間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

文字の大きさ
上 下
213 / 256

感激する者。

しおりを挟む
ロダーは知識として『何本ものカラトリーを次々と使って、一皿ずつ料理を食べる』ぐらいの知識はあったが、所詮は盗み聞きしたぐらいであり、実際使っている者たちを見たことはない。
それに輪をかけて料理を食べるときのルールをよく知らないバルトロメイは、自分の目の前に置かれている空の皿と左右に置かれているカラトリーを面白そうに眺めているだけだった。
「失礼いたします」
そんな声が掛けられたかと思うと、サッとテーブルの上から食器が全て下げられてしまった。
キョトンと2人が顔を見合わせているが、誰も説明してくれない。
そしてそのまま待つこと数分──料理が少しずつ乗った細長い皿が出てきた。
「夫人より『悩みながら食べては、食事が美味しくないかもしれない。こちらでお料理と共にひと組ずつお出しするように』と……僭越ながら、お料理の順番をご説明させていただきます。まずこちらのアミューズ…一口で召し上がっていただく料理をどうぞ。その後にスープをお召し上がりいただき、メイン料理をお持ちいたします」
「あ、はい」
流れるように説明してもらい、バルトロメイもロダーも大人しく頷くしかない。
小さめのフォークとスプーンがそれぞれ皿の脇に置かれ、「そちらをお使いください」と促されてから、同時に手を付けた。
「………ううっまっ!!」
「なんて言ったらいいのかわかんないけど……何か、すごく、美味しい…?」
ロダーは目を真ん丸にしたが、バルトロメイはそんなに複雑な料理を食べたことがないため、『これはたぶん美味しいのだ』と思うのだが、うまく説明できない。
しかし同じテーブルに着くロダーが「美味い!」「すげぇ!」「こんな美味いの食べたことがない!」といちいち声を上げてくれるお陰で、バルトロメイも今口にしている物が『美味しいモノ』だと記憶に刻みつけることができる。
そして最初は緊張していた2人は、次々と口にする美味いものに徐々に警戒心を緩めさせ、次いで表情も緩ませていった。


しおりを挟む

処理中です...