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考察

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はっきりいってディーファン家はなりたくてなった公爵家ではない。

むしろ公爵家として盛り立てられずとも自領の産業や、『緑の指を持つ魔女』の異名のあるルエナたちの母が手掛けるガーデンパーティーが事業として成功しており、実家であるルーウェン伯爵領も素晴らしい農作地が拡がり、どちらもかなりの資産家である。
爵位が繰り下げられたとえ伯爵家となったとしてもそんなものは何の瑕疵にもならず、むしろそれを言い訳として王都から領地へと引き籠る口実にしてしまうかもしれない。
何代も前から隙あらば王都から出たら領地経営だけに取り組みたいと思うような一族であり、もし本当にルエナが王太子婚約者の地位を外されたなら、アルベールだけ王都に残してこれ幸いと実行してしまうだろう。
「とはいえ、ディーファン家の姻戚になりたいと思うような奇特な貴族がいるとは思えない。殿下の学園内側近の目に留まることを望む者たちがほとんどだろうから、私についての考察はシーナの思い違いじゃないか?」
「え?マジで言ってんの?」
シーナが目を見開くと、リオンもイストフも同時に頷く。
それに対してキョトンとしているのはアルベールの他、ルエナとエリー嬢だ。
たとえルエナ嬢が王太子妃として失格の烙印を押されたとしても、王家が施した王太子妃としての教育が消えてしまうわけではない。
それに加えて公爵家令嬢として幼い頃から叩き込まれている淑女教育があれば、性格はともかく、どこへ出しても恥ずかしくない美貌と教養のある高位貴族夫人として囲う価値もあろうというもの。
むしろ生意気な公爵令嬢を暴力と恥辱で叩き伏せ、服従させることに悦びを見出す下衆な貴族のもとに嫁がされる可能性だってあるのだ。
「もしそんな婚約申し込みがあったとしても、ルエナ様のお父様とお母様が許さないと思うけど」
「そんな奴は俺も許さん!」
『凛音は黙ってて』
場所を人目についてしまった往来ではなく、庶民としては高級店として知られるレストランへと移動して個室でティータイムを始めたが、シーナがアルベールの『自分と結婚したい令嬢などいるはずがない』という思い込みを正すべく説明を始めた。
「うっ……」
思わず憶えていた前世の言葉でシーナが注意をすると、リオンは怯んでしょんぼりと背中を丸める。
もっとも何を言ったのか理解できないアルベールたちにしてみれば、何故王太子が急に落ち込んだのか意味が解らず、謎の言葉でこの場で一番高位の者を黙らせてしまったシーナに恐れを覚えるしかない。
「逆に言っちゃえば、『ルエナ嬢をそんな好色貴族に嫁がせたくなければ、アルベール次期公爵との婚姻を纏めろ』とも迫れるのよ?」
「あ……」


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