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不思議なアイテム。呪いの道具もその一つ
聖女のお仕事
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ギルド内でリリアに抱きつくフルネール。
「本当にお熱は無いんですか?」
そう言いながらフルネールはリリアの額と自分の額を合わせる。
「大丈夫です。め――」
女神様と言おうとしたらその口を指で止められてしまうリリア。そこにフルネールは耳打ちをする。
「リリアちゃん。私のことはフルネールって呼んでください。理由はリリアちゃんと同じっていえばわかりますよね?」
全くの同じと言うわけではないが、様付けで呼ばれるのが嫌なのは変わらないのだ。
「え、えっと……はい」
少し困惑しながらも返事をするリリアから離れたフルネールは「確かに熱はなさそうですね」と言うが、リリアから離れる様子を見せない。
だが、美女が可愛い女の子にくっついてる様は癒されるものだ。
「大丈夫ならいいんだが、病み上がりなんだ。無理はするなよ?あと、フルネールも離れろ。他の人たちがこっちを見てる」
大地がそう言うとリリアは素直に「はい」と言うがフルネールは笑みを浮かべた。
「あれあれー?もしかして大地さん羨ましいんですか?あれだったら変わってあげてもいいんですよ?」
あれってどれだよ!ほら、リリアだって困ってるじゃないか。あとギルドの連中は暇なのか!?ずっとこっち見てんだけど。
「そんなことねぇから。まったく……」
と言って少しのため息を吐き出しているとリリアが少し照れながら言い出した。
「あの、ダイチさん。プリンとっても美味しかったです。ありがとうございました」
「あー、作ったのはフルネールだからそっちにお礼を言ってやってくれ」
作るところ見てたけど手際のよさは目を見張るものだったな。……あれ、フルネールってかなりいい女では……。
ふふふ、気づいてしまいましたね!その事を口に出してもいいんですよ?
俺の勘違いだったな。このICBM女は触れると死にかねん。
社会的にですね?
わかってるなら爆発しないでくれよ……。
「フルネールさん。プリンありがとうございました」
礼儀正しく言うリリアをフルネールは「喜んで頂けたようでなによりです」と言いながら抱き締める。
二つ目のプリンを食べてた時、大地に食べさせてもらっていた時の事を思い出してたのはリリアだけの乙女の秘密なのだ。――が。
「ねぇ、リリアちゃん」
フルネールがリリアの耳元で小声で話す。
「プリン食べてるとき……」
その言葉だけで頬を赤くするリリア。フルネールはこの分かりやすいリアクションする少女をもう少しからかいたくなり、言わなくてもわかっている言葉をリリアだけに聞こえる声量でささやく。
「大地さんを思い出してました?」
耳まで一気に赤くしながら小声で「はい」と頷くリリアをさらに抱き締めるフルネール。
「素直なリリアちゃんは可愛いですねー!どっかのひねくれおっさんとは大違いです」
ひでぇ言いぐさだ。どうせひねくれてますよ!
「ただ、リリアちゃんに悪いですけど今日もう一日はお熱で寝ててほしかったですね」
さすがの物言いに大地も驚いていて、リリアに至ってはかなり困惑していた。
「え、えっとそれって」
「あ、勘違いしちゃダメですよ?リリアちゃんに苦しんで欲しいんじゃなくて……リリアちゃんのぉ、汗ばんだ体ぉ、拭いてあげたかったなぁ」
だから、ねっとり言うのは……ほらギルドの連中が……。
「あら?他の人達は私とリリアちゃんの女子トークに興味津々ですか?嫌らしいですねぇ」
その瞬間、ギルドの人達が目をそらし始めた。特に男どもの反応速度はなかなかだった。
「いや、目の前に俺いるんだけど……」
「あら失礼。でもいくら大地さんでもリリアちゃんをふきふきしてる場面はお見せしませんよ?」
何で疑問系で言うんだよ!
「見ねぇよ!ったく……ん?そう言えばグラネスさんは一緒じゃないのか」
「はい。と言っても直ぐに来ると思います」
「そうか。まぁとりあえず何か依頼でもこなすか」
そう言って席を立とうとしたときギルドのドアがバァンと勢い良く開いた(本日二度目)。ココのドアってその開け方が主流なの?そのうち壊れるぞ。っていうか、確かリリアもそういう開け方してたような……気のせいか?
