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異世界無双!1000対俺
使い古された茶番劇のようなものでも時には有効らしい
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大地達の前に次々と料理が運ばれてきた。リリアとフルネールがメニュー表を見て決めた料理の数々。それはレヴィアの視線を釘付けにするのに十分で彼女は自身の唾を飲み込み早く食べたそうにじっと見つめていた。
ようやく……と言ってもさほど長い時間ではないがレヴィアにとっては長く感じた待ち時間が終わりを告げた。
そして豪華な昼食が開始される。当たり前だがどの料理もレヴィアは初めて食べる。もし口に合わなかったらどうしうようか?そう考えもした大地だがレヴィアの表情を見て杞憂だと知り自分も食べ始める。
分厚い肉、真っ赤なパスタ、瑞々しいサラダにはフルーティーなソースがかかっている。他にも魅力的な料理が並ぶ中でその一つをレヴィアは取ろうとした。だが、今日は失敗続きである。
焚き火は見ていられず服屋では服を破きまくった。だから、楽しい食事を壊したくなくてフルネールへあれが食べたい。これが食べたいとねだるように皿を渡した。
フルネールは嫌な顔などもちろんしない。むしろ嬉しく思い、頼まれてはよそって渡すのだ。その一部始終を見ていた大地がフルネールを挟んで向こう側にいるレヴィアへ言う。
「レヴィア?取りたいものを自分で取ってもいいんだぞ?」
少し困惑した様子を見せたレヴィアは俯いていう。
「でも、また何か壊すかもしれないから……」
やはり引け目に感じていたか。
「そうか。それじゃあ壊してもいいぞ」
「え!?」
思いがけない言葉にレヴィアは顔をあげた。
「ただし、わざとやるのはダメだ。レヴィアは人間との暮らしに慣れているわけじゃないんだ。だから不可抗力で壊す……失敗するのは仕方ない。だから、そうして失敗しながら覚えていくんだ。何かあったら何とかするからよ」
一拍の間。その沈黙を破るようにフルネールが続いた。
「そうですね。レヴィアちゃん頑張ってみましょうか」
そう言ってフルネールは小皿をレヴィアに返す。小皿を受け取ったレヴィアはどうしたらいいか皿をじっと見ている見つめていると……。
「あ、グラネスさん。そこの小皿を取って頂けますか?」
「ああ。一つでいいのですか?」
「はい!ありがとうございます」
そう言ってグラネスから皿を受け取ったリリアは次に料理へと目を向けた。
「何食べようかな~。美味しそうなお肉にしようかな」
リリアは小皿を肉料理の近くまで寄せてから備えてあるトングを使って骨付き肉を挟み自分の皿へと一つ置いた。
そしてトングを指定の場所に戻した後、お肉を美味しそうに頬張り「ん~美味しいです」と言うのだ。
その一部始終を見ていたレヴィアは真似をする。まず肉に目線を移して身を乗り出すが、慌てて小皿を寄せた。そしてトングを掴むと美味しそうな肉を一つ挟み、小さな手で持ちにくいようで少しだけもたつきつつも無事に自分の皿へと乗せた。そして身を引こうとした時にトングを返し忘れた事に気づいて再び慌てて戻す。
そして安堵して身を引いた瞬間、後ろに転げ――。
「もう少しですよ」
フルネールがレヴィアの背中を手で支える。バランスを取り戻したレヴィアはようやく肉の乗った皿を置く事ができた。
そして自分の手で取った肉をかぶりつくと、達成感からか、又は美味しいからか。レヴィアが見せる表情は眩しいほどの笑顔だった。
それからは自信がついたようで自分で取ったり、遠い料理はお願いしたりと楽しく食べていた。かなりの量があった料理もあっという間に食べ終わり、全員はまったりムードに包まれていた。
「やっぱり美味しいですね。ここの料理は」
「そうだな。やはりここに来て正解だったか」
そろそろ店を出ようか。そんな雰囲気の時だった。
「おおい!この店は飯に虫を入れて出すのか!!」
叫んだのは大地達から離れた場所にいる大男だ。その大男が威圧的な態度で喚き散らかしている。そして、その声によって店員驚き竦み上がった。
「そ、そんなはずはありません!」
その大男のテーブルに謝っているのは大地に水をこぼした事を必要以上に気にしていた女性店員だ。
さて、ここで問題です。
