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では明日明後日にでも出立する──そんなわけにはいかず、なし崩しに始まった共同生活はまだ続き、外見ではわからない改造がバルトロメイの小さな家で起きていた。
屋根裏部屋には相変わらず住人の数に見合わない寝具があったり、食糧庫にはバルトロメイの手伝いに感謝する人たちからもらった食べ物がある。
少々変わったのは、数本のアルコール類が切ることなく置かれるようになったことだろうか。
だが一番の変化は、納屋へ出る扉の横に階段がついたことだ。
上方へではなく下方へ向かうその段を下りきれば、上階より広い空間ができており、薬草のいい匂いが充満している。
しかもその部屋は廊下の左側にあり、右側にはもう1つの寝室と、平民の家としては贅沢な浴室ができていた。
「……すごい」
「そうだぞ?俺様はすごいんだぞ?いいかげん恐れやがれ!」
「え?何で恐れなきゃいけないの?」
バルトロメイは素直に感動したが、ロダーがそれ以上のものを強要しても意味がわからず、コテンと頭を傾げる。
何せ師匠のマクロメイは丸太を板に切り出し、乾燥させ、崩れそうだった厩を大人2人と子ども1人が快適に住める家を建ててしまったのだ。
そして彼らの『家』から離れた所に新しく建てられた僧兵たちの宿舎は、自分から神殿を出てきてしまったエクルー僧兵大隊長が率先してマクロメイから分けてもらった板を使って作られた物である。
つまり──どういう魔法で作られたものかは理解できずとも、『魔法で家を立てることはできるし、魔法が使えなくても人力で建ててしまえる』ということを知っている以上、バルトロメイにとっては別に驚くことでも何でもないという理屈だ。
もちろんロダーにはそこら辺の事情を知るはずもなく、「もっと敬えー」としか言わない。
屋根裏部屋には相変わらず住人の数に見合わない寝具があったり、食糧庫にはバルトロメイの手伝いに感謝する人たちからもらった食べ物がある。
少々変わったのは、数本のアルコール類が切ることなく置かれるようになったことだろうか。
だが一番の変化は、納屋へ出る扉の横に階段がついたことだ。
上方へではなく下方へ向かうその段を下りきれば、上階より広い空間ができており、薬草のいい匂いが充満している。
しかもその部屋は廊下の左側にあり、右側にはもう1つの寝室と、平民の家としては贅沢な浴室ができていた。
「……すごい」
「そうだぞ?俺様はすごいんだぞ?いいかげん恐れやがれ!」
「え?何で恐れなきゃいけないの?」
バルトロメイは素直に感動したが、ロダーがそれ以上のものを強要しても意味がわからず、コテンと頭を傾げる。
何せ師匠のマクロメイは丸太を板に切り出し、乾燥させ、崩れそうだった厩を大人2人と子ども1人が快適に住める家を建ててしまったのだ。
そして彼らの『家』から離れた所に新しく建てられた僧兵たちの宿舎は、自分から神殿を出てきてしまったエクルー僧兵大隊長が率先してマクロメイから分けてもらった板を使って作られた物である。
つまり──どういう魔法で作られたものかは理解できずとも、『魔法で家を立てることはできるし、魔法が使えなくても人力で建ててしまえる』ということを知っている以上、バルトロメイにとっては別に驚くことでも何でもないという理屈だ。
もちろんロダーにはそこら辺の事情を知るはずもなく、「もっと敬えー」としか言わない。
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