上 下
11 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

11:冷静にお茶会に参加する〜後編〜

しおりを挟む


突然、ジャミンがこちらを向く。

「ここの令嬢は…?見ない顔だな。あぁ、もしかして君が遂に最初で最後の参加を決めたという噂の、ハーベル家の怖い方の娘か。」


妹が、怖くない方で私が怖い方ですかい!
まあ、止むを得ない理由で欠席していた妹に対して、私は無断わがまま欠席でしたから…


「あ!いた!ねえさん!!」


お~弟よ!
こういう時にジェイって本当助けになりますね。


(→注意:ご都合主義過ぎます。)


「あ!いた~!!お兄様!」


突然、鳥のさえずりのような可愛らしい声が割り込んできた。


間違いない、この声はヒロイン…。


(→状況確認:ジョカ横キャラが全員揃いました。)



「この状況は?もしかしてジュリアス、なんか余計なこと言ってないだろうね?わりと先入観に固執するタイプだからね‥君は特に」


ジェイが味方になってくれてる…!!あの、「ツンデレに見せかけて実はガラスハート」ステイタスをお持ちの宰相息子によくぞお説教かましてくださいました!


「この状況…。ここにいらっしゃる方はだれですか?お兄様」


ヒロイン、クシュナは私の方をじっと見て、その後ジュリアスに向き直った。
そうか、ヒロインの特徴とジュリアスのみため、ピンク系の髪の毛と緑系の瞳が、確かに似ていらっしゃるわ…。


「どうしたんだい?クシュナ嬢。君らしくもなく今日は少々ご機嫌ななめかな?」



ジュノー王子がいたずらな笑みを浮かべて私たちを見比べている。



(→疲労:登場人物が多過ぎます。記録するこちらとしても、だれがだれだが…)



A I(転生前アティス)!記録してくれてたんだ!ご苦労様です!
よし、登場人物を減らす為にも、私がまずこの場から立ち去ることにしましょう。こんなに一気に来られると冷静に分析なんかできないもんね。



「はじめまして、みなさま。私はろくな噂が立たない令嬢、アティス・ハーベルでございます!ご挨拶遅くなり申し訳ございません!妹があちらにおりますのでこの場を失礼させていただきますわ!ご機嫌よう!」


その場にいた一同、ポカンとした表情になる。
そりゃあ自分を自分でディスっちゃう悪役令嬢は珍しいよね…
私は、致し方無くなって、この場を去っていく。ジェイが私を追ってきているようだ。


(→忠告:ヒロインから遠ざかっています)


わかってる!
ちょっと引いてまた再戦するから、待ってくれ。



妹、アンジュの元に戻ると、アンジュは子供たち数人に囲まれ楽しく会話していた。急に戻ってきた私を見て、その子供たちというよりその両親たちが私を見てひそひそ話をしている。絶対これは悪い方向に向かってる、なんとかこの状況悪役令嬢補正を打破せねば。



「アンジュ!あなたもパーティーを楽しんでる?私、さっき、うさぎを見つけてね、それを追いかけていたら少し迷子になってしまっていたの!ごめんなさい、私、勝手にどこかに行ってしまって…」


最初に非を認めてしまっては、変に勘ぐられるかもしれない。無邪気な子供を演じて、大人たちから私の印象を少しでもずらしていこうという作戦だ。


大人達の物陰で小さな肩が揺れている。
これはきっとジェイだな。
ジェイが笑いを堪えている…むむむむ…


「うさぎのはなし私も混ぜてもらってもよろしいですか?」


振り向くと、私とジェイを追ってきたのであろうヒロイン様がそこにいた。大人達は、可愛い会話が始まるのだと思ったのか、ニコニコしながらこの場を退場していった。


そして、この場にはアンジュ、クシュナ、ジェイそして私だけになった。


まず、私は言い逃れができないので本当にあった出来事を説明しアンジュには再度謝った。
クシュナの兄であるジュリアスをうさぎに例えたのは、一緒にいたという余計な誤解を回避するためと、ひょこっと植垣から顔を出した様子がうさぎっぽかったからという理由で納得してもらえた。クシュナは、最初こそ怪しそうに私を見ていたが、最後の方は割と普通に聞いてくれていた。


どうやらお茶会も無事お開きらしい。
無事に?まず終了してよかったと帰ろうとすると、
クシュナとジュリアス兄弟が私たちに駆け寄ってきた。


「さっきはかくれんぼに巻き込んだだけじゃなく、ジャミンが君にひどいこと言っちゃってごめんね。」

「そうですよ!お兄様!普通の令嬢はかくれんぼなんてしませんから、そういうことには誘わない!!そして、アティス、アンジュ。あなた達とお知り合いになれてよかったわ。ぜひ今度遊びに行かせていただきたいですわ!!」


「も、もちろん!!喜んで!」



こうしてヒロインと次会う約束をし、冷静にみてもまずまずなスタートを切ったのだった。




(→機密情報:生理的理由により私はこの方に強く拒否反応が出てしまいます)


名前:ジュリアス
年齢:10歳
ルックス:ピンクと白のマーブルの髪の毛、ルビー瞳
ステイタス:騎士団長の息子 、ヒロインの義兄
好きなもの:剣
嫌いなもの:ドラゴン 
   ・
   ・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...