「グラネスさん。あれ、そちらの方は……呪われてるんですね」
ドアを勢い良く開いて入ってきたのはグラネスともう一人別の男だ。ただ、男の方は四角い箱と鞘につてる装飾が見事な剣を滞納していた。
その二人が入り口の近くにあるテーブルへ向かうのを見てリリアがも少し急いで向かっていった。
「はい、私とあった時はまともだったんですが……」
そう言いながらグラネスは連れてきた男に視線を向けた。
男はキヒキヒとかクケケとかしゃべり、たまに歯をガチガチ噛み鳴らす。こいつぁやべぇ。これが呪いか。悪魔にとりつかれてるみたいだ。そのうち首を180度回転させるんじゃないか?
「リリアさん解除お願いできますか?」
「わかりました」
グラネスの言葉に頷いたリリアは杖の先端を男に向けて集中し始める。
「おお、すごい聖女っぽい」
と、感心してると先程ぼこぼこにした赤髪の男が近寄ってきた。
「あれが解呪の魔法です。聖女のリリア様しか出来ないんですぜアニキ」
「へー」
ってアニキ?どうやら俺はいつの間にかに舎弟をてに入れたらしい。いつかパンでも買いに走らせるか。
それじゃあパシりですよ大地さん。
どっちも同じじゃね?それにしても俺がアニキならフルネールは姉御とでも呼ぶんかね。
それでしたら私は和服でも切るべきですか?さらしも巻いて……。
……いや、そのままでいいんじゃね?
なるほど。大地さんが言いたいことは有りのままの君が好きってことですね。わかりました。
寝言が多い女神だぜ。
そうこうしているとリリアの解呪が終ったらしく、男が正気に戻ってリリアにお礼を言っていた。
「本当にありがとうございました。砂漠でこの剣を見つけて拾ってから呪われてしまいまして……」
「もう剣の呪いは大丈夫ですよ。ただ、そちらの箱からも変な気は感じますね」
「そちらの箱はよくわからないんです。たぶん呪われている時にどこからか拾ったのかもしれません」
「そうですか。こちらは私の方で何とかしておきますね」
リリアがそういうと元呪われ男は元気良く「ありがとうございます!」と言ってギルドを退場していった。
とりあえず終ったようだしリリアのところにいこうとしたら赤髪がついてこようとしてきてる。
「まだ何かあるのか?」
「いえ、ただ、アニキの近くならリリア様とお話しできるかなって」
は?リリアと話をする口実のためについてくるの?意味わかんねぇ。そんなことしなきゃならないやつじゃないだろ?
その人もリリアちゃんを尊敬してるから話しかけ――。
新人にも遠慮なく話しかけてくるぐらいだぞ。そいつらが勝手なイメージで離れてるだけだろ。
「知るか。そんなことで人を頼ってんじゃねえ。ついてくんなよ……きたら蹴る」
そう言って歩き出す大地を赤髪の男は立ち尽くすしかできなかった。
いいんですか?せっかくのパシり……パンが……。
いいんだよ。パンくらいなら買って……ごめん、金ないわ。
そんなふざけ半分の脳内会話を終わらせるとリリアのいるテーブルに近づいた。
「よう、それの中身も呪われてる物なのか?」
「たぶんそうなんですけど、どうしましょう」
「ん?どうすると言うと?」
「この手の箱に入ってる呪いの道具って開けた瞬間に呪われることもあるんです」
「私が呪われても解けはしますが時間がかかりますし……」
あー、まぁ解呪するまであの醜態をさらすのは嫌だよな。んで、グラネスさんも同じ意味で躊躇してんのかな。
ギルドの皆はこちらをチラチラ見るだけである。
アホ面並べやがって。
「仕方ない。俺が開けようか?」
「そんな、大地さんにお願いするわけには」
困り顔半分と言ったリリアだが、もう半分はどうしようもないからお願いしたい様子も混じっているように見える。
そりゃ、正面切って狂ってくださいなんて、言えないよな。フルネール言うなよ?
……何で言うとわかったんですか?はっ!まさかこれが愛!?キャー、そんなに見つめないでください~。
お前、真顔で良くそんなこと考えられるな……。
「リリア、このままじゃらちあかないだろ?」
「それは……そうですが」
「それによ」
不思議な顔をしてこちらを見上げてくるリリア。
「俺が呪われても助けてくれんだろ?せいじょさま」
普段なら嫌がっていた言い方かもしれないが今回は違う。リリアも瞳に確りと聖女の誇りをもって応える。
「もちろんです!」
「じゃあ決まりだな」
いい話だろ?ここまではいい話だろ?でも、近くに女神がいるんだぜ?
