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王族からは逃げられない
情報の食い違いによる損害は大きい
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あの後、王都へ戻ると依頼の終わりをアーデルハイドから告げられた。報酬は後日ギルドからという事らしい。余談だが、報酬の額は1万ゴールドなのだが大地とフルネールの意向により報酬の半分はリリアに渡してもらう事にしてもらった。それについてリリアも断ったりするのだが、こちらは二人なのだ。二体一であり、小娘の唱える意義など簡単に捻りつぶせるのだ。
「という事で、貰える金額は5千ゴールドになったところで、まずは今日の夕飯をどうするかを考えたいと思うのだが、フルネールは何か案あるか?」
「そうですね。試しに聞いてみますが今の残高は?」
ふっふっふ。と含み笑いの後に大地は目を開いて言った。
「0だ」
わかりきっていた事、そして慣れてきた事で絶望も感じない。『いつもの事だ』程度の感想だ。
「そうですよね。うーん、それじゃあこの前買いだめしたご飯でも取り出して食べます?残り少ないですが」
女神空間にいれたいくつかの食糧。それの残量はまだあるのだが、女神の力により時間が止められている為、保存食として扱っているからこそ非常時ではない今、食べるべきかどうかも悩ましい。
「そうだな。これから食料調達って言っても危ないし」
大地は森の方角へと目を向けるが、辺りはすっかり夜の帳が支配している。その中で南の森に入るのは少々危険だろう。何せモンスターも出てくるのだから。
「それに、この後お金も入るし、今日はパーッと食っちまうか!」
大地の言葉にそう来なくっちゃと言わんばかりにフルネールは買いだめした料理を次々と出していく。料理と言っても全て手で持って食べれる系の物なのだが、それでも6品くらい出せば豪勢に見えるのだ。
「おー、こうして並ぶと食欲もかなりそそられるな」
「そうですね!大地さんいただきましょう!」
ギルド前、人気が薄くなったこの時間で男女が地面に直接座りながら飯を食らう様は、終電を逃して路上で酒盛りする場面に見えなくも無いだろう。
「そういえば、結局、アーデルハイドの力になるって決めたのか?」
ハンバーガーの様な肉をパンで挟んだ食べ物を頬張りながら大地はフルネールに聞く。
「えっと。はい。アーデルハイドにも言ったら、危なくなったらちゃんと私達に頼るって言ってくれましたよ♪」
「……ん?力になるって直接アーデルハイドに言ったのか?」
「え?あ、はい。そうですけど?え?もしかして……ダメでした?」
「てっきりフルネールがそう思っているって話なのかと……」
「え、えーっと。えへへ?」
誤魔化す様にフルネールが笑う。
こんな美人にほ絆されたりんなんか……絆されたりなんか……ぐぅっ……。
「はぁ。いや、俺もちゃんと聞いてなかったからな気にするな」
「……あの。本当に嫌なら私――」
「確かに王族とここまで関わったら交流を無しになんて出来ないだろうな。でもな?心から嫌だったら駄々でもこねてるからもう気にするな。……さ、飯の続きでもしようぜ?それとも、もう要らないなら俺が片っ端から――」
今食べている物を持ちながらフルネールが食べたくて確保した料理に手を伸ばそうとするとフルネールは急いで取って大事そうに両手で包む。
「これはダメですー!買うときにも食べたいって言ったじゃないですか!」
「あれー?そうだっけな?まぁでも食が進んでなさそうだったし、食べないのかと思ったんだがなー」
とぼけながら言う大地に警戒しながらフルネールは「まったく!」と少しプリプリ怒ってその料理の包み紙を外して頬張った。
思った通りに美味しく、フルネールは嬉しそうに頬へ手を当てて味を噛み締め、その笑顔で大地もまた食が進むのだった。
――数時間後、既に石畳の上で大地は寝ているのだがフルネールは今も起きていた。
それは、今日の出来事とこれからの事を少しだけ考えてしまったせいで寝つきが悪くなっているのだ。
「大地さんは優しいですね。でも、あなたに隠していることがあるんです」
その隠している事はまだ伝えられない。だが、いずれ確実に伝えることになる。自分が大地を選んだ事で過酷な……否、非情な運命を背負わせた事。
「もしかしたら断るかも知れませんね。……いえ、断るのが当たり前なはずですね。でも、きっとあなたは受け入れると思います。それがわかってるから……あなたにお願いするのです。酷い事だとわかってはいるから、そんな私をいつかしっかり嫌いになってくださいね……」
まだ、少し先の未来の話になる。それまで自分が出来ることは何でもしてあげたい。仮に彼が望むなら……自分の体ですら……それほど酷いことをしているのだから。
ただその前に一つ、約束は守ろう。
「大地さん。先ほど話したサービスですよ」
複雑な心の中、フルネールはそう言って寝ている大地の頬へ唇を近づけて……ちゅっとキスをした。
このキスの事は明日教えてあげましょう。起きている時にキスをする何て言ってませんからそれも添えて……きっとこれはこれで怒るでしょうね。
そのやり取りを楽しみにしながらフルネールは大地の腕に頭をのせ、体を寄せて目をつむり、意識を夢の中へと追いやったのだった。
「という事で、貰える金額は5千ゴールドになったところで、まずは今日の夕飯をどうするかを考えたいと思うのだが、フルネールは何か案あるか?」
「そうですね。試しに聞いてみますが今の残高は?」
ふっふっふ。と含み笑いの後に大地は目を開いて言った。
「0だ」
わかりきっていた事、そして慣れてきた事で絶望も感じない。『いつもの事だ』程度の感想だ。
「そうですよね。うーん、それじゃあこの前買いだめしたご飯でも取り出して食べます?残り少ないですが」
女神空間にいれたいくつかの食糧。それの残量はまだあるのだが、女神の力により時間が止められている為、保存食として扱っているからこそ非常時ではない今、食べるべきかどうかも悩ましい。
「そうだな。これから食料調達って言っても危ないし」
大地は森の方角へと目を向けるが、辺りはすっかり夜の帳が支配している。その中で南の森に入るのは少々危険だろう。何せモンスターも出てくるのだから。
「それに、この後お金も入るし、今日はパーッと食っちまうか!」
大地の言葉にそう来なくっちゃと言わんばかりにフルネールは買いだめした料理を次々と出していく。料理と言っても全て手で持って食べれる系の物なのだが、それでも6品くらい出せば豪勢に見えるのだ。
「おー、こうして並ぶと食欲もかなりそそられるな」
「そうですね!大地さんいただきましょう!」
ギルド前、人気が薄くなったこの時間で男女が地面に直接座りながら飯を食らう様は、終電を逃して路上で酒盛りする場面に見えなくも無いだろう。
「そういえば、結局、アーデルハイドの力になるって決めたのか?」
ハンバーガーの様な肉をパンで挟んだ食べ物を頬張りながら大地はフルネールに聞く。
「えっと。はい。アーデルハイドにも言ったら、危なくなったらちゃんと私達に頼るって言ってくれましたよ♪」
「……ん?力になるって直接アーデルハイドに言ったのか?」
「え?あ、はい。そうですけど?え?もしかして……ダメでした?」
「てっきりフルネールがそう思っているって話なのかと……」
「え、えーっと。えへへ?」
誤魔化す様にフルネールが笑う。
こんな美人にほ絆されたりんなんか……絆されたりなんか……ぐぅっ……。
「はぁ。いや、俺もちゃんと聞いてなかったからな気にするな」
「……あの。本当に嫌なら私――」
「確かに王族とここまで関わったら交流を無しになんて出来ないだろうな。でもな?心から嫌だったら駄々でもこねてるからもう気にするな。……さ、飯の続きでもしようぜ?それとも、もう要らないなら俺が片っ端から――」
今食べている物を持ちながらフルネールが食べたくて確保した料理に手を伸ばそうとするとフルネールは急いで取って大事そうに両手で包む。
「これはダメですー!買うときにも食べたいって言ったじゃないですか!」
「あれー?そうだっけな?まぁでも食が進んでなさそうだったし、食べないのかと思ったんだがなー」
とぼけながら言う大地に警戒しながらフルネールは「まったく!」と少しプリプリ怒ってその料理の包み紙を外して頬張った。
思った通りに美味しく、フルネールは嬉しそうに頬へ手を当てて味を噛み締め、その笑顔で大地もまた食が進むのだった。
――数時間後、既に石畳の上で大地は寝ているのだがフルネールは今も起きていた。
それは、今日の出来事とこれからの事を少しだけ考えてしまったせいで寝つきが悪くなっているのだ。
「大地さんは優しいですね。でも、あなたに隠していることがあるんです」
その隠している事はまだ伝えられない。だが、いずれ確実に伝えることになる。自分が大地を選んだ事で過酷な……否、非情な運命を背負わせた事。
「もしかしたら断るかも知れませんね。……いえ、断るのが当たり前なはずですね。でも、きっとあなたは受け入れると思います。それがわかってるから……あなたにお願いするのです。酷い事だとわかってはいるから、そんな私をいつかしっかり嫌いになってくださいね……」
まだ、少し先の未来の話になる。それまで自分が出来ることは何でもしてあげたい。仮に彼が望むなら……自分の体ですら……それほど酷いことをしているのだから。
ただその前に一つ、約束は守ろう。
「大地さん。先ほど話したサービスですよ」
複雑な心の中、フルネールはそう言って寝ている大地の頬へ唇を近づけて……ちゅっとキスをした。
このキスの事は明日教えてあげましょう。起きている時にキスをする何て言ってませんからそれも添えて……きっとこれはこれで怒るでしょうね。
そのやり取りを楽しみにしながらフルネールは大地の腕に頭をのせ、体を寄せて目をつむり、意識を夢の中へと追いやったのだった。
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