上 下
17 / 17

17

しおりを挟む
ルナが見えなくなってしばらくたった頃、ロビンさんが重たい口を開いた。


「ゾフよ。お主、もしや女か?」


どうしよう、バレてしまった...なぜ急にそんな...私は救いを求めるようにラモンとマリーの方を見た。二人は驚いた表情というよりも少し困ったような笑みを浮かべ頷いていた。



「はい、私はソフィーと言います、そのう...騙すようなことをしてすみませんでした。」



ロビンさんは「まさか」と一言言ったのち額に手を当て、うんうんうなっている。



「師匠、ソフィーは」



「分かっておる、それ以上言わんでもいい。」



ラスティーノ家に関わるものなら誰でも知っている不吉な子。女神の容姿を受け継いだ少女...。



「ソフィーよ、お主、月の女神の話はどこまで知っている?特に女神が少女を誕生させるくだりについてだ。」



そのことなら確か、闇の神との約束を忘れてしまった女神がつい出来心で自分に酷似した少女をつくった、とマリーが見せてくれた文書には書いてあった。そのくだりのことだろうか....


私の表情と沈黙を何かを読み取ったロビンさんはため息をこぼした。


「ここまで妾が言って気づかぬようなら、知らぬのだな。真実を。」



「なんだなんだ~嬢ちゃんやっぱり知らずにあいつと契約しちまったんか、ついてね~な」


またもやこの陽気な声、これはラモンの聖獣様のケオル様だ。


「嬢ちゃんよく聞けよ、女神は出来心で少女を作ったんじゃないんだ。ある雌の聖獣がそそのかしたのさ、その聖獣がルナだ」



血の気がさっと引く。さっきまでのケオル様とルカのやりとり、そういうことだったのか。また、そそのかしたとい言い方が引っかかる。まだ日があって浅いルカとの絆だが、彼女は無邪気で明るい天使のような性格をしている。彼女がそんな...



ロビンさんが私を伺い戸惑いつつも言う。



「雌の聖獣は、この真実のせいで偏見がある。雌の聖獣は主人を唆す、不吉な象徴としてね...まあ妾も雌の聖獣ではあるのじゃが」


そう言うとロビンさんを巨大な光が体を包みこんだ。そこにいたのは小さな紫色の竜だった。



「ソフィーよ、妾はお主の味方でありたい。雌に対する偏見を作った張本人であるルカは許せぬ、じゃがな、雌じゃと言って所構わず偏見を持つ輩はもっと許せぬのじゃ。ソフィー、お主からは女神の優しい匂いがする。妾は懐かしい旧友にあえて嬉しいぞ。」



強く気高いロビンさんが、小さき竜の姿でまるく美しい紫の瞳に涙を溜めながらそう言ってくれた。



部屋はまた重たい沈黙に包まれていた。





****



その後、なぜ私がここで聖魔法を習おうとしていたのか問われ、私がエセ聖女をやらされていることが発覚し、ロビンさんがラモンを強く、それはもう強く言及したのち、私は被害者ということでロビンさんがちゃんと面倒を見てくれることになった。

「弟子の失態は師匠が責任を取らねばならぬ、ラモン覚えておくのじゃぞ」


ラモンとマリーは、私をこの山小屋に残して帰っていった。







しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】夫は王太子妃の愛人

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。 しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。 これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。 案の定、初夜すら屋敷に戻らず、 3ヶ月以上も放置されーー。 そんな時に、驚きの手紙が届いた。 ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。 ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...