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しおりを挟むマリーから渡された分厚い本に手を掛ける。
神官一族に伝わる女神に関わる書物...そんな機密事項を私に教えてくれるなんて...
*****
私が小さい頃から知らせれている神話の内容はこうだった。
昔むかし、月の女神と闇の神は夫婦であった。彼らは万物の魔力を司る神で、月の女神に派生する魔力は、一点から広がるような力を持っており、例えば、光・火・雷・氷・治癒の魔力を増大させる力を持っている。一方、闇の神の魔力は、全体を包み込む流れを強化させる力があり、それは闇・水・土・風魔法が彼の得意とするものだった。魔力は彼らの性格を表していたのだろうか、何事も受け入れてしまうような寛大な闇の神の様子を勘違いした、嫉妬深い月の女神は闇の神に女を近づかせないように呪いをかけ、闇の神が反省するまで別所にて住むことを言い渡し、離れてしまう。その頃からだ、この世界には月の満ち欠けがなくなり満月しか登らない世となったのは。
しばらくして、天空より聖女が降り立った。闇夜を切り裂く青空色の瞳の美しい少女は、誰も近寄ることが呪いによってできない闇の神を哀れに思うと、彼に寄り添うことにしたのだった。いつしか闇の神と聖女の愛の力が女神の力に勝り、彼らの間に一つ王国ができた。それがヨド王国なのだった。
これは、小さい子供に魔力のイメージと属性を教えるための作り話&ヨド王国建国話であると私は思っていたが実は違うらしい。
マリーが私てくれた本にはこのようなことが書かれていた。
昔むかし、月の女神と闇の神は夫婦であった。子供をなかなか授からない月の女神は寂しくなり、自分の分身から人間を作り出し、その子を可愛がっていた。しかし、月の女神はあまりにもその人間を愛おしく思いすぎてしまったのか、ある日これが男女の愛であることに気づいてしまう。後ろめたい気持ちの中、月の女神が闇の神にそのことを伝えるとあっさりと許しを得ることができる。
「我は闇の神。何事も受け入れよう。しかし、一つ条件がある。お前の作る人間のうち女を私にくれないか。」
月の女神は思わず頷いてしまう。闇から離れて暮らすことになった女神は、女の分身は作らないことを固く決意する。自分の分身は皆、自分にとって子供のように愛らしいのだ。闇の神には渡さない。
あれから何百年もたったある日、闇の神のことを忘れかけていた女神は出来心で自分にそっくりの女の子を作り出してしまったのだ。まだ真夜中のことである、闇の神がいる方角より魔獣の大群が押し寄せてきた。一つの国は滅び、山の木々はなぎ倒され、大洪水まで起こった。女神は瞳から何百年ぶりかの涙を流した。魔獣は闇の神の使者で、なかなか渡さないその子供を拐いにきたのだった。泣きじゃくる女神から魔獣の手に渡ったその赤子の目の前に、突然天から聖女が降り立った。闇夜を切り裂く青空色の瞳をした美しい少女はその赤子にそっと手をかざした。
「お母様のところにお戻りなさい。」
その言葉とともに彼女は優しい光の星屑に変わると母である女神の体の中に戻っていった。
女神の分身より生まれた一族は、女神の容姿と強い魔力を授かることができる。それがラティーノ家一族の始祖であり、その特徴を持つものは傍系であろうと、どのようなものであっても母なる女神を信仰し仕えるべきものたちである。
あいつに言われた言葉を思い出す。不吉と言われれば、私はそうなのかもしれない。でも、受け入れたくない運命だった。女には自由を与えるなと?
そんな話が正論であって良いわけない。私が夜に出歩くことさえしなければ何事も起きない現状がある。
裏を返せば、夜に出歩くと、何か不吉なことが起きるそれは本当の事だと思った。
そうよ、夜の一人歩き絶対ダメ。
これを教訓に生き延びてみようじゃないの!!!
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