間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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保護される者。

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その後はバルトロメイには軽い監視が付き、彼でなくとも果たせる軽い仕事は冒険者ギルドへ正式に依頼を出すようにという指導が村人に対して為された。
最初は誰も彼も無料《タダ》あるいは簡単な食べ物の礼ぐらいで面倒事を引き受けてくれた便利さと気易さと金銭で贖うことに対する損得勘定で反論してきたが、この村だけの特別価格をとりあえず適応することや、バルトロメイが近いうちにこの村を発つことを説明すると、渋々ながら冒険者ギルドのやり方を受け入れ始めた。
おかげで真新しい冒険者ギルド受付の掲示板には少額の依頼がぽつぽつと貼られ、にわかに増えた冒険者たちと余所者が歩き回ることにいい顔をしない村人の間に交流が増え、お互いの存在に慣れていく。

むろんそれは良い事ばかりでなく、いざこざや問題も発生した。

あまりにも問題を起こすような冒険者は村での依頼を受けることは禁止されたが、それは村人側でも同じだ。
『持てる者は出せ。持っていない自分には奉仕せよ』という強気な態度で、値段に見合わぬ難易度や物量の依頼を出す村人は依頼禁止となる。
そしてこの村での事例がきっかけとなり、冒険者ギルドの中央部や地方、大きい市と小さな集落での依頼料の規定や差額の補填などが見直されたり新しく決まったりなどするのだが、バルトロメイはそのきっかけが自分にあるとはまったく知らなかった。


真新しい冒険者ギルド施設──それはレーアの生家だったが、しっかりとその存在が確立されると、受付にはレーア自身が立つようになった。
一時期は見習いから正式に教会に勤める修道女になるつもりだったが、この村の冒険者ギルド長となったアギディハーンと補佐のラン・バクーに請われて受付嬢として働くことに同意したのである。
これは教会ではあるものの、同時に村に滞在する冒険者たちの簡易宿泊施設も兼ねている場所に年若いレーアが住むことにふたりが危機感を持ったため先に決めたことを変更した結果だ。
確かにこの村で生まれ育ったレーアではあるが、父親が余所者であったことに冷たい目を向ける者もいたし、また孤児になったレーアを村の男たちの慰み物にしようとしていた前任の教会長たちの計画を潰したとはいえ、それを餌に寄付を続けさせられていた者たちが守り手のいない少女を穢そうとしないとも限らない。
冒険者稼業に女性がいないとは言わないが、絶対数が少なく、報酬を出されたとしても常駐してレーアを守ってくれるにも限界がくるだろう。
何せ『冒険者』なのだから、ひと処に留まるのが苦手な者が多い。
であれば、役割として村を離れることのないギルド長と副ギルド長が目を光らせる場所にいてもらう方がいいという判断だ。


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