大男は料理のスープ、パスタや肉、魚やサラダ、そして酒類などを頼みました。大男ですからこれくらいは軽くいけちゃうのかもしれません。(因みにフルネールに聞いたら自分もそれくらい余裕だと張り合っていました。)大男が頼んだ料理がどんどん空になっていきます。
最後に残ったのはほんの少しだけとなった元は大盛のパスタです。大男はそこから虫が出たと騒ぎ始めました。
虫さんはいつ入ったのでしょう?――虫の大きさはピンポン玉くらいとします。
「えぇ。なにこれ。食い逃げ目的?それとも営業妨害が目的?」
思いっきりな茶番を見せつけられて開いた口が塞がらない大地を見てフルネールは言う。
「大地さん。まだ食べたりないんですか?」
「え!?た、足りなかったのですか?」
フルネールの言葉に連鎖するようにリリアは驚いた。結構な量を食べているはずなのだ。だが、それでも足りないとなると大食いに分類されそうだ。
「違う!目の前のあほらしいやり取りに驚いていただけだ」
その大地の言葉が聞こえたのか大男の眉がピクピクと怒りを表す様に動いているが、それを無視して店員に声を張り上げる。
「あぁん!?俺が嘘ついてるってのかよ!!わかってんだろ?俺様にたてついたらどうなるかよ?」
そう言って大男が立ち上がり女性店員に迫り、その女性の手首を掴んだ。
「決めたぜ。今日、これからお前をつれてく。断ればあのお方がこの店を潰してしまうかもなぁ?」
その大男は頬に傷があるガラの悪い人相を歪ませて愉しんだ様子を見せつけながら、自分の顔をその女性店員の顔へと少しずつ近づけて脅すように言った。
「ひっ……わ、わかりました。ですからお店は……」
店員の顔が怯えて恐怖の色に染まっているのがよくわかる。
「クックク。わかればいいんだ。ほらよ!ここに飯の代金置いていくぜ!」
そう言って大男は金をテーブルに置いて店を出ようとするがリリアは席をガタッと立ち上がり大男の前に立ちはだかる。
「その手を離しなさい!」
その声を聞いて大男はリリアに視線を向ける。
「おやおや。リリア様じゃないですか。何か御用ですか?」
その大男の台詞はやや大げさに演技をするようなイントネーションを感じ、リリアは憤慨したように言う。
「その手を離しなさいと言っているんです!」
「何故でしょう?」
「そんな拉致紛いの行いを見過ごすわけにはいきません!」
激おこリリアが声を荒げるのは珍しい。
「そうですか。ではやめますか。自分はそれでもいいんですよ?」
ジロリと大男が女性店員を見ると彼女はビクりと震えた。
「いえ、着いていきますから……お店は……」
「何でついていくんですか!?」
「わたしのお母さんのお店なんです。ですから……」
その様子を見ていた大男が笑い出す。
「あっはっは!そう言うことですよリリア様。ここら辺はあのお方が仕切られていますからね!あの人を怒らせたら経営出来なくなりますよ。今のこの店のようにね!!まぁ?もっとも虫を出すようなこんな店じゃ潰れてももんくはいえませんけどねぇ?」
「それは貴方が入れたからでしょう!?」
あれだけ飲み食いした後に言ったのだ。リリアの言葉が間違いないとこの場にいる誰もが分かるのだが、大男は落ち着いて言う。
「そんな証拠がどこにありますかな?」
「それは……」
だが、突き付けれるような証拠等は当然持ち合わせていない。その事にリリアは言葉を詰まらせる。
「証拠も無いのに人を疑うんですね?……眠てぇこと言ってんじゃねぇぞおぉ!!」
丁寧な口調が一変して怒号に代わる。それに驚き一瞬だけリリアは怯んだ。それを見て好機だと考えた大男は更に畳み掛けるように言う。
「俺はな虫を入れられて店員に文句を言ったんだ。それを証拠もなしに言いがかりだと言えるほど聖女がそこまで偉いってのかよ!?」
さらに委縮するリリアを見て勝ち誇った顔を全面に表す大男。
「証拠もなにもそこまで食ってから虫だって騒ぐのは明らかに後から入れたってわかるだろ?」
大地がテーブルに座りながら言うと大男がこちらに視線を向けてきた。
「だが証拠はねぇぞ?」
「証拠ねぇ……。お前さそこまで食っててその大きさの虫に気づかなかったのか?まさか……好んで虫を食って……?」
大地の言葉で大男以外がぎょっとしながら身を引く。リリアですら大男から二歩下がって引いたのは印象強い。
「誰が食うか!こんなん命令じゃなければ持ちたくも……あ……」
語るに落ちたな。
「証拠ゲットだぜ!」
正確には証言ですよ。
証言ゲットだぜ!
大男すごい悔しそうに見てきているので大地は挑発するように「フッ」とほくそ笑む。
だが大男は怒り心頭といった様子くせに自身の心にブレーキをかけたように暴れだすことはなかった。
「ふぅ。あんた俺を知らねえのか?俺を怒らせたらあのお方がこええぞ?」
雑魚の常套句を口にしているコイツの事なんて知らない。だが、自分が知らないだけで有名人なのかもしれない。なので、大地はフルネールに聞いてみた。
「コイツの事を知ってるか?」
「さぁ?こんなにくだらない事をしている人なら神だって興味持ちませんよ」
フルネールは首を振りながら言った。……彼は神に見放された男らしい。
それに知らないのならしょうがない。
「そもそもお前が言うあのお方って誰なんだよ?」
そう聞くと大男は得意気な顔をした。
「アルグニール様だ。お前らと違って貴族で偉いかたなんだぞ?」
あ、アルグニールだと!……って誰?
大地さん……ご存知、ないのですか!?
いや、誰だよ……。
私も知りません。てへ♪
「ふん!名前を聞いてビビったか。だがそれでいいんだぞ?たとえリリア様であろうとアルグニール様は貴族の中でも食を扱っていられますからな」
大地が黙ったことで腰が引けた奴だと勘違いした大男が更に醜悪な笑みを浮かべる。
「待ってください!」
店の奥から少し年老いた女性が出て来て大男を止める。
「お店は諦めますから娘を連れていかないでください!」
更にその奥からここの従業員と思われる人達が出てきた。この前と違い店員を見かけないと思っていたがあの男がいるから隠れていたのだろうか。
「だまれ!もう決まったことなんだよ!!」
そういいながら泣きついてきた女性を突き飛ばした。
「あぁっ!」
「お母さん!!」
床に倒れた母に駆け寄ろうとするがそれを「おっと!」と言って腕を掴んで阻止する。
「さぁ行くぞ!」
そう言って大男はお茶こぼしからくり人形のごとく大地にコップの水をかけた女性店員を連れていった。
ようやく……と言ってもさほど長い時間ではないがレヴィアにとっては長く感じた待ち時間が終わりを告げた。
そして豪華な昼食が開始される。当たり前だがどの料理もレヴィアは初めて食べる。もし口に合わなかったらどうしうようか?そう考えもした大地だがレヴィアの表情を見て杞憂だと知り自分も食べ始める。
分厚い肉、真っ赤なパスタ、瑞々しいサラダにはフルーティーなソースがかかっている。他にも魅力的な料理が並ぶ中でその一つをレヴィアは取ろうとした。だが、今日は失敗続きである。
焚き火は見ていられず服屋では服を破きまくった。だから、楽しい食事を壊したくなくてフルネールへあれが食べたい。これが食べたいとねだるように皿を渡した。
フルネールは嫌な顔などもちろんしない。むしろ嬉しく思い、頼まれてはよそって渡すのだ。その一部始終を見ていた大地がフルネールを挟んで向こう側にいるレヴィアへ言う。
「レヴィア?取りたいものを自分で取ってもいいんだぞ?」
少し困惑した様子を見せたレヴィアは俯いていう。
「でも、また何か壊すかもしれないから……」
やはり引け目に感じていたか。
「そうか。それじゃあ壊してもいいぞ」
「え!?」
思いがけない言葉にレヴィアは顔をあげた。
「ただし、わざとやるのはダメだ。レヴィアは人間との暮らしに慣れているわけじゃないんだ。だから不可抗力で壊す……失敗するのは仕方ない。だから、そうして失敗しながら覚えていくんだ。何かあったら何とかするからよ」
一拍の間。その沈黙を破るようにフルネールが続いた。
「そうですね。レヴィアちゃん頑張ってみましょうか」
そう言ってフルネールは小皿をレヴィアに返す。小皿を受け取ったレヴィアはどうしたらいいか皿をじっと見ている見つめていると……。
「あ、グラネスさん。そこの小皿を取って頂けますか?」
「ああ。一つでいいのですか?」
「はい!ありがとうございます」
そう言ってグラネスから皿を受け取ったリリアは次に料理へと目を向けた。
「何食べようかな~。美味しそうなお肉にしようかな」
リリアは小皿を肉料理の近くまで寄せてから備えてあるトングを使って骨付き肉を挟み自分の皿へと一つ置いた。
そしてトングを指定の場所に戻した後、お肉を美味しそうに頬張り「ん~美味しいです」と言うのだ。
その一部始終を見ていたレヴィアは真似をする。まず肉に目線を移して身を乗り出すが、慌てて小皿を寄せた。そしてトングを掴むと美味しそうな肉を一つ挟み、小さな手で持ちにくいようで少しだけもたつきつつも無事に自分の皿へと乗せた。そして身を引こうとした時にトングを返し忘れた事に気づいて再び慌てて戻す。
そして安堵して身を引いた瞬間、後ろに転げ――。
「もう少しですよ」
フルネールがレヴィアの背中を手で支える。バランスを取り戻したレヴィアはようやく肉の乗った皿を置く事ができた。
そして自分の手で取った肉をかぶりつくと、達成感からか、又は美味しいからか。レヴィアが見せる表情は眩しいほどの笑顔だった。
それからは自信がついたようで自分で取ったり、遠い料理はお願いしたりと楽しく食べていた。かなりの量があった料理もあっという間に食べ終わり、全員はまったりムードに包まれていた。
「やっぱり美味しいですね。ここの料理は」
「そうだな。やはりここに来て正解だったか」
そろそろ店を出ようか。そんな雰囲気の時だった。
「おおい!この店は飯に虫を入れて出すのか!!」
叫んだのは大地達から離れた場所にいる大男だ。その大男が威圧的な態度で喚き散らかしている。そして、その声によって店員驚き竦み上がった。
「そ、そんなはずはありません!」
その大男のテーブルに謝っているのは大地に水をこぼした事を必要以上に気にしていた女性店員だ。
さて、ここで問題です。
大男は料理のスープ、パスタや肉、魚やサラダ、そして酒類などを頼みました。大男ですからこれくらいは軽くいけちゃうのかもしれません。(因みにフルネールに聞いたら自分もそれくらい余裕だと張り合っていました。)大男が頼んだ料理がどんどん空になっていきます。
最後に残ったのはほんの少しだけとなった元は大盛のパスタです。大男はそこから虫が出たと騒ぎ始めました。
虫さんはいつ入ったのでしょう?――虫の大きさはピンポン玉くらいとします。
「えぇ。なにこれ。食い逃げ目的?それとも営業妨害が目的?」
思いっきりな茶番を見せつけられて開いた口が塞がらない大地を見てフルネールは言う。
「大地さん。まだ食べたりないんですか?」
「え!?た、足りなかったのですか?」
フルネールの言葉に連鎖するようにリリアは驚いた。結構な量を食べているはずなのだ。だが、それでも足りないとなると大食いに分類されそうだ。
「違う!目の前のあほらしいやり取りに驚いていただけだ」
その大地の言葉が聞こえたのか大男の眉がピクピクと怒りを表す様に動いているが、それを無視して店員に声を張り上げる。
「あぁん!?俺が嘘ついてるってのかよ!!わかってんだろ?俺様にたてついたらどうなるかよ?」
そう言って大男が立ち上がり女性店員に迫り、その女性の手首を掴んだ。
「決めたぜ。今日、これからお前をつれてく。断ればあのお方がこの店を潰してしまうかもなぁ?」
その大男は頬に傷があるガラの悪い人相を歪ませて愉しんだ様子を見せつけながら、自分の顔をその女性店員の顔へと少しずつ近づけて脅すように言った。
「ひっ……わ、わかりました。ですからお店は……」
店員の顔が怯えて恐怖の色に染まっているのがよくわかる。
「クックク。わかればいいんだ。ほらよ!ここに飯の代金置いていくぜ!」
そう言って大男は金をテーブルに置いて店を出ようとするがリリアは席をガタッと立ち上がり大男の前に立ちはだかる。
「その手を離しなさい!」
その声を聞いて大男はリリアに視線を向ける。
「おやおや。リリア様じゃないですか。何か御用ですか?」
その大男の台詞はやや大げさに演技をするようなイントネーションを感じ、リリアは憤慨したように言う。
「その手を離しなさいと言っているんです!」
「何故でしょう?」
「そんな拉致紛いの行いを見過ごすわけにはいきません!」
激おこリリアが声を荒げるのは珍しい。
「そうですか。ではやめますか。自分はそれでもいいんですよ?」
ジロリと大男が女性店員を見ると彼女はビクりと震えた。
「いえ、着いていきますから……お店は……」
「何でついていくんですか!?」
「わたしのお母さんのお店なんです。ですから……」
その様子を見ていた大男が笑い出す。
「あっはっは!そう言うことですよリリア様。ここら辺はあのお方が仕切られていますからね!あの人を怒らせたら経営出来なくなりますよ。今のこの店のようにね!!まぁ?もっとも虫を出すようなこんな店じゃ潰れてももんくはいえませんけどねぇ?」
「それは貴方が入れたからでしょう!?」
あれだけ飲み食いした後に言ったのだ。リリアの言葉が間違いないとこの場にいる誰もが分かるのだが、大男は落ち着いて言う。
「そんな証拠がどこにありますかな?」
「それは……」
だが、突き付けれるような証拠等は当然持ち合わせていない。その事にリリアは言葉を詰まらせる。
「証拠も無いのに人を疑うんですね?……眠てぇこと言ってんじゃねぇぞおぉ!!」
丁寧な口調が一変して怒号に代わる。それに驚き一瞬だけリリアは怯んだ。それを見て好機だと考えた大男は更に畳み掛けるように言う。
「俺はな虫を入れられて店員に文句を言ったんだ。それを証拠もなしに言いがかりだと言えるほど聖女がそこまで偉いってのかよ!?」
さらに委縮するリリアを見て勝ち誇った顔を全面に表す大男。
「証拠もなにもそこまで食ってから虫だって騒ぐのは明らかに後から入れたってわかるだろ?」
大地がテーブルに座りながら言うと大男がこちらに視線を向けてきた。
「だが証拠はねぇぞ?」
「証拠ねぇ……。お前さそこまで食っててその大きさの虫に気づかなかったのか?まさか……好んで虫を食って……?」
大地の言葉で大男以外がぎょっとしながら身を引く。リリアですら大男から二歩下がって引いたのは印象強い。
「誰が食うか!こんなん命令じゃなければ持ちたくも……あ……」
語るに落ちたな。
「証拠ゲットだぜ!」
正確には証言ですよ。
証言ゲットだぜ!
大男すごい悔しそうに見てきているので大地は挑発するように「フッ」とほくそ笑む。
だが大男は怒り心頭といった様子くせに自身の心にブレーキをかけたように暴れだすことはなかった。
「ふぅ。あんた俺を知らねえのか?俺を怒らせたらあのお方がこええぞ?」
雑魚の常套句を口にしているコイツの事なんて知らない。だが、自分が知らないだけで有名人なのかもしれない。なので、大地はフルネールに聞いてみた。
「コイツの事を知ってるか?」
「さぁ?こんなにくだらない事をしている人なら神だって興味持ちませんよ」
フルネールは首を振りながら言った。……彼は神に見放された男らしい。
それに知らないのならしょうがない。
「そもそもお前が言うあのお方って誰なんだよ?」
そう聞くと大男は得意気な顔をした。
「アルグニール様だ。お前らと違って貴族で偉いかたなんだぞ?」
あ、アルグニールだと!……って誰?
大地さん……ご存知、ないのですか!?
いや、誰だよ……。
私も知りません。てへ♪
「ふん!名前を聞いてビビったか。だがそれでいいんだぞ?たとえリリア様であろうとアルグニール様は貴族の中でも食を扱っていられますからな」
大地が黙ったことで腰が引けた奴だと勘違いした大男が更に醜悪な笑みを浮かべる。
「待ってください!」
店の奥から少し年老いた女性が出て来て大男を止める。
「お店は諦めますから娘を連れていかないでください!」
更にその奥からここの従業員と思われる人達が出てきた。この前と違い店員を見かけないと思っていたがあの男がいるから隠れていたのだろうか。
「だまれ!もう決まったことなんだよ!!」
そういいながら泣きついてきた女性を突き飛ばした。
「あぁっ!」
「お母さん!!」
床に倒れた母に駆け寄ろうとするがそれを「おっと!」と言って腕を掴んで阻止する。
「さぁ行くぞ!」
そう言って大男はお茶こぼしからくり人形のごとく大地にコップの水をかけた女性店員を連れていった。
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★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
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※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
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