3 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
3:冷静に転生前アティスを分析する
しおりを挟むアティスに転生して3日目。
転生前アティスについて、私は迷宮入りをしているのであった。
つまりアティスはダンジョンだったのである。
アティスは今年で10歳になる女の子。
転生前アティスはきっと、悪役令嬢あるあるのわがままお嬢様とかで?、転生者である私の慎まやかな行動を見るなり、「お嬢さま、なんか変わりましたね!」とか、侍女のエレーナに言われるんだろうなと顔をニヤつかせて期待していた私は、この後思わぬカウンターショックを受けることになる。
「お嬢さま、なんか元気になられましたね。」
ちょいとエレーナ?反応が期待と180度ずれていますよ?
少しここで弁解させてもらいましょう。転生前の私は20代。たとえそいつ(20代の私)が同じ行動をとっていても恥ずかしくないように振る舞ってきたつもりです。それを、元気になったなどと…
私が入る前のアティスって一体何者なんだ?
こう思い当たった時、私はまだ知らなかった。
このあとアティスダンジョンにことごとくコテンパにされることを…
時は遡りまして、その‘元気になりましたね’宣言をされる前を復習して見ると、その時私は、お見舞いに来たという、お父様より年上で、鼻の下にフッサフッサのお髭をちょろっとはやしたおじさまから、これまたフッサフッサの真っ白なテディーベアをもらっていたのだった。テディーベアを抱くと私の両腕にちょうどフィットしていて、毛並みの肌触りは大変よろしく、愛らしい真っ黒な瞳とお鼻が私をじっといじらしく見つめてきた。私はそれを見て少しはにかんでしまったのだ。
するとどうだろう。
それを見た周囲の人間は、私を急に直視した。
なんだかすごい視線を感じるけど…まあ変なことはしていないし、とにかくお礼でも言っておこう。
とこの状況を軽んじた私は
「おじさま、かわいいテディーベアをありがとうございます。」
と持ち前のありがとうスマイルで敬意を示しておいた。
するとまた一同、私をまじまじと目を見開いてみてくる、それも以前にもまして・・・・。
えっなに?私、なにかおかしなことをしましたか…
「アティス・・・。喜んでもらえて嬉しいよ(涙目)そうか、アティスはこういうものが好きだったんだな、そうか、そうか(涙目)」
そんなおじさまの様子を伺いながら転生者アティスは冷静に分析を始めていた。転生前のアティスは、「テディーベアなんて安価なものはいらないわ、もっと宝石とかドレスを持ってこいぃぃ」とか言う令嬢だったのか?あるいは、なにかもらっても、「そんなにもらって頂きたいのでしたら、もらって差し上げてもよろしくてよ?」みたいなツンデレだったのか?うむ~・・・・。
そんな事件?のあと、部屋に戻ってエレーナと二人だけになった時、彼女は言うか言わないか戸惑うようなそぶりを見せてあの爆弾発言を放ったのだった。また、彼女は続けてこうも言っていた。
「お嬢さまは、少し年齢相応になったと言いますか、感情的になられましたね。いい意味で変わられた・・・と思います。」
そう言いながらとても香り高い紅茶を淹れてくれている。
その様子を見ながら私の目は文字通り点になっていた。私の悪役令嬢辞書にそんなこと侍女から言われるなんて載ってない!(涙目)
それに、そんな感情的なことした覚えないよ。さらに深まる謎、転生前アティスは一体何者だったのだろうか…。冷静に分析したくても、他人から見て感情的、つまり冷静に見えない私は、冷静にという単語すら今後使える資格があるのだろうか…とさらにショックを受けていた。
(→・・・)
******
「そういえば、お嬢さま。余計なお世話かもしれませんが、ここ一週間、月光浴をされていらっしゃいませんね。その・・・お体に障られるのではありませんか?」
例の事件から転生前のアティスには悩まされてきたが、いよいよおかしな単語が出てきた…。
月光浴??なんだそれは。月光浴を嗜む悪役令嬢って聞いたことないぞ。
ついに私の目が白黒白黒点滅し始めていると、
(→(ノイズ)参照:転生前アティスは月光から魔力を回復していた。)
ふむふむ、なるほど。
私は冷静に理解した。
というのも、前から気になったっていた(→)さんの存在のことだ。さっきノイズがかかっていたし、最近口うるさくツッコミしてこないなあと思っていたけど実は魔力と関係があるのかもしれない。
(→)さんのためにも今夜は月光浴しようと決めた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる