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切り倒す者。
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その後は──
赤い霞がかった視界にはゆらり、ゆらりと動く緑と薄赤い影が映る。
それはヒラヒラと幾枚もの腕のような葉がくるりと干からび動かない衣服を纏った骨と皮だけの男たちを絡めとって蠢いている。
だから。
シュッとバルトロメイの腕が動き、同じくらいの素早さで背後に近付いていた葉の付け根をすっぱりと切り取った。
そしてそのままの円の動きで足元に這い寄っていた根の先も切り落とす。
勢いがついていたのか切られた根はその這い寄るスピードのまま遠くへ弾き飛ばされ、まるで痛みを感じるかのように幹のように太い茎がくねってその先で咲いている大輪の花がブルンブルンと大袈裟に振られて、ぷつりと大きな花片が何枚か千切れ堕ちてきた。
それらはひらりとかふわりとか可愛らしいものではなく、ズシンと音を立てて地面に落ち、土埃を舞い上げる。
「………こっ……のっ……」
何故か、怒りが沸く。
沸点に達したまま、バルトロメイは地面を蹴り、一気に巨大花の茎に駆け寄り、あっさりと地面スレスレから横切りに剣を振るった。
ズル。
ジュル。
ジュル。
そんな粘液の音を立てながらゆっくりと茎はズレて、重たい花部分を大きく振り回すように地面に倒れた。
その様自体はとても美しいと思えるものだったかもしれないが、儚い散り際とは裏腹に、ドォォォォンッと地響きを伴う重音を立ててその巨大な花部分と茎は地面にめり込み、さらに動けない男たちを巻き込んで動かなくなる。
ドロリとした樹液というか粘液が茎の切り口から溢れ出て、地面下に残った根がそれを吸おうとボコり、ボコりと這い出てきた。
<……貴様たちも、逝け>
ザクリ、とひと振りごとに根は千切られ、最後に残った茎と根の結合部分が真っ二つにされると、さすがにその植物性の魔物は蠢くのを止めた。
辺りを見回すと人の形を保ったままの骨がたくさん床にある。
どうやらあの粘液は生物を溶かしてしまうらしく、息をするだけしかできなかった者たちをすべて巻き込んで息絶えたらしい。
よく見ればバルトロメイの服もボロボロになっており、ドファーニから贈ってもらった新しい魔物製の革鎧でなければ丸裸になっていたか、それ以上に骨まで溶かされていたかもしれなかった。
だが、そんな惨状でも泣いているわけにはいかない。
いったいここがどこでこの先に進む場所を見つけるべきか、戻るべきか。
「…………ぅ…………」
コポリと粘液が弾け、微かな呻き声が聞こえた。
赤い霞がかった視界にはゆらり、ゆらりと動く緑と薄赤い影が映る。
それはヒラヒラと幾枚もの腕のような葉がくるりと干からび動かない衣服を纏った骨と皮だけの男たちを絡めとって蠢いている。
だから。
シュッとバルトロメイの腕が