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求愛

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「……とりあえず、パステルとかクレヨン的な物を用意させる」
「ん?」
リオンが溜息をつきつつ告げると、シーナが首をコテンを傾げる。
ピンクブロンドが揺れ、零れそうなほど大きく輝く瞳と陶磁器のような艶やかな頬をした丸っこい顔がキョトンとした表情を浮かべる様はとても愛らしく、すでに恋心の薄れたイストフですら思わずときめいてしまうほど魅力的だ。
「なんで?」
「なんで……っていうか。ほら……やっぱり、さ。子供には情緒教育って必要じゃないか?今までは唯一神の教えが何も薄められずにただ口伝だけで継承されてきたっていうのも、味気ないし。せっかく今こうやっているんだから……」
そして隙あらばとルエナの手を取り、リオンはにっこりと彼女に笑いかける。
「え?」
「王家の慣習はあるけれど、できるだけ僕らの手で子供たちを養育しよう。きっと童話を読み上げる君の声は、天使も聞き惚れるに違いない」
「ハッ……?なっ…何をっ……そ、それに養育はっ、う、乳母の仕事でっ……どっ、どうわって……?」
突然の甘ったるい告白にルエナは目を白黒させながら顔は茹でたこのように真っ赤にした。
むろんそんな感想を持ったのはシーナだけだが、リオンとルエナ以外のテーブルに着く者も護衛の者も皆一斉に砂を吐きそうな顔をして、いい笑顔で婚約者を口説くリオンにじっとりとした視線を向ける。
「……まったく。突然何を言いだすかと思ったら」
「えー?よくない?お前……ンンッ…シ、シーナ嬢はよく童話とかお伽噺を覚えているだろう?」
「ん~…まぁ、ね……小さい時はよくスケッチを描きながらブツブツ呟いてたらしいけど……あっち・・・の話より、こっちの世界で童話とかあるような国のでいいんじゃないの?まったくないってわけじゃないでしょう?」
「う~~ん……それができればいいんだけど……そういう国とはもともと繋がりがない」
「え?」
シーナがキョトンとすると、ルエナが自分を取り戻して説明をする。
「先ほど殿下もおっしゃったけれど、我が国と繋がりがあるのは信仰を共にする国々だけなの。でも……他にも神がいるなんて、何だか信じられないわ……」
「そ、そうなの…‥‥?」
「国交がない」というのは比喩的なものだと思ったのだが、どうやらシーナが考えているよりも深刻に断絶されているものらしい。
王都ではほぼ『異国的な物』を目にすることはなかったのだが、それは単純にシーナや父の懐事情によるものではなく、単純に『邪神を信仰するような下等国の物自体が国には入ってこない』という明確な理由があったのである。


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