
だからこそ大地の言う魔道具に信憑性は増すばかりとななのだ。
「詳しくはあの親玉の口を割らせた方が速いと思うぞ?」
あのガラス玉を所持していたんだ。自分たちより知識を持っている可能性が高いのなら聞きださない手はない。
「そうだな……だが、その魔道具が量産されていればかなり脅威になるな」
いつでもどこでもモンスターを呼び出せるとなれば攻め放題である。当然いたるところで危機が訪れてもおかしくない。これは早急に対策を練らねばならないのだ。
「とりあえず悪党たちのところにいくか。フルネール達が見張っていてくれているはずだ」
「そうだな」と頷きながら大地とギルド長は振り返りながら悪党達を捕らえている場所へと歩いて行った。
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