「大地さん。私にも任せておいてください。あなたの醜態は確りと目にして後でお伝えしますので!」
キリッとした表情でこちらの瞳には絶対の意思を感じさせる。なんて頼もしいんだ……コノアクマハ。
「さて……」
大地はその箱を注目する。まず見た目。木製だが黒ずむと言うか色に深見があると言うか、端的に言えば古い箱だ。大きさはリリアの顔が余裕で収まるだろうが深さがないので蓋を閉めればできの悪いサンドウィッチになるだろう。
大地はこれから自分の身に起こることに覚悟を決めながら蓋をゆっくりと開けた。
その中身には一つの仮面が入っていた。全体の色は茶色く中央には縦に稲妻のように緑のジグザグ模様が描かれている。口に当たる部分は長方形を横に傾けた形でぽっかり穴が開いている。表面はツルツルとしていて無駄な装飾は一部を除いてない。その一部というのは目に当たる部分で赤い楕円型の水晶なのだ。
「仮面……か?」
大地がその一言を発した途端、仮面の宝石が輝きだして空中に浮かんだのだ。そして大地の顔へ勢い良く飛び付いた。
――ガンッ。
大地は顔だけが上を向くように弾かれ、仮面は地面にカランと落ちる。
「いってぇ。なんなんだよ!」
「ダイチさん、大丈夫ですか?……あれ、呪われてませんね」
仮面が勝手に大地にぶつかっただけで終ったのだ。リリアからしたら意味がわからない。
だが、隣のフルネールは「ふっふっふっ」とドヤ顔気味に笑った。
「大地さんが呪われるわけありませんよ。だって私がついているのですから」
正確には【女神との契約】によるものなのだが、それをこの場では言うつもりがないフルネールはいつもの調子でいった。
今までの奇行……いや、奇妙な降るまいが功を奏したのかギルドの皆はあまり気に止めなかった。――言い換えても意味変わっていませんよ!!
「……そうですよね。それに、フルネールさんが本気で大地さんにあんな酷いこと言うわけ無いですよね」
リリアは何処か納得した様子を見せたあとニコリと笑顔を見せる。
「ももも、もちろんですよ!」
リリアの無邪気な笑顔。フルネールには効果が抜群だ。
「なぜだ……」
声が聞こえる。だが、それはこのテーブルにいる大地でもリリアでもフルネールでもグラネスでもない。
4人はしばしキョロキョロと顔を動かして声の主を探す。すると、大智に弾かれ横にとんだ仮面が地面から、すぅーっと上ってきた。
こいつが声の主か。空飛ぶ仮面……棒ゲームの敵みたいだな。俺は鍵もってないからこっちくんな。
「しかし、この珍しそうな仮面は高く売れるかな」
「そうですね。声でるなんて早々見かけないでしょうし」
「な、このワシを売る気か!」
仮面の言葉なんて耳を貸さない二人は目を光らせる。
「だ、ダメですよ」
それをリリアは慌てて止める。
「呪いを解いてからじゃないと他の人が困ってしまいますから」
本当に売るんじゃないかと心配そうな表情に変わったリリア。
……何時もの冗談だから軽く流しても良いのにな。
え?あ!そ、そうですヨネー。
……早く依頼やってお金集めるか。
「わかった。それじゃあこいつはリリアに任せて良いか?」
「はい!」
元気良く頷くリリアを見てから大地とフルネールは依頼を探す為に席をたとうとした。だが、それを仮面が必死にとめる。
「まて、まて、待ってくれ!呪おうとしたことはすまんかった!だけどワシの話も聞いてくれ!」
あまりの必死さに大地、リリア、フルネール、そして黙って見守るグラネスはお互いの顔を見あう。そして誰も動かないことがわかると全員が示し会わせたように仮面へと視線を移して仮面の話を聞くことにした。
「おほん!」
「あ、そういう『今から話す態度』とかいりません。話す気ないなら壊しますよ?」
淡々と言うフルネールの怒りが伝わってくるのがわかる。
調味料を早く買いにいきたいだけですよ。
フルネールの物言いに顔を見ていた大地へ、脳内で謎の言い訳をフルネールはする。
「……はい。話させていただきます……」
「本当にお熱は無いんですか?」
