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けっきょくルエナとリオンが仲良くなるのを妨げた誰かがいるのだが、『節度を持って未婚女性と付き合うこと』は何らおかしいことではないため、そんな忠言をした者をリオンは咎めなかったのだが──
「もっとも十歳の子供がいい歳したオッサン言い負かせるほど、俺の言語分野は発達してなかったって言うのもあるんだけどさ~」
さすがにそれから三年も経てば前世の記憶と相まって、『好きな女性』と手を繋げばもっと密着したくなるし、キスの仕方だってわかっているし、何なら自分での処理の仕方も事後始末も全部段階を踏んで経験済みであることも思い出した。
おかげで記憶にある二度目の精通は不埒なことに『動いて生きているルエナ様がいるから、エロゲーだったらやってもらいたこと妄想しちゃった』夢で、しかもそれがしっかりと侍従によって確認されて両親に報告されるという罰ゲーム的羞恥心に晒されるなど、二次元では一切表現されない王家のしきたりも通過させられた。
「だからルエナ嬢と触れたのは……舞踏会とかお茶会のエスコートぐらい……それだって、すぐに引き離されて……迎えに行った馬車の中でだって慎み深くお互い対角線上に向かい合って座ってたしさ」
しかもお目付け役の意味か、初めの頃はルエナの家庭教師が、彼女が解任されてからは専属侍女のサラがいつもルエナの横にいた。
だが時間が経つとだんだんとルエナの表情は貼り付けたような薄い笑みに変わり、そして婚約者自体を避けるかのようにエスコートの手を自分には預けなくなってしまって──
「……学園でもまったく顔を合わさなくなってしまったんだ。シオンのことはともかく、何かと身に覚えのない『女性を気軽に侍らせるのはいかがなものか』という伝言を、侍女から俺に寄こしたり……なぜ自分で来ないのかと不思議だったんだよな……」
「そうなのよね……しかもその侍女自体がリオンに色目を使ってくるって矛盾がもう……」
シーナがただの子爵令嬢であることを知り、サラはずいぶんと見下した目でリオン王太子の横に並ぶ資格がないと蔑み、それよりも自分の方がよほど横に立つのがふさわしい──と。
それを言うなら公爵家の令嬢であるルエナの方が家格的に王家にふさわしいのだが、侯爵令嬢であるサラは遠縁とはいえティアム公爵家の血が入っているのだ。
そしてそのティアム公爵家は、また王家から臣下降籍した数代前の王の次兄の末裔である。
しかも自分の主人がいないのをいいことに、王妃の弟というまったく王家の血が混じらない元侯爵家あがりの令嬢などよりよほどふさわしいとはっきり口にした。
もっともそんなことをほざく婚約者すらいないただの侯爵令嬢・・・・・・・であるサラに向かって、リオンの学園側近たちが冷笑を浮かべているのを見て怯み、そこでは大人しく引き下がってくれたのだが──
「本来なら婚姻して子供ができない場合、自分の侍女を側妻に薦めるという慣習もあったが……」
「今の国王様は、側妃は置いていないものね」
「ああ……だから、十人もの側妃と適当に手を出して勝手に愛妃を数十人も作った好色王と呼ばれるご代前の王のような節操なしでなければ、ひとりかふたりぐらいは側妃を……と言われていたのだけれどね」
「……そう言えば、何故か弟君もお産まれになったし、今はまた妊娠……おっと」
ようやく氷解しつつあったアルベールがシーナの軽口調にまたガチッと固まったのを見て、慌てて口を噤む。
「ハ…ハハハ……うん、この世界ではまだ『懐妊』とかね。うん。そうなんだ……十八違いの妹か弟……十歳違いの弟も設定には無かったんだけどなぁ」
「そうなのよね……何か……ありがちなんだけど、やっぱりアタシのこの『ヒロイン脱皮状態での悪役令嬢をヒロインに持ち上げちゃえ作戦』のせい……?」
「何、そのダッサイ名前。マジか。マジだな?マジだよな、そのネーミングセンスの無さ!……それはともかく、うん……設定変更はその線が濃厚だけど、父上と母上がまた子を授かったのは、アルベールとルエナ嬢のお母上のおかげなんだ」
「え?」


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