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第2章:冷静に竜人国へ駆け落ちする

38:[閑話]一方ラティス王国では

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「お、お嬢様…」


侍女エレーナがアティスに伸ばした手は空を切った。


「エレーナ、姉さんを知らないか?うん?どうしたエレーナ…」


エレーナはジェイにファイ様と一緒にアティスが目の前で消えたこと、竜人の国霧月国へ行ったことを話した。


「た、大変だ‥」


****



「な、なに??アティスがファイ様に連れて行かれただと?」

ハーベル家当主ダリス・ハーベルは声を荒上げた。

「ダリス…あなたアティスちゃんのこと心配しているのね…。大丈夫よ、アティスちゃんならきっと…」

ハーベル家夫人ラフラ・ハーベルは夫を心配そうに見て、窓の外に目をやる。

「アティスちゃん…私はあなたを応援しているわ…」



****



アティスが駆け落ちしてしばらくたったある日。
一方ヒロイン、クシュナは地獄の『目指せ、王女!』レッスンを黙々とこなしていた。

アティス、特に美琴が竜人のことを気にしていることは知っていたし、
ファイ様から竜人たちが住む国霧月国に行こうと打診されていると相談された時も背中を押していた。

だって、竜人の住む国に行って竜人の修行するって少年漫画の主人公みたいでかっこいいじゃない!せっかく転生したのだから、美琴たちには悔いの残らないように生きる道を勧めたいと思った。

それに、彼女から時々届く手紙があるから、実は寂しくないし。
手紙の内容は大体、家族が元気しているか、とか、王子とは順調かとかそういうこと。

あ、そういえば30通目あたりで、エフィスに「あなたの字が読めるようになりました。努力したのですね。」とか言われたな。きっとこの私たちの文通を通して私の成長も伝わっているはず。


そんな矢先だった。
王子ジュノーが婚約を申し込んだという噂が流れてきた…
そのお相手は、アティスが今いる国霧月国の貴族の娘で、しかもファイ様の親戚らしい…。


ここに来て、強敵現るだわ!!!
ムムム、今までこんな設定なかった。
ということは支配人が私たちの恋路を邪魔しようとしているに違いない!

待っていなさい、支配人。
私はライバルが現れただけで諦めるような柔な女ではありませんわよ。
なんて言ったて私はヒロイン!
悪役令嬢というライバル枠が不足していた私にとってこれは好都合!
ライバルカモン!ドンとこい!!


クシュナは知らせを聞きますます修行に精進することとなった。



*****



最近妹、アンジュの調子がいい。
姉アティスがいなくなってからは一週間ほどずっと空な目をしていたが、ヒロインクシュナが心配して頻繁に訪れてくれるようになってから徐々に元気さを取り戻していった。
そして、ときわすれの花の研究もドリスさんと順調に進行しているらしい。
聞くところによるとアンジュは張り切って薬の研究に勤しみ、自分の病気の特効薬まで開発できそうだという。

「私は、お姉様が通う魔法学園に一緒に通えるように元気になります!お姉さまが帰ってきたらびっくりさせるつもりです。」



ねえさん。
僕らは今、姉さんののいない日常を受け入れつつある。
でもいつでも僕はアティスのことを考えているよ。
だから体には気をつけて、どうか無事に早く帰ってきて…



こうして、ねえさんのいない長い長い6年が過ぎ去ろうとしていた…

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