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第2章:冷静に竜人国へ駆け落ちする

24:冷静に観光する

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(→一応情報報告しておきます。私たちは、ファイ様に突然駆け落ちを宣言され、気づけば深い森へ空間転移させられ現在に至ります。現場からは以上です。)


「すまんすまん!!!ははっ!!うん?アティス何も持たずにここに来たのか。まあ、よいよい。あちらで買い揃えればよかろう!さぁ行こう!!霧月に!!」


いやいや、私に旅の醍醐味である荷物詰めの儀式をやらせる暇さえ与えなかったのは、ファイ様、あなたです!!



「ファイさまぁ~!!!会いたかったわぁ~!!!」



突然声が上から降ってきた。
見上げるとそこには紅色の綺麗な鳥が羽ばたいていた。


(→美琴!あの鳥です!あなたが倒れているときに月光浴をサポートしてくれていたのは!!)


「おう!シエル!元気だったか?」


「元気だったかじゃないわよ!飛行祭の後やっと帰ってきてくれたと思えばまたすぐ人間の国に行ってしまうなんて…!!置いてかれる身にもなってほしいわ!」


「すまんすまん…でもこうして帰ってきたぞ!それに数年ここにいようと思っている。またよろしく頼むぞ、シエル。」


「数年…それは大変!!!」


その赤い鳥は目をキラキラ輝かせた。


ようやく私が話し始めても良さそうなタイミングがやってきた…


「あのう、赤い鳥さん。私はアティスと言います。私が倒れているとき、あなたが月のエネルギーを私に分けに通ってくださったと聞きました。その時は助けていただきありがとうございました。」


「ああ、ファイ様が筋肉痛で動けないから代わりに行かされた時の‥あの子なのね。元気になったようでよかったわ。でもあなたなんでずっと人間の国にいたのかしら?」


「こらこら、シエル。人のプライベートを詮索しない!そして、私が筋肉痛のことは秘密って言ったろー!」


「飛行祭の翌朝には帰らないといけない理由が、竜の姿で長く飛びまわない竜人のほとんどが、翌日筋肉痛になって長い間帰れなくなるからってのは、何度聞いても間抜けな理由だわ~」


「こらこら、また機密情報喋らない、シエル…」


***


シエルさんがきてくれたおかげで、私たちは迷わず霧月国の門まで来れた。
深い森にこんな場所あったんだ‥
そこは大きな谷で岩肌がゴツゴツと剥き出し、巨大な岩が無数に乱挙していた。

その中を進むと、一際大きな岩肌の亀裂に赤い門を発見した。


「月明かりを灯すもの、ともに来たり」


ぎいーっと鈍い音を立てて門が開く。


なるほど、これが開ごまか。



門の向こうは別世界だった。
赤門ということで少しは予想していたのだが、どっこい。
ここは、完璧なる中華ファンタジーの世界だった!!!


悪役令嬢の生息領域は中世西洋風異世界のはずなのに…!!
中華に来てしまいました…完全に、悪役令嬢あるあるをフルリセットです…


門から見える商店街は人?竜人たちで賑わっていた。建築物は大体2,3階建の長屋造りで、丸瓦。屋根の先がものすごく反り上がった形をしている。街を行く人は、漢服のような服装をしているのだが、どの人も恐ろしいほどの美形だ…みんな攻略対象なんじゃないだろうかと錯覚してしまうくらい描き込みも細かい気がする…。髪の毛の色も極彩色だしここは、天人たちの国かな?


私たちが門を潜り、街の方に歩みを進めると、何やら街の人たちがチラチラ見ている気がする。


「ファイさま、あのう、私のような部外者が市中堂々歩いてもよろしいのでしょうか?」


「うん?気にすることないよ。それに君を見ているのは確かだけど、僕のことも見ているよ。僕たちみたいな白銀の髪はここでは珍しいんだ。」


「そうなのですか‥」


そういえば、私は荷造りをしてここに来なかったし、どのくらい滞在するのかまだ決めていない。ちょうどここにたくさん品物があるし、調達できるのでは…。


「あの、ファイ様。お金はあとで公爵家から私がお支払い致しますので、滞在するための、その服などを買いたいのですが‥」


「そうだね!!あ、そういうの私はよくわからないから、女性同士、シエルと行ってきたら?シエル、もう人間の姿に戻ってもいいんじゃない?」


すると、今まで赤い鳥だったシエルの姿がみるみると美しい女性に変わった。
赤くふさふさな髪は腰ほどまであり、瞳はタイガーアイのよう。その下にある泣きぼくろが実に色っぽい。とても女性的な体つきに、ぽってりとした唇。どこから見ても、妖艶で美しい大人の女性だった。


「わかったわよ。それで?あなたはどのくらい滞在するつもりなの?」


「え、ええーと、そうですね…1週間ほど滞在できれば…」


「あれれ?言ってなかったっけ?アティスは、魔法学園に入学する16歳までここで私と暮らすのだぞ?」


「シリマセンヨ!!!!そんなこと何も言ってないじゃないですか!どういうことですか!!」


「あらあら…もう、ファイさまったら、その思い立ったら一人で勝手に進行させてしまう癖、直した方がいいんじゃなくて??この子の目が飛び出て転がっていっちゃいそう。」


「すまんすまん!まあ、そういうことで、だ!よろしく頼む、シエル。」



「全く、世話を掛ける男ね。さあ行くわよ、アティスちゃん。」


(→美琴。私、アクエスという夫がいながら、それも竜人であるファイさまとこんなに長く住むなんて、そんな罪深いこと…できません!!)


うん、それ私もアクエスとか関係なく、衝撃受けてる…。



****



シエルさん御用達の服屋さんを私たちはかれこれ5軒ほどはしごしている。


「私があなたに似合う服を見繕ってあげるわ。あなたの、その人間がよく着るレースがついたフリフリしたものはここではあまり着ない方がいいわ。悪目立ちするもの。大丈夫!この私が、選んで差し上げるのよ。任せなさい。」


これ、とそれ。そして、あれ持ってきて。うん?違うわね、やっぱこれやめて。
を永遠に繰り返し、どの店でも洗濯機に入りきらない服を買っては、シエルさんの空間魔法のかかったポシェットがそれらをあっという間に吸い込んでいき…


(→これが噂に聞く爆買い…)


「これでよし!これくらいあればまずは大丈夫よ!また何かあったら言いなさい!ファイさまのつけでどっさどっさ、腹いせに買ってあげるわ!なははは」


そ、そのお金、私が払うんですけど‥


「あ!いたいた!!探したよ!二人とも。」


ファイ様が迎えに来てくれた、と思ったのも束の間、後ろにダンディーなおじさんと子供…?って、あれ?さっきまでいたシエルさまが消えてる‥?


「アティス!紹介するね。この人は、ダンテ。この子はショーン。私たちはこれから、ダンテの家でお世話になる。改めてよろしく頼むぞ、ダンテ、ショーン。」


「始めまして、アティスさま。あのう、ファイ様がご迷惑かけていないでしょうか?ファイ様が最近全然帰って来ないと思えば…。我が家は狭いですがご自分の家のようにくつろいでくださって構いませんから。」


「よろしくな!姉ちゃん!」


めっちゃいい人そう!!
やったね、エフィス!


(→まあとりあえず、二人きりでなくて安心しました…)

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