49 / 281
王族からは逃げられない
女性を知るには慎重に
しおりを挟む
リリアの沈んだ表情は今も変わらずで名前を聞いたのは不味かったのだろうか。大地はリリアの横顔を眺めながら何時ものリリアにどうしたら戻せるか考える。
しかし、どうしたものか。
お困りですか?私の神託はいりますか?
ぐ……信じていいのか悩ましいんだが?
そんなこと言うんですか?経緯はどうあれ毎回何とかしてるじゃないですか?
一歩間違えたら俺が(社会的に)死ぬんだよ。
でも、今は大地さんのせいでリリアちゃん俯いてるじゃないですか。あ~あ。可愛そうなリリアちゃん。
わざとらしく言うフルネールだが彼女の言うことももっともなのだ。恐らく彼女の姓名を聞いてしまった事でリリアを傷つけてしまったのだろう。その理由まではわからないが少なくとも謝るべきだろうか。
「リリア?」
「はい。なんでしょう?」
声は普段通りに戻っているが表情はやや影が指すように暗めだ。
「その、すまなかった」
「え……どうしてダイチさんが謝るんですか?」
「多分だけど、フルネームが知られたくなかったんじゃないか。って思ってな。無神経だったよ」
「そ、そんなことは!」
しかし、その次の言葉がでずに詰まっていることから間違いではなさそうだ。
「フローライトがどういう家系とかは全く知らないけど、俺はどんな名前でもリリアはリリアとして見るつもりだから。そんなに落ち込まないでくれ」
大地はばつが悪そうにリリア以外を見るために上空に視線に向けてそう言った。
これがおっさんにできる精一杯の慰めだ。
そうですね。ま、及第点ってところでしょうか。
そんな超絶上から目線で脳内会話を仕掛けてくるフルネールの言葉を無視しつつ反応がないリリアに再度目線を向ける。
そのリリアはと言うと、リリアも大地へと視線を向けていた。さも意外なものを見る目で。
「あの……本当に?」
うん?本当にというのは家の事を知らないことについてか?
その言葉だけではピンと来るものがなく大地が考えようとした途端、リリアは再び口を開いた。
「本当に私として見てくれますか?」
その意味深な回答に少しだけ困惑するものがあるが、今は決して表情に出してはいけない。
「なにか物言いだが、もちろんだ。それに俺は器用じゃないんでね。もうリリアに様とか敬称をつけるのは無理だな」
クスクス笑い出すリリア。どうやら少しは心の闇が払えたのだろうか、ようやく笑顔に戻ってくれたことに安堵しながらその頭をつい撫でる。
「何を思い詰めているか知らないがあまり考えすぎるなよ……」
されるがままに頭を撫でられ続けるリリアだが、その言葉に静かに「はい」と一言だけで返す。そこにはまだ心のモヤがあるみたいなのが気にはなるが……。
「おやおや~?リリアちゃん。撫でられて嬉しそうですね?」
まぁ何となく予想はしてた。そろそろフルネールの悪魔が動き出すだろうと。
「そ、そんなことはありません!!」
物凄い否定しながら大地の手から逃れるように離れたリリアはトテトテとアーデルハイドの隣へ走り出していった。
「ふふ、大地さん。フラレちゃいましたね!」
「ああ、どこかの 邪神のお陰でな」
「まっ!そんなのがこの近くにいるんですか?怖いですぅ~」
そう言って抱きついてくるフルネールだが、完全に弄ばれていることが良くわかる。
「抱きつくのはいいが……当たっているぞ?」
「まさかのリリアちゃんが逃げちゃいましたからね。少しだけサービスですよ?と言うことで、おしまい!」
その言葉を言い切ると同時にフルネールはパッと離れる。少し惜しいことをいった……なんて思ってないからな!ほんとだぞ?
