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最悪なのはルエナの意思など無視して婚約破棄に追い込み、イストフではなく彼らの父親の妾にするために辺境に押しやられ、さらにエビフェールクス辺境侯爵家と懇意な貴族家がルエナの身の安全を盾にアルベールとの婚姻を求めて、ディーファン公爵家乗っ取りを成功させてしまうことだ。
シーナがヒロインとして王太子と結ばれる王道どころか側近の誰とも結ばれることすら拒否し、できれば独り身で今世を終えたいと思っている現在、ストーリーは捻じれまくってルエナもすでに『悪役令嬢』という役割を外れてしまっている。
そしてさっき絡まれたことから、補正機能が働いているのか何としてでもルエナを引きずり降ろそうとする力が働いているのは間違いない。
おそらくシーナが詩音でなければ。
そしてリオンが凛音でなければ。
ルエナを気狂いにさせる原因を突き止めなければ。
アルベールが失脚し復讐を企むきっかけを潰さなければ。
リオンが学園内側近に対して嫌悪感を抱いて心を閉ざしていなければ。
アルベールがリオンに対抗心を持って勉学に励まなければ。
思いつく限りと、思い至らない無数の『たられば』
『リオン王太子』という極上の玉の輿を手に入れられるのは、本来ならば、本当の席順ならば、子爵令嬢という下位貴族すれすれのシーナではなく、ルエナと同等の公爵令嬢が最適であり当然のはず。
まあ譲られたとしても侯爵令嬢ぐらいだろうが、リオンとの年齢が釣り合う令嬢がいるのならば、最上位貴族から選ばれるのが常識であり、王家と近過ぎる血を忌避さえしなければチャンスがあれば自分の手を取ってもらうために差し出すのもやぶさかではないだろう。
もっともそんな遺伝子上の欠陥を知る者は、まだこの世界にはいない。
「しかし、何でルエナ嬢をイストフの父親に嫁がせるなんて突拍子もない……」
「ない?本当にそう思う?」
「うっ……」
そこまでシーナに言われて、思わずリオンは口籠った。
前世でも官能小説やその手のマンガでよくあるではないか──自分の息子や娘と同い年ぐらいの幼な妻を娶り、調教師、自分好みの淫乱な女に育て上げたいという、いわゆる『光源氏計画』である。
そういう意味でいえばルエナではなく、第二次成長期に差し掛かるぐらいのエルネスティーヌ嬢の方にロリコン親父ならば食指が動きそうだが、そんな想像はしたくもない。
「現在の辺境侯爵家当主にとって、自領の伯爵令嬢に何の旨味があるの?正妻にもう有益な地元貴族の娘を迎えているならば、それよりも格上貴族の令嬢を妾に迎える……息子が嫌っているうちなら『嫁を冷遇しようとしているが、自分が取りなしてやる』という脅しも効くけど」
「万が一情が通って真物の夫婦になったり、子供が産まれてそれこそ絆が深まったりしたら……」
「ええ、面倒でしょうね。片や伯爵家の幼い令嬢を妻に迎えた長男、片や王都でもかなり影響力を持つ公爵家の令嬢を妻に迎えて後継ぎまで設けた次男……お家騒動の予兆ありと考えるんじゃない?」
『あり得ない未来』を話し続けるのは建設的ではないが、同席している者たち皆に危機感を持ってほしい、とシーナとリオンの会話は続いた。
シーナがヒロインとして王太子と結ばれる王道どころか側近の誰とも結ばれることすら拒否し、できれば独り身で今世を終えたいと思っている現在、ストーリーは捻じれまくってルエナもすでに『悪役令嬢』という役割を外れてしまっている。
そしてさっき絡まれたことから、補正機能が働いているのか何としてでもルエナを引きずり降ろそうとする力が働いているのは間違いない。
おそらくシーナが詩音でなければ。
そしてリオンが凛音でなければ。
ルエナを気狂いにさせる原因を突き止めなければ。
アルベールが失脚し復讐を企むきっかけを潰さなければ。
リオンが学園内側近に対して嫌悪感を抱いて心を閉ざしていなければ。
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思いつく限りと、思い至らない無数の『たられば』
『リオン王太子』という極上の玉の輿を手に入れられるのは、本来ならば、本当の席順ならば、子爵令嬢という下位貴族すれすれのシーナではなく、ルエナと同等の公爵令嬢が最適であり当然のはず。
まあ譲られたとしても侯爵令嬢ぐらいだろうが、リオンとの年齢が釣り合う令嬢がいるのならば、最上位貴族から選ばれるのが常識であり、王家と近過ぎる血を忌避さえしなければチャンスがあれば自分の手を取ってもらうために差し出すのもやぶさかではないだろう。
もっともそんな遺伝子上の欠陥を知る者は、まだこの世界にはいない。
「しかし、何でルエナ嬢をイストフの父親に嫁がせるなんて突拍子もない……」
「ない?本当にそう思う?」
「うっ……」
そこまでシーナに言われて、思わずリオンは口籠った。
前世でも官能小説やその手のマンガでよくあるではないか──自分の息子や娘と同い年ぐらいの幼な妻を娶り、調教師、自分好みの淫乱な女に育て上げたいという、いわゆる『光源氏計画』である。
そういう意味でいえばルエナではなく、第二次成長期に差し掛かるぐらいのエルネスティーヌ嬢の方にロリコン親父ならば食指が動きそうだが、そんな想像はしたくもない。
「現在の辺境侯爵家当主にとって、自領の伯爵令嬢に何の旨味があるの?正妻にもう有益な地元貴族の娘を迎えているならば、それよりも格上貴族の令嬢を妾に迎える……息子が嫌っているうちなら『嫁を冷遇しようとしているが、自分が取りなしてやる』という脅しも効くけど」
「万が一情が通って真物の夫婦になったり、子供が産まれてそれこそ絆が深まったりしたら……」
「ええ、面倒でしょうね。片や伯爵家の幼い令嬢を妻に迎えた長男、片や王都でもかなり影響力を持つ公爵家の令嬢を妻に迎えて後継ぎまで設けた次男……お家騒動の予兆ありと考えるんじゃない?」
『あり得ない未来』を話し続けるのは建設的ではないが、同席している者たち皆に危機感を持ってほしい、とシーナとリオンの会話は続いた。
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