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呼ばれて飛び出て隣国へ
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ダーウィネット・ダーウィン属王国第二王子ヴィヴィニーア・ラ・クェール殿下はご機嫌だった。
それも『超』という接頭辞が十ぐらい付きそうなほど──
表面的には金髪碧眼、仮面をつけたような穏やかな笑み、この二年で王宮内で読まない・読めない書物はないと言われるほどの知識を得、剣術はイマイチでも長鞭の鍛錬を始めてそちらに適性を見出すほどに成長した。
それもこれも隣に並び立つ、これまた金髪碧眼の──もっとも顔は分厚いベールに覆われているため誰も見ることが叶わないが──自分の肩ほどの小柄な婚約者がいるためである。
十六歳の頃はあまりなかった身長差が、自分の操る武具を変えて鍛錬も少し変えると、まるで窮屈な殻が割れたかのようにヴィヴィニーアはぐんと大きくなった。
かわりにダーウィネット・ダーウィン属王国大聖女の地位にあるフェディアン伯爵家末娘のロメリアは美しさに磨きがかかったが、身長はほぼ伸びず、慣れないハイヒールを履いてもヴィヴィニーアと目線を合わせるには顎を上げねばならない。
そのせいかはわからないが、以前の喧嘩腰で無理やり王都から追い出してどこかへ何かを取りに行かせるというものが、『護衛の訓練を兼ねて連れて行け』という命令に変わった。
そして今は王都を離れて向かっているのはロメリアが行きたかった温泉地である北の山脈ではなく、ダーウィン属王国の外側、ガウシェーン公国である。
王族ではなくデミアン大公爵家が筆頭となり治めているガウシェーン大公国は元々王国であったが、暴君と化した数代前の王が倒されると、残りの王族はすべて冠を脱いで家名を自分の洗礼名とした高位貴族へと身分を落した。
その中でも当時の第二王子であったマレク・デミアンは父王への叛逆首謀者の一人であり、また暴君を打ち倒した英雄ということで国唯一の大公爵家を名乗り、同時に国民の頂点に立ったのである。
つまり──名前を変えただけの王制が続いているというわけだ。
とはいえ政治を取り仕切るのは王侯貴族だけではなくなり、『裕福な』という形容詞が付くものの平民も参加できるようになったため、王制が続くダーウィン及びその属王国とはまた違う道を歩んでいくのだろう。
今回ヴィヴィニーア第二王子及びロメリア大聖女が彼の国に向かうのは、第三代目デミアン大公即位二周年という何とも中途半端な式典参加のためであるが、その際に現在まだ独身であるデミアン大公グラームシァ殿下の正室選定の儀を執り行うため、大聖女にその者を祝福してやってほしいという要望があった。
「……決まってもいないご正室の祝福など……何を祈れと……」
ブツブツ呟くその声はヴィヴィニーアにしか聞こえていないが、まったく持って同感である。
おまけにせっかく婚約者と外遊するめったにない機会だというのに、その喜び以上に周囲からは好奇の目で見られているのが煩わしい。
それも『超』という接頭辞が十ぐらい付きそうなほど──
表面的には金髪碧眼、仮面をつけたような穏やかな笑み、この二年で王宮内で読まない・読めない書物はないと言われるほどの知識を得、剣術はイマイチでも長鞭の鍛錬を始めてそちらに適性を見出すほどに成長した。
それもこれも隣に並び立つ、これまた金髪碧眼の──もっとも顔は分厚いベールに覆われているため誰も見ることが叶わないが──自分の肩ほどの小柄な婚約者がいるためである。
十六歳の頃はあまりなかった身長差が、自分の操る武具を変えて鍛錬も少し変えると、まるで窮屈な殻が割れたかのようにヴィヴィニーアはぐんと大きくなった。
かわりにダーウィネット・ダーウィン属王国大聖女の地位にあるフェディアン伯爵家末娘のロメリアは美しさに磨きがかかったが、身長はほぼ伸びず、慣れないハイヒールを履いてもヴィヴィニーアと目線を合わせるには顎を上げねばならない。
そのせいかはわからないが、以前の喧嘩腰で無理やり王都から追い出してどこかへ何かを取りに行かせるというものが、『護衛の訓練を兼ねて連れて行け』という命令に変わった。
そして今は王都を離れて向かっているのはロメリアが行きたかった温泉地である北の山脈ではなく、ダーウィン属王国の外側、ガウシェーン公国である。
王族ではなくデミアン大公爵家が筆頭となり治めているガウシェーン大公国は元々王国であったが、暴君と化した数代前の王が倒されると、残りの王族はすべて冠を脱いで家名を自分の洗礼名とした高位貴族へと身分を落した。
その中でも当時の第二王子であったマレク・デミアンは父王への叛逆首謀者の一人であり、また暴君を打ち倒した英雄ということで国唯一の大公爵家を名乗り、同時に国民の頂点に立ったのである。
つまり──名前を変えただけの王制が続いているというわけだ。
とはいえ政治を取り仕切るのは王侯貴族だけではなくなり、『裕福な』という形容詞が付くものの平民も参加できるようになったため、王制が続くダーウィン及びその属王国とはまた違う道を歩んでいくのだろう。
今回ヴィヴィニーア第二王子及びロメリア大聖女が彼の国に向かうのは、第三代目デミアン大公即位二周年という何とも中途半端な式典参加のためであるが、その際に現在まだ独身であるデミアン大公グラームシァ殿下の正室選定の儀を執り行うため、大聖女にその者を祝福してやってほしいという要望があった。
「……決まってもいないご正室の祝福など……何を祈れと……」
ブツブツ呟くその声はヴィヴィニーアにしか聞こえていないが、まったく持って同感である。
おまけにせっかく婚約者と外遊するめったにない機会だというのに、その喜び以上に周囲からは好奇の目で見られているのが煩わしい。
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