上 下
8 / 17

08

しおりを挟む

マリーから渡された分厚い本に手を掛ける。
神官一族に伝わる女神に関わる書物...そんな機密事項を私に教えてくれるなんて...


*****


私が小さい頃から知らせれている神話の内容はこうだった。

昔むかし、月の女神と闇の神は夫婦であった。彼らは万物の魔力を司る神で、月の女神に派生する魔力は、一点から広がるような力を持っており、例えば、光・火・雷・氷・治癒の魔力を増大させる力を持っている。一方、闇の神の魔力は、全体を包み込む流れを強化させる力があり、それは闇・水・土・風魔法が彼の得意とするものだった。魔力は彼らの性格を表していたのだろうか、何事も受け入れてしまうような寛大な闇の神の様子を勘違いした、嫉妬深い月の女神は闇の神に女を近づかせないように呪いをかけ、闇の神が反省するまで別所にて住むことを言い渡し、離れてしまう。その頃からだ、この世界には月の満ち欠けがなくなり満月しか登らない世となったのは。
しばらくして、天空より聖女が降り立った。闇夜を切り裂く青空色の瞳の美しい少女は、誰も近寄ることが呪いによってできない闇の神を哀れに思うと、彼に寄り添うことにしたのだった。いつしか闇の神と聖女の愛の力が女神の力に勝り、彼らの間に一つ王国ができた。それがヨド王国なのだった。


これは、小さい子供に魔力のイメージと属性を教えるための作り話&ヨド王国建国話であると私は思っていたが実は違うらしい。
マリーが私てくれた本にはこのようなことが書かれていた。


昔むかし、月の女神と闇の神は夫婦であった。子供をなかなか授からない月の女神は寂しくなり、自分の分身から人間を作り出し、その子を可愛がっていた。しかし、月の女神はあまりにもその人間を愛おしく思いすぎてしまったのか、ある日これが男女の愛であることに気づいてしまう。後ろめたい気持ちの中、月の女神が闇の神にそのことを伝えるとあっさりと許しを得ることができる。


「我は闇の神。何事も受け入れよう。しかし、一つ条件がある。お前の作る人間のうち女を私にくれないか。」


月の女神は思わず頷いてしまう。闇から離れて暮らすことになった女神は、女の分身は作らないことを固く決意する。自分の分身は皆、自分にとって子供のように愛らしいのだ。闇の神には渡さない。


あれから何百年もたったある日、闇の神のことを忘れかけていた女神は出来心で自分にそっくりの女の子を作り出してしまったのだ。まだ真夜中のことである、闇の神がいる方角より魔獣の大群が押し寄せてきた。一つの国は滅び、山の木々はなぎ倒され、大洪水まで起こった。女神は瞳から何百年ぶりかの涙を流した。魔獣は闇の神の使者で、なかなか渡さないその子供を拐いにきたのだった。泣きじゃくる女神から魔獣の手に渡ったその赤子の目の前に、突然天から聖女が降り立った。闇夜を切り裂く青空色の瞳をした美しい少女はその赤子にそっと手をかざした。


「お母様のところにお戻りなさい。」


その言葉とともに彼女は優しい光の星屑に変わると母である女神の体の中に戻っていった。


女神の分身より生まれた一族は、女神の容姿と強い魔力を授かることができる。それがラティーノ家一族の始祖であり、その特徴を持つものは傍系であろうと、どのようなものであっても母なる女神を信仰し仕えるべきものたちである。



あいつに言われた言葉を思い出す。不吉と言われれば、私はそうなのかもしれない。でも、受け入れたくない運命だった。女には自由を与えるなと?
そんな話が正論であって良いわけない。私が夜に出歩くことさえしなければ何事も起きない現状がある。
裏を返せば、夜に出歩くと、何か不吉なことが起きるそれは本当の事だと思った。


そうよ、夜の一人歩き絶対ダメ。
これを教訓に生き延びてみようじゃないの!!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】夫は王太子妃の愛人

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。 しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。 これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。 案の定、初夜すら屋敷に戻らず、 3ヶ月以上も放置されーー。 そんな時に、驚きの手紙が届いた。 ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。 ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...