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練習
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ただし素直に父親に訴えたところで、やはり『幼い息子が何か言っている』ぐらいできちんと聞いてもらえないのでは──そう思ったアルベールは、まずは自分の剣の先生に向かって話をしてみることにした。
いわば『練習台』としての話しかけだったのだが、貴族の息子としては正解な行動だった。
「……なるほど。アルベール君が悩んでいたのは、お父上があなたより王子殿下のお話の方をよく聞き、ご子息であるアルベール君の方にはあまり気を付けてくれなかったということなのですね……」
「えぇと……そういうことでは……」
いや、そういうことだったかな?
大人の難しい言い回しに頭が少し混乱してしまったが、やはり自分の言っていることは大人には通じないのかとがっかりする。
「ん?違う?アルベール君とお父上はよく話をされているのでは……?」
「いえ……しない、です……」
「お食事中は?」
「ちちうえとははうえがいっしょにおはなしをされますが、ぼくは……ひとりです」
食事はひとりで子供部屋で取るか、同席したとしても話を振られることはなく一人黙々と食べているが、父も母も自分の仕事や交友関係から得られた情報交換で、せいぜい息子がテーブルマナーから逸脱したことでもしでかさない限り、注意を向けることはない。
日中も父は執務や王宮へ仕事へ行ってしまって顔を合わすことはなく、母は貴婦人たちとの交流やお茶会のテーブルセッティングの相談で出掛けてしまう。
アルベールは乳母と一緒にいる他はこうやって剣の稽古をするか、子供部屋で勉強をするかなのだが、その成果を褒めてくれるのが乳母だけであればやりがいがなくなり、どんどん興味のないことは『自分には不必要』と決めつけて意識を向けることがなくなっていった。
そしてその手を抜いた分を公爵当主に相談するべき教師は『楽だから』と放置して──要は悪循環となっている。
「……そんな。乳母殿……このディーファン公爵家において、たったひとりの令息であられるアルベール君の教育が蔑ろにされていることに、ご当主はお気付きではないのか?!」
じっくりゆっくりとアルベールから話を聞いた結果、予定されていた授業をすっぽかしたにも関わらず家庭教師はのんびりと子供部屋で自分のための読書を楽しんでおり、時間になってアルベールのために軽食を持ってきた乳母が慌てて探し回るという騒動が起きたのである。
しかもそのことをランベール・ムント・ディーファン公爵に報告する者もいないとを知った剣の先生は、乳母に向かって怒鳴った。
「わかった!私がお話しする!行くぞ、アルベール君!」
稽古中に大怪我をしかねない行動をした時にアルベールを叱りつけた時のような怒りぐあいで、剣の先生は執務中の父の部屋へ、アルベールを連れて乗り込んだ。
いわば『練習台』としての話しかけだったのだが、貴族の息子としては正解な行動だった。
「……なるほど。アルベール君が悩んでいたのは、お父上があなたより王子殿下のお話の方をよく聞き、ご子息であるアルベール君の方にはあまり気を付けてくれなかったということなのですね……」
「えぇと……そういうことでは……」
いや、そういうことだったかな?
大人の難しい言い回しに頭が少し混乱してしまったが、やはり自分の言っていることは大人には通じないのかとがっかりする。
「ん?違う?アルベール君とお父上はよく話をされているのでは……?」
「いえ……しない、です……」
「お食事中は?」
「ちちうえとははうえがいっしょにおはなしをされますが、ぼくは……ひとりです」
食事はひとりで子供部屋で取るか、同席したとしても話を振られることはなく一人黙々と食べているが、父も母も自分の仕事や交友関係から得られた情報交換で、せいぜい息子がテーブルマナーから逸脱したことでもしでかさない限り、注意を向けることはない。
日中も父は執務や王宮へ仕事へ行ってしまって顔を合わすことはなく、母は貴婦人たちとの交流やお茶会のテーブルセッティングの相談で出掛けてしまう。
アルベールは乳母と一緒にいる他はこうやって剣の稽古をするか、子供部屋で勉強をするかなのだが、その成果を褒めてくれるのが乳母だけであればやりがいがなくなり、どんどん興味のないことは『自分には不必要』と決めつけて意識を向けることがなくなっていった。
そしてその手を抜いた分を公爵当主に相談するべき教師は『楽だから』と放置して──要は悪循環となっている。
「……そんな。乳母殿……このディーファン公爵家において、たったひとりの令息であられるアルベール君の教育が蔑ろにされていることに、ご当主はお気付きではないのか?!」
じっくりゆっくりとアルベールから話を聞いた結果、予定されていた授業をすっぽかしたにも関わらず家庭教師はのんびりと子供部屋で自分のための読書を楽しんでおり、時間になってアルベールのために軽食を持ってきた乳母が慌てて探し回るという騒動が起きたのである。
しかもそのことをランベール・ムント・ディーファン公爵に報告する者もいないとを知った剣の先生は、乳母に向かって怒鳴った。
「わかった!私がお話しする!行くぞ、アルベール君!」
稽古中に大怪我をしかねない行動をした時にアルベールを叱りつけた時のような怒りぐあいで、剣の先生は執務中の父の部屋へ、アルベールを連れて乗り込んだ。
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