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もちろん敵が出てこないこの部屋の中であれば、寝ずの番などいらない。
しかし少しでもベテラン冒険者たちに近付きたいと、アンバールたちはこのダンジョンに来るまで行ってきた野営のローテーションを崩さなかった。
それは眠っているはずのバルトロメイを警戒する意味もあり──話した感じでは、同じ新人冒険者として寝首を掻いたり、自分たちの持ち物を盗んでこっそりダンジョン内に出て行くとは思ってはいないが。
しかしニコニコと人畜無害な顔をしながら相手を騙して荷物をごっそり奪っていくようなことは、ある意味素性を隠すことが可能な『冒険者』という職業では日常茶飯事と言えなくもないのだ。
ひょっとしたら『剣を取られた』というのが作り話で、わざと単独行動しているバルトロメイが獲物となる冒険者パーティーを待ち構えてて、自分たちが安全だと思って寝込んだ隙に部屋に入ってくる算段を立てているかもしれない。
バカバカしいかもしれないが、こんな若さで冒険に出るなら用心に用心を重ねろと、彼らの師匠は口を酸っぱくして何度も何度も言い聞かせたぐらいそれはとても必要なことだと、人一倍無口なポリネはふんっと鼻息を荒くしてバルトロメイの寝姿を睨みつけた。
──が。
仮眠の間にチェットと寝ずの番を交代したが、スゥスゥと穏やかな寝息を立てているバルトロメイは行儀よく寝返りを打つだけで1度も目を覚まさず、当然のことだが誰も部屋に侵入することもなかった。
「……よし。じゃあどうせなら、こっから共同戦線で脱出と行こうか!」
「おう!」
「リーダーに従うよ」
「え?一緒に行っていいの?」
アンバールの掛け声に機嫌よく返事をしたクガンと、仕方ないなと肩を竦めるチェットの顔を見渡してから、バルトロメイは自分のそばにいるポリネに向かって尋ねれば、無言のままその頭が頷いた。
「ああ、武器がないのに一発で地上に出られる部屋を引き当てようなんて、賭けをするにも程がある。俺たちと一緒にいれば、助かる可能性も高いだろう?悪いけど戦闘になったとしたら荷物持ちぐらいはやってもらうけど」
「あ、うん、いいよ。もちろん」
どこかのパーティーに助っ人として参加した時も、いつの間にか戦闘要員ではなく荷物持ちの位置になってしまうことが多かったバルトロメイは、特にその扱いに不機嫌になることもなくさっそく自分の荷物と一緒にアンバールの前に立って行動開始の言葉を待った。
しかし少しでもベテラン冒険者たちに近付きたいと、アンバールたちはこのダンジョンに来るまで行ってきた野営のローテーションを崩さなかった。
それは眠っているはずのバルトロメイを警戒する意味もあり──話した感じでは、同じ新人冒険者として寝首を掻いたり、自分たちの持ち物を盗んでこっそりダンジョン内に出て行くとは思ってはいないが。
しかしニコニコと人畜無害な顔をしながら相手を騙して荷物をごっそり奪っていくようなことは、ある意味素性を隠すことが可能な『冒険者』という職業では日常茶飯事と言えなくもないのだ。
ひょっとしたら『剣を取られた』というのが作り話で、わざと単独行動しているバルトロメイが獲物となる冒険者パーティーを待ち構えてて、自分たちが安全だと思って寝込んだ隙に部屋に入ってくる算段を立てているかもしれない。
バカバカしいかもしれないが、こんな若さで冒険に出るなら用心に用心を重ねろと、彼らの師匠は口を酸っぱくして何度も何度も言い聞かせたぐらいそれはとても必要なことだと、人一倍無口なポリネはふんっと鼻息を荒くしてバルトロメイの寝姿を睨みつけた。
──が。
仮眠の間にチェットと寝ずの番を交代したが、スゥスゥと穏やかな寝息を立てているバルトロメイは行儀よく寝返りを打つだけで1度も目を覚まさず、当然のことだが誰も部屋に侵入することもなかった。
「……よし。じゃあどうせなら、こっから共同戦線で脱出と行こうか!」
「おう!」
「リーダーに従うよ」
「え?一緒に行っていいの?」
アンバールの掛け声に機嫌よく返事をしたクガンと、仕方ないなと肩を竦めるチェットの顔を見渡してから、バルトロメイは自分のそばにいるポリネに向かって尋ねれば、無言のままその頭が頷いた。
「ああ、武器がないのに一発で地上に出られる部屋を引き当てようなんて、賭けをするにも程がある。俺たちと一緒にいれば、助かる可能性も高いだろう?悪いけど戦闘になったとしたら荷物持ちぐらいはやってもらうけど」
「あ、うん、いいよ。もちろん」
どこかのパーティーに助っ人として参加した時も、いつの間にか戦闘要員ではなく荷物持ちの位置になってしまうことが多かったバルトロメイは、特にその扱いに不機嫌になることもなくさっそく自分の荷物と一緒にアンバールの前に立って行動開始の言葉を待った。
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