そう言いながらフルネールはリリアの額と自分の額を合わせる。
「大丈夫です。め――」
女神様と言おうとしたらその口を指で止められてしまうリリア。そこにフルネールは耳打ちをする。
「リリアちゃん。私のことはフルネールって呼んでください。理由はリリアちゃんと同じっていえばわかりますよね?」
全くの同じと言うわけではないが、様付けで呼ばれるのが嫌なのは変わらないのだ。
「え、えっと……はい」
少し困惑しながらも返事をするリリアから離れたフルネールは「確かに熱はなさそうですね」と言うが、リリアから離れる様子を見せない。
だが、美女が可愛い女の子にくっついてる様は癒されるものだ。
「大丈夫ならいいんだが、病み上がりなんだ。無理はするなよ?あと、フルネールも離れろ。他の人たちがこっちを見てる」
大地がそう言うとリリアは素直に「はい」と言うがフルネールは笑みを浮かべた。
「あれあれー?もしかして大地さん羨ましいんですか?あれだったら変わってあげてもいいんですよ?」
あれってどれだよ!ほら、リリアだって困ってるじゃないか。あとギルドの連中は暇なのか!?ずっとこっち見てんだけど。
「そんなことねぇから。まったく……」
と言って少しのため息を吐き出しているとリリアが少し照れながら言い出した。
「あの、ダイチさん。プリンとっても美味しかったです。ありがとうございました」
「あー、作ったのはフルネールだからそっちにお礼を言ってやってくれ」
作るところ見てたけど手際のよさは目を見張るものだったな。……あれ、フルネールってかなりいい女では……。
ふふふ、気づいてしまいましたね!その事を口に出してもいいんですよ?
俺の勘違いだったな。このICBM女は触れると死にかねん。
社会的にですね?
わかってるなら爆発しないでくれよ……。
「フルネールさん。プリンありがとうございました」
礼儀正しく言うリリアをフルネールは「喜んで頂けたようでなによりです」と言いながら抱き締める。
二つ目のプリンを食べてた時、大地に食べさせてもらっていた時の事を思い出してたのはリリアだけの乙女の秘密なのだ。――が。
「ねぇ、リリアちゃん」
フルネールがリリアの耳元で小声で話す。
「プリン食べてるとき……」
その言葉だけで頬を赤くするリリア。フルネールはこの分かりやすいリアクションする少女をもう少しからかいたくなり、言わなくてもわかっている言葉をリリアだけに聞こえる声量でささやく。
「大地さんを思い出してました?」
耳まで一気に赤くしながら小声で「はい」と頷くリリアをさらに抱き締めるフルネール。
「素直なリリアちゃんは可愛いですねー!どっかのひねくれおっさんとは大違いです」
ひでぇ言いぐさだ。どうせひねくれてますよ!
「ただ、リリアちゃんに悪いですけど今日もう一日はお熱で寝ててほしかったですね」
さすがの物言いに大地も驚いていて、リリアに至ってはかなり困惑していた。
「え、えっとそれって」
「あ、勘違いしちゃダメですよ?リリアちゃんに苦しんで欲しいんじゃなくて……リリアちゃんのぉ、汗ばんだ体ぉ、拭いてあげたかったなぁ」
だから、ねっとり言うのは……ほらギルドの連中が……。
「あら?他の人達は私とリリアちゃんの女子トークに興味津々ですか?嫌らしいですねぇ」
その瞬間、ギルドの人達が目をそらし始めた。特に男どもの反応速度はなかなかだった。
「いや、目の前に俺いるんだけど……」
「あら失礼。でもいくら大地さんでもリリアちゃんをふきふきしてる場面はお見せしませんよ?」
何で疑問系で言うんだよ!
「見ねぇよ!ったく……ん?そう言えばグラネスさんは一緒じゃないのか」
「はい。と言っても直ぐに来ると思います」
「そうか。まぁとりあえず何か依頼でもこなすか」
そう言って席を立とうとしたときギルドのドアがバァンと勢い良く開いた(本日二度目)。ココのドアってその開け方が主流なの?そのうち壊れるぞ。っていうか、確かリリアもそういう開け方してたような……気のせいか?
「グラネスさん。あれ、そちらの方は……呪われてるんですね」
ドアを勢い良く開いて入ってきたのはグラネスともう一人別の男だ。ただ、男の方は四角い箱と鞘につてる装飾が見事な剣を滞納していた。
その二人が入り口の近くにあるテーブルへ向かうのを見てリリアがも少し急いで向かっていった。
「はい、私とあった時はまともだったんですが……」
そう言いながらグラネスは連れてきた男に視線を向けた。
男はキヒキヒとかクケケとかしゃべり、たまに歯をガチガチ噛み鳴らす。こいつぁやべぇ。これが呪いか。悪魔にとりつかれてるみたいだ。そのうち首を180度回転させるんじゃないか?
「リリアさん解除お願いできますか?」
「わかりました」
グラネスの言葉に頷いたリリアは杖の先端を男に向けて集中し始める。
「おお、すごい聖女っぽい」
と、感心してると先程ぼこぼこにした赤髪の男が近寄ってきた。
「あれが解呪の魔法です。聖女のリリア様しか出来ないんですぜアニキ」
「へー」
ってアニキ?どうやら俺はいつの間にかに舎弟をてに入れたらしい。いつかパンでも買いに走らせるか。
それじゃあパシりですよ大地さん。
どっちも同じじゃね?それにしても俺がアニキならフルネールは姉御とでも呼ぶんかね。
それでしたら私は和服でも切るべきですか?さらしも巻いて……。
……いや、そのままでいいんじゃね?
なるほど。大地さんが言いたいことは有りのままの君が好きってことですね。わかりました。
寝言が多い女神だぜ。
そうこうしているとリリアの解呪が終ったらしく、男が正気に戻ってリリアにお礼を言っていた。
「本当にありがとうございました。砂漠でこの剣を見つけて拾ってから呪われてしまいまして……」
「もう剣の呪いは大丈夫ですよ。ただ、そちらの箱からも変な気は感じますね」
「そちらの箱はよくわからないんです。たぶん呪われている時にどこからか拾ったのかもしれません」
「そうですか。こちらは私の方で何とかしておきますね」
リリアがそういうと元呪われ男は元気良く「ありがとうございます!」と言ってギルドを退場していった。
とりあえず終ったようだしリリアのところにいこうとしたら赤髪がついてこようとしてきてる。
「まだ何かあるのか?」
「いえ、ただ、アニキの近くならリリア様とお話しできるかなって」
は?リリアと話をする口実のためについてくるの?意味わかんねぇ。そんなことしなきゃならないやつじゃないだろ?
その人もリリアちゃんを尊敬してるから話しかけ――。
新人にも遠慮なく話しかけてくるぐらいだぞ。そいつらが勝手なイメージで離れてるだけだろ。
「知るか。そんなことで人を頼ってんじゃねえ。ついてくんなよ……きたら蹴る」
そう言って歩き出す大地を赤髪の男は立ち尽くすしかできなかった。
いいんですか?せっかくのパシり……パンが……。
いいんだよ。パンくらいなら買って……ごめん、金ないわ。
そんなふざけ半分の脳内会話を終わらせるとリリアのいるテーブルに近づいた。
「よう、それの中身も呪われてる物なのか?」
「たぶんそうなんですけど、どうしましょう」
「ん?どうすると言うと?」
「この手の箱に入ってる呪いの道具って開けた瞬間に呪われることもあるんです」
「私が呪われても解けはしますが時間がかかりますし……」
あー、まぁ解呪するまであの醜態をさらすのは嫌だよな。んで、グラネスさんも同じ意味で躊躇してんのかな。
ギルドの皆はこちらをチラチラ見るだけである。
アホ面並べやがって。
「仕方ない。俺が開けようか?」
「そんな、大地さんにお願いするわけには」
困り顔半分と言ったリリアだが、もう半分はどうしようもないからお願いしたい様子も混じっているように見える。
そりゃ、正面切って狂ってくださいなんて、言えないよな。フルネール言うなよ?
……何で言うとわかったんですか?はっ!まさかこれが愛!?キャー、そんなに見つめないでください~。
お前、真顔で良くそんなこと考えられるな……。
「リリア、このままじゃらちあかないだろ?」
「それは……そうですが」
「それによ」
不思議な顔をしてこちらを見上げてくるリリア。
「俺が呪われても助けてくれんだろ?せいじょさま」
普段なら嫌がっていた言い方かもしれないが今回は違う。リリアも瞳に確りと聖女の誇りをもって応える。
「もちろんです!」
「じゃあ決まりだな」
いい話だろ?ここまではいい話だろ?でも、近くに女神がいるんだぜ?
「大地さん。私にも任せておいてください。あなたの醜態は確りと目にして後でお伝えしますので!」
キリッとした表情でこちらの瞳には絶対の意思を感じさせる。なんて頼もしいんだ……コノアクマハ。
「さて……」
大地はその箱を注目する。まず見た目。木製だが黒ずむと言うか色に深見があると言うか、端的に言えば古い箱だ。大きさはリリアの顔が余裕で収まるだろうが深さがないので蓋を閉めればできの悪いサンドウィッチになるだろう。
大地はこれから自分の身に起こることに覚悟を決めながら蓋をゆっくりと開けた。
その中身には一つの仮面が入っていた。全体の色は茶色く中央には縦に稲妻のように緑のジグザグ模様が描かれている。口に当たる部分は長方形を横に傾けた形でぽっかり穴が開いている。表面はツルツルとしていて無駄な装飾は一部を除いてない。その一部というのは目に当たる部分で赤い楕円型の水晶なのだ。
「仮面……か?」
大地がその一言を発した途端、仮面の宝石が輝きだして空中に浮かんだのだ。そして大地の顔へ勢い良く飛び付いた。
――ガンッ。
大地は顔だけが上を向くように弾かれ、仮面は地面にカランと落ちる。
「いってぇ。なんなんだよ!」
「ダイチさん、大丈夫ですか?……あれ、呪われてませんね」
仮面が勝手に大地にぶつかっただけで終ったのだ。リリアからしたら意味がわからない。
だが、隣のフルネールは「ふっふっふっ」とドヤ顔気味に笑った。
「大地さんが呪われるわけありませんよ。だって私がついているのですから」
正確には【女神との契約】によるものなのだが、それをこの場では言うつもりがないフルネールはいつもの調子でいった。
今までの奇行……いや、奇妙な降るまいが功を奏したのかギルドの皆はあまり気に止めなかった。――言い換えても意味変わっていませんよ!!
「……そうですよね。それに、フルネールさんが本気で大地さんにあんな酷いこと言うわけ無いですよね」
リリアは何処か納得した様子を見せたあとニコリと笑顔を見せる。
「ももも、もちろんですよ!」
リリアの無邪気な笑顔。フルネールには効果が抜群だ。
「なぜだ……」
声が聞こえる。だが、それはこのテーブルにいる大地でもリリアでもフルネールでもグラネスでもない。
4人はしばしキョロキョロと顔を動かして声の主を探す。すると、大智に弾かれ横にとんだ仮面が地面から、すぅーっと上ってきた。
こいつが声の主か。空飛ぶ仮面……棒ゲームの敵みたいだな。俺は鍵もってないからこっちくんな。
「しかし、この珍しそうな仮面は高く売れるかな」
「そうですね。声でるなんて早々見かけないでしょうし」
「な、このワシを売る気か!」
仮面の言葉なんて耳を貸さない二人は目を光らせる。
「だ、ダメですよ」
それをリリアは慌てて止める。
「呪いを解いてからじゃないと他の人が困ってしまいますから」
本当に売るんじゃないかと心配そうな表情に変わったリリア。
……何時もの冗談だから軽く流しても良いのにな。
え?あ!そ、そうですヨネー。
……早く依頼やってお金集めるか。
「わかった。それじゃあこいつはリリアに任せて良いか?」
「はい!」
元気良く頷くリリアを見てから大地とフルネールは依頼を探す為に席をたとうとした。だが、それを仮面が必死にとめる。
「まて、まて、待ってくれ!呪おうとしたことはすまんかった!だけどワシの話も聞いてくれ!」
あまりの必死さに大地、リリア、フルネール、そして黙って見守るグラネスはお互いの顔を見あう。そして誰も動かないことがわかると全員が示し会わせたように仮面へと視線を移して仮面の話を聞くことにした。
「おほん!」
「あ、そういう『今から話す態度』とかいりません。話す気ないなら壊しますよ?」
淡々と言うフルネールの怒りが伝わってくるのがわかる。
調味料を早く買いにいきたいだけですよ。
フルネールの物言いに顔を見ていた大地へ、脳内で謎の言い訳をフルネールはする。
「……はい。話させていただきます……」
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辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
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