「なぁ、リリアについて聞いてもいいか?」
「何が聞きたいんですか?胸のサイズですか?ちょっと気が引けますけど胸は――」
「ちゃうわ!!そげんなこと聞いてもないぜよ!」
「大地さん言葉遣い無茶苦茶ですよ?もう、リリアちゃんが気になるからってそんなに興奮したらダメですよ?」
だから、危ない話しはやめろと!
「俺が聞きたいのはリリアの家の事だ」
「あ、何だ。そんなことですか~」
スケベな男を見る目から表情を切り替えたフルネールはあっけらかんと言う。
「ああ。どうしてあそこまで落ち込むのか知りたいんだが――」
フルネールが口を開く。ただ、その言葉は短くも鋭くいい放つものだった。
「ダメです」
いつもと違った雰囲気のフルネールに少し気圧された。それは拒否であり拒絶の色すら見えてくる。
「胸のサイズは良くても家はダメか?」
「……ダメですよ」
少しだけ表情が和らいだが、それでもフルネールは首を縦に振ることはない。
「もう。リリアちゃんが教えていないことを教えられるわけないでしょう。それに女の子の家を知りたいだなんて、それじゃあストーカーですよ?」
和らいだかと思ったその顔は少し困り顔に変化していた。
一見、聞くのは無理そうに見える。だが、真剣な表情でフルネールに迫れば、きっと彼女は考え、迷い、視線をさ迷わせた後に諦めて折れて教えてくれるだろう。
何だかんだで甘いところがあるのだ。ただ、それでも最初に拒絶するように断ったところを見ているから……。
「わかった。まぁでも、こそこそ嗅ぎ回るようにするのも良くないしな。いずれ本人から聞けたら直接聞くようにする」
「わかればいいんです」
「……すまなかった。無理させたな」
「な、なに……言ってるのかわからないですよー」
明らかにしらを切っているのはわかるのだが、そんなところを突っ込む必要はなく、大地はそれに話をあわせる。
「そうか。まぁ、俺はお前の嘘も見抜けないからな」
そう言うとフルネールは足を止めるが、大地は振り返らずにアーデルハイドへと着いていく。だからこそ、フルネールが小さく言った「ごめんなさい。大地さん」という言葉は聞こえるよしもなかった。
しかし、どうしたものか。
お困りですか?私の神託はいりますか?
ぐ……信じていいのか悩ましいんだが?
そんなこと言うんですか?経緯はどうあれ毎回何とかしてるじゃないですか?
一歩間違えたら俺が(社会的に)死ぬんだよ。
でも、今は大地さんのせいでリリアちゃん俯いてるじゃないですか。あ~あ。可愛そうなリリアちゃん。
わざとらしく言うフルネールだが彼女の言うことももっともなのだ。恐らく彼女の姓名を聞いてしまった事でリリアを傷つけてしまったのだろう。その理由まではわからないが少なくとも謝るべきだろうか。
「リリア?」
「はい。なんでしょう?」
声は普段通りに戻っているが表情はやや影が指すように暗めだ。
「その、すまなかった」
「え……どうしてダイチさんが謝るんですか?」
「多分だけど、フルネームが知られたくなかったんじゃないか。って思ってな。無神経だったよ」
「そ、そんなことは!」
しかし、その次の言葉がでずに詰まっていることから間違いではなさそうだ。
「フローライトがどういう家系とかは全く知らないけど、俺はどんな名前でもリリアはリリアとして見るつもりだから。そんなに落ち込まないでくれ」
大地はばつが悪そうにリリア以外を見るために上空に視線に向けてそう言った。
これがおっさんにできる精一杯の慰めだ。
そうですね。ま、及第点ってところでしょうか。
そんな超絶上から目線で脳内会話を仕掛けてくるフルネールの言葉を無視しつつ反応がないリリアに再度目線を向ける。
そのリリアはと言うと、リリアも大地へと視線を向けていた。さも意外なものを見る目で。
「あの……本当に?」
うん?本当にというのは家の事を知らないことについてか?
その言葉だけではピンと来るものがなく大地が考えようとした途端、リリアは再び口を開いた。
「本当に私として見てくれますか?」
その意味深な回答に少しだけ困惑するものがあるが、今は決して表情に出してはいけない。
「なにか物言いだが、もちろんだ。それに俺は器用じゃないんでね。もうリリアに様とか敬称をつけるのは無理だな」
クスクス笑い出すリリア。どうやら少しは心の闇が払えたのだろうか、ようやく笑顔に戻ってくれたことに安堵しながらその頭をつい撫でる。
「何を思い詰めているか知らないがあまり考えすぎるなよ……」
されるがままに頭を撫でられ続けるリリアだが、その言葉に静かに「はい」と一言だけで返す。そこにはまだ心のモヤがあるみたいなのが気にはなるが……。
「おやおや~?リリアちゃん。撫でられて嬉しそうですね?」
まぁ何となく予想はしてた。そろそろフルネールの悪魔が動き出すだろうと。
「そ、そんなことはありません!!」
物凄い否定しながら大地の手から逃れるように離れたリリアはトテトテとアーデルハイドの隣へ走り出していった。
「ふふ、大地さん。フラレちゃいましたね!」
「ああ、どこかの 邪神のお陰でな」
「まっ!そんなのがこの近くにいるんですか?怖いですぅ~」
そう言って抱きついてくるフルネールだが、完全に弄ばれていることが良くわかる。
「抱きつくのはいいが……当たっているぞ?」
「まさかのリリアちゃんが逃げちゃいましたからね。少しだけサービスですよ?と言うことで、おしまい!」
その言葉を言い切ると同時にフルネールはパッと離れる。少し惜しいことをいった……なんて思ってないからな!ほんとだぞ?
「なぁ、リリアについて聞いてもいいか?」
「何が聞きたいんですか?胸のサイズですか?ちょっと気が引けますけど胸は――」
「ちゃうわ!!そげんなこと聞いてもないぜよ!」
「大地さん言葉遣い無茶苦茶ですよ?もう、リリアちゃんが気になるからってそんなに興奮したらダメですよ?」
だから、危ない話しはやめろと!
「俺が聞きたいのはリリアの家の事だ」
「あ、何だ。そんなことですか~」
スケベな男を見る目から表情を切り替えたフルネールはあっけらかんと言う。
「ああ。どうしてあそこまで落ち込むのか知りたいんだが――」
フルネールが口を開く。ただ、その言葉は短くも鋭くいい放つものだった。
「ダメです」
いつもと違った雰囲気のフルネールに少し気圧された。それは拒否であり拒絶の色すら見えてくる。
「胸のサイズは良くても家はダメか?」
「……ダメですよ」
少しだけ表情が和らいだが、それでもフルネールは首を縦に振ることはない。
「もう。リリアちゃんが教えていないことを教えられるわけないでしょう。それに女の子の家を知りたいだなんて、それじゃあストーカーですよ?」
和らいだかと思ったその顔は少し困り顔に変化していた。
一見、聞くのは無理そうに見える。だが、真剣な表情でフルネールに迫れば、きっと彼女は考え、迷い、視線をさ迷わせた後に諦めて折れて教えてくれるだろう。
何だかんだで甘いところがあるのだ。ただ、それでも最初に拒絶するように断ったところを見ているから……。
「わかった。まぁでも、こそこそ嗅ぎ回るようにするのも良くないしな。いずれ本人から聞けたら直接聞くようにする」
「わかればいいんです」
「……すまなかった。無理させたな」
「な、なに……言ってるのかわからないですよー」
明らかにしらを切っているのはわかるのだが、そんなところを突っ込む必要はなく、大地はそれに話をあわせる。
「そうか。まぁ、俺はお前の嘘も見抜けないからな」
そう言うとフルネールは足を止めるが、大地は振り返らずにアーデルハイドへと着いていく。だからこそ、フルネールが小さく言った「ごめんなさい。大地さん」という言葉は聞こえるよしもなかった。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました
鈴宮ソラ
ファンタジー
オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。
レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。
十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。
「私の娘になってください。」
と。
養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。
前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる