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しおりを挟むその日の夕方、マリーが食事を部屋に運んできてくれることになっていたのだが、どうしてもお腹が空いてしまった。わざわざマリーを呼んで早めに食事を持ってきてもらうのは忍びなく、見学も兼ねて食堂に来ていた。
大神殿の食堂は、巨大な吹き抜け空間に綺麗なステンドガラスの天窓が美しい荘厳な空間で、ふわふわと漂う光玉が薄暗い空間を照らしている。長机が三列ほど並べられ、そこには見たことがないほど豪勢なたくさんの料理と飲み物がずらりと置かれていた。
そして次の瞬間、聖女様(?)ソフィーこと私はこの光景に目を見張るのだった。
本当に男しか神官はいないの???
孤児院ではソフィーが年長者で、男と呼べるような他人を見たことがなかったので、まるで異世界に来たような気分になる。それも皆が揃いも揃って、金髪に金色の瞳で、かなりの美丈夫・美男子であった。
そして、なぜそんな目で私を見るの....?
聖女が纏うために作られた純白の神官服に、お茶目なサングラスをかけた私をそんな目で見ないでください。特にイケメン達から珍獣を見たような顔か残念そうな顔を向けられるのは地味にショックです....もしかして、まだ聖女として公式の場で紹介されてないのにずけずけと来てしまったのはまずかったかしら...
マリーをはじめとした侍女・侍従達は別室で食事を取るのが決まりのようだし、ここには私に付き添ってくれるような優しい見方がいない。マリーに黙ってここに来たのは間違いだった...
ど、どうすれば良いの...ここまで来てしまったら腹の虫を抑えてから戻らないと意味がない!でも、料理が並んでいるのは見えるけどどうやったら食べられるのだろうか。マナーも知らないし、こんな豪華な料理さえ見たことがない。モジモジしはじめてしまう...
カンコンカンコン。
食堂に響く足音がこちらへ一直線に向かってくる。
「失礼いたします。あなた様は例の聖女様であらせられますね?このような場所でいかがされましたか?」
私の前に跪き、優しい笑顔を向けてくれたのは、他の神官よりも特徴的で長い帽子を身につけた人だった。少年というより青年、お兄さまと呼びたくなるような安心感のある空気を纏っている。
顔面偏差値の高い神官達の中でも目を引く造形美と、目の下にあるなきぼくろに色気がある。緩やかにカーブを描く長い髪がキラキラと煌いた。これが大人の色気、余裕というやつなのか?
彼はそっと手を私に差し出してきた。
その手も綺麗だ。どこもかしこも綺麗すぎてこっちは緊張しちゃうし、てんぱっちゃうよ...!
彼の瞳と目があった。(サングラスしてるからあっちにはわからないだろうけど)
震える手で彼の手をやっとの思いでとった時だった。
天窓から柔らかな光がそっと私の背中に差し込んだその瞬間、食堂の空気は静寂と化し、いっせいの視線が注がれたのだ。
「ああ、聖女様。あなたはなんて神に祝福されしお方なんだ。」
陶酔したような笑顔をあのイケメンから向けられる。
え?ちょっと待って。これって、ちょうど光が差し込むタイミングが神がかってただけじゃない??
その青年に続くように周囲から感嘆の声が漏れる。
え?どうして?みんな、タイミング詐欺ですってばこれ!
「聖女様、申し遅れました。私は神官長補佐官、ツヴァイ・ラスティーノと申します。この地に聖女様が降臨していただけましたこと心より感謝御礼申し上げます。聖女様を守るのは私どもの務め。なんなりとお申し付けください。そして、皆のもの、まだ公式的な紹介はなかったが、以降聖女様がお困りしていた時は、手となり足となり尽くすことは私たちの義務です。これからは聖女様をただ立たせることのないように、気をつけてください。」
それから私は席に着くと、神官達が食事を運んで来てくれた。
バイキングというらしいのだが、たくさんの料理から好きなものを好きなだけ取って食べる様式なのだそうだ。
神官達に全種類少量ずつ取り分けてもらうと、視界に収まらない数の皿が目の前に並んでいた。
こんな贅沢してバチが当たらないかしら...いいえ、私エセ聖女しているってだけですでにバチ当たり決定事項ですわ。
ええい、まずは今までに食べたことのない、ステーキという夢の料理を実食しようではありませんか!
フォークで突き刺し、口に運ぶ。
人生初ステーキ、美味し!!!!!
あれ?また背中に妙に温かな温度を感じるぞ...?
まさか...
また周辺から熱い視線を注がれる。そう、笑顔でステーキを食べた瞬間御幸がまた差し込んできたのである。
だからいちいち、光で照らさなくて結構です!
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