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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

10:冷静にお茶会に参加する〜前編〜

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ついにお茶会に行く日。
いつもより質の良い紺色の生地に、細かな模様のレースがポイントごとにあしらわれた素敵なドレスを用意してもらっていた。

人生初、オーダーメイドドレスだぜ!!!


階段を降り、ホールには既にアンジュがいた。
水色のドレスに、体が冷えると行けないからか、真っ白で、光が当たるときらめくストールを羽織っていた。

そして、なぜだかジェイの姿が。

私がチラッとジェイを睨むと、睨んでないのにアンジュがビビっと背筋を伸ばした。


「ねえさん、まさか二人で行こうなんて考えてないよね?二人とも社交の場、初めてさんなんだよ?僕が着いて行ってあげなくちゃ。」


「ジェイくん!!なんて優しい方なの…でしょう。」


アンジュはジェイをキラキラした目で見つめている。

ちょちょい!
アンジュ、ジェイの腹黒スマイルに御用心あそばせ!



***



子供たちのお茶会の会場は、王宮だった。
なんでも、10歳前の子供たちが集まるこの会も、今回がラストなので、王宮でパァーっと、ということになったらしい。王宮ってことは、今回一網打尽で攻略対象に会えるんじゃないだろうか?



王宮の中庭にある芝生の上に、丸いテーブルがいくつも並べられ、美味しそうなお菓子やジュースが見える。子供たちも割と多いな、50人近くいるんじゃないか?


(→注意:ヒロインクシュナを見つけましょう)


わかってるって!
ピンクの髪でしょ~そんなにいなさそうな髪の毛だからすぐ見つかるって…
おっ?ほら、見つけた!



芝生の隅にある、薔薇の垣根あたりでピンクの頭がひょこひょこしている。



「もし?なにをしていらっしゃるのかしら?」


ぴょこん!
顔を出したのは、ヒロインではなく攻略対象だった!


おっ、お呼びでないよ!!!



(→激しく同意:即この場から撤退しましょう)



「うん?君はだれかな?初めて見る顔だなぁ…あっ、そんなことより今ね、かくれんぼしてたんだよ!!せっかくだし、君も一緒にする??早く早く!!」


無邪気な子供に手を引かれ、薔薇の垣根と垣根の間に吸い込まれた。


(→警告:繰り返します、直ちに撤退してください)



隣におわしますのは、騎士団長の息子ジュリエス。
おーい!A I!情報ファイルをくださーい!
(→音信不通:只今お掛けになった…現在使われておりません‥)



あれ?
月光浴、昨日したのにおかしいな?
まあ、いっか。


名前は、ジュリアス。
横目で彼を確認する限り、見た目は、白とピンクが混じった派手目な髪の毛をしていて、瞳はグリーンサファイアだな!ステイタス…は、ゲームで選択してないからわからない。


私が彼をじーっと観察していると、ふいにこっちを向いてきた。
薄暗い中、薔薇の木の間から光差し込み私の頬に当たった。


「き、君は…」


彼は目を見開き、すぐに私から目を逸らした。
なんとも気まずい空気に耐えきれなくなった私はとりあえず自己紹介を始める。

「ご紹介遅れてすみません。私、アティス・ハーベルと申します。お察しの通り今回、初参加です。こういう社交の場には不慣れでありますので…ご迷惑おかけするかもしれませんが、どうぞ、よろしく。」

(→忠告:こういう場合カーテシーをすると習いました)


こんな地面の上に私はしゃがみ込んでいるのですよ?かくれんぼのために!!無理なこと言わないでください。



「これはすまない、アティス嬢。かくれんぼに付き合わせてしまったかな?」



この声は、隣からではなく斜め上から飛んできた。
見上げると、そこには新たな攻略対象が微笑みを浮かべて立っていたのだった。


[情報ファイル]


名前:ジュノー
年齢:10歳
ルックス:金髪、翠顔
ステイタス:腹黒王子 
好きなもの:ドラゴン
嫌いなもの:キャーキャー令嬢
  ・
  ・


あっ!言わんこっちゃない!!
ここは攻略対象の巣窟だ…
王子がいるということは、もう一人の…



「おい、ジュノー。なにをしている。ジュリアスと一緒に走って行ったと思えば…」


「あっ、鬼に見つかっちゃった。」


王子が可愛く首を傾げた。
傾げた先を見ればそこには最後の攻略対象である宰相の次男、ジャミンがいた。


[情報ファィル]


名前:ジャミン
年齢:10歳
ルックス:漆黒の髪に水晶のような瞳
ステイタス:ツンデレに見せかけてガラスハート。コンプレックス持ち
好きなもの:兄上
嫌いなもの:父上・兄上




こんなんだっけ?
ツンデレに見せかけてガラスハート・コンプレックス持ちって
ステイタス見るだけで胃もたれしちゃうくらいのヘビーボーイなんだけどぉ…。



突然、ジャミンがこちらを向く。

「ここの令嬢は…?見ない顔だな。あぁ、もしかして君が遂に最初で最後の参加を決めたという噂の、ハーベル家の怖い方の娘か。」

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