3 / 88
奇跡はすべての者に平等です
しおりを挟む
ガシャンッ!ドカッ!バタンッ!
「ウッギャァァァァ───ッ!!!」
いくつもの破砕音と悲鳴が、神殿の来訪者口に並べられた礼拝者席で派手に上がる。
「うるさいですねぇ……ここは神聖な場だというのに」
騒音を立させてた本人が、のほほんとのたまう。
「……おや?『聖なる光』を受けても滅ばないとは……ひょっとして、『本物』のヴィヴィニーア様でいらしましたか?それは失礼いたしました」
むろん、わかっててやっているのだ。
というか、突然乱入してきて、突然出かけろという意味不明な要求は、初めてではない──さすがに神殿でこんな騒ぎを起こされたのは初めてであるが。
とにもかくにも慌てふためく神官たちに諭され、嫌々ながらロメリアは、あらぬ方向へ腕やら脚やらを曲げてしまっているヴィヴィニーア王子とその護衛たちに対して、片手を差し延ばして雑に治癒の祈りを施す。
「おおお……」
まあ祈る形の見た目はどうあれ、目の前で不自然な折れ方をした人間の四肢が正常な常態に戻る『奇跡』のを目にした訪問者たちから、一斉に溜息と感嘆が漏れた。
実は神官たちも同じように溜息をついたのだが、神聖さを保つために咳払いで誤魔化す。
「こ、このように、聖女様はすべての者に『奇跡』をもたらします。たとえそれが憎むべき『隣人』であっても……ただ貴方たちは『真心』を持って聖女様に祈り、貴方が癒されることに身を委ねるだけでよいのです」
物は言いようだ。
ロメリアには訪問者からの祈りは必要ない。
必要なのは──信心を求める神殿の関係者であり、訪問者の寄進を喰い物にしている腐敗した貴族たちだろう。
「ウッギャァァァァ───ッ!!!」
いくつもの破砕音と悲鳴が、神殿の来訪者口に並べられた礼拝者席で派手に上がる。
「うるさいですねぇ……ここは神聖な場だというのに」
騒音を立させてた本人が、のほほんとのたまう。
「……おや?『聖なる光』を受けても滅ばないとは……ひょっとして、『本物』のヴィヴィニーア様でいらしましたか?それは失礼いたしました」
むろん、わかっててやっているのだ。
というか、突然乱入してきて、突然出かけろという意味不明な要求は、初めてではない──さすがに神殿でこんな騒ぎを起こされたのは初めてであるが。
とにもかくにも慌てふためく神官たちに諭され、嫌々ながらロメリアは、あらぬ方向へ腕やら脚やらを曲げてしまっているヴィヴィニーア王子とその護衛たちに対して、片手を差し延ばして雑に治癒の祈りを施す。
「おおお……」
まあ祈る形の見た目はどうあれ、目の前で不自然な折れ方をした人間の四肢が正常な常態に戻る『奇跡』のを目にした訪問者たちから、一斉に溜息と感嘆が漏れた。
実は神官たちも同じように溜息をついたのだが、神聖さを保つために咳払いで誤魔化す。
「こ、このように、聖女様はすべての者に『奇跡』をもたらします。たとえそれが憎むべき『隣人』であっても……ただ貴方たちは『真心』を持って聖女様に祈り、貴方が癒されることに身を委ねるだけでよいのです」
物は言いようだ。
ロメリアには訪問者からの祈りは必要ない。
必要なのは──信心を求める神殿の関係者であり、訪問者の寄進を喰い物にしている腐敗した貴族たちだろう。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる