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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

23:冷静に入学前の下準備をする

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あの素敵な夜からまた私の日常は変わりつつあった。



まず、主人公クシュナについて。
もし王子と本気で結ばれたいのならちゃんと令嬢教育をすべきであることを、私たちは説得した。
クシュナはもともと騎士団長の父が庶民出の側室に生ませた娘だった。
その母はクシュナを蝶よ花よと育てていたので、令嬢教育は一切していなかった。
クシュナ本人は誰からも強要どころか提案すらされていなかったため興味がなかった。
代わりに、王子たちとチャンバラごっこや隠れんぼ、鬼ごっこなどの遊びに勤しんでいたという。



その話を聞いて、私たちは呆れたが‥まだ間に合う。



さあ、一緒に地獄の令嬢レッスンを始めましょう!!!



クシュナはそれ以来、義理のお母様、ジュリアスの母上に頼んで、国母と慣れるようなレッスンをつけてもらっているらしい…


時々愚痴を言いに来る本人の話を聞くと、私なら絶対無理レベルで厳しいスケジュールだったが、彼女はなんだかんだで楽しんでいるようだった。


だって彼女は話終わると拳を握りしめいつもこういうのだから。


「待ってなさい!ジュノー。努力は人を裏切らないですわ!!」



(→そういう熱血すぎるところを直していかないといけないのですけど。でもそこがクシュナの可愛いところでもあります。)



次に、その王子ジュノーについて。
彼との文通は実はまだ続いている。
週一程度ではあるが‥。


(→安心してください、このことはクシュナには了承済みです。彼女にかかさず見せています。)


そして文面の書き出しは決まってこうだ。



宛先:アティス嬢


ここ一週間に関するアンケート用紙です。
□にレ点を必ずつけ返信してください。


NO.1
□ファイは来ましたか?

Yesの場合のみお答えください。

ファイは何をしていましたか?詳しく書いてください。




NO.2
□クシュナ嬢は来ましたか?

Yesの場合のみお答えください。

彼女は僕の話をしていましたか?詳しく書いてください。




NO.3
竜人に関して知っていること、仲良くなるコツなどについてわかるだけ自由に書いてください。












その後になんか用事があれば何か書いてあることもあるけど、だいたいこんな感じ。
色味がないのにも程があるわよ。王子からアンケート用紙を週一でもらう悪役令嬢がどこにいますか。


(→NO3の竜人解答欄が他に比べやけに大きい…)



そして噂の、ファイ様。
ファイ様は…


「あれ?今私のこと考えていなかったか?」


私の耳元で星屑の白銀がサラッと流れた。

えっ?

彼の左手が私の背後からそっと肩に添えられている。


「キュ、急に現れるのやめてください!それも背後から、こんな近くで!!!」


「すまんすまん!アティスを驚かせるのは愉快なのだ!ははは!!
それに、そうでもしないとあのピーピーうるさい、エレーナといったか?あやつをまけぬのだ。
他に人がおっては秘密の話ができぬのでな。
それで…その、行けそうなのか?竜人の住む国、霧月国には…」


(→解説します。


アティスはもともと自分が竜人であることに不安を感じていたこと、王子からアンケートを書かせられることの理由によりファイ様が来るたびに質問していました。

ファイ様はそんなアティスを見かねて、


フ:「言葉で説明すのは少々苦手でな。よし!我が故郷、霧月国に行ってみようではないか!」

と提案されていたのでした。現場からは以上です。)


行きたいのは山々なのだが、唯一反対する家族がいる。
それはお父様だった。


「やはり…お父様がどうしても賛成してくれなくて‥」


「そうかそうか…よし!それでは私と駆け落ちしよう!!」


ファイ様は妖艶な笑顔で私の手をとった。


ええええ!!??


(→ええええええ????困ります、私にはアクエス様がいるのに…)



「何を驚いている?人間の男女が親に内緒で家出することを駆け落ちというのだろう??」


なんだ…期待しちゃっただけか。恋愛的な意味はないよね。


(→美琴、あなた気をつけた方がいいですよ。あなた、からかわれているだけかもしれません。)


「うん??あれ?アティス?もしかしてアティスって二人いたりしない?」


へっ??


(→???)



ファイ様は少し目を細めて私を見た後、また素敵な笑顔で私に微笑んだ。



「まっ、いいよ、今は。それじゃ、駆け落ちしよう!!」



私は手を急に掴まれた。



えっ?私何も準備してないよ!こういう時は旅の荷詰めから…



「アティスお嬢さま!!!!」


部屋の隅でエレーナが叫んだ。



****



「エレーナ!!!!」


叫び終わるとそこはもといた部屋ではなく、深い森の中だった。

虚しく私の叫び声がこだましていく。


「ははは!!アティス、声大きいな。」


私はじとっとファイ様を睨んだ。




「すまんすまん!!!うん?アティス何も持たずにここに来たのか。
まあ、よいよい。あちらで買い揃えればよかろう!さぁ行こう!!霧月に!!」



こうして私たちは霧月国へと駆け落ちするのであった。


(→私たち…って、私は駆け落ちは認めていませんよ!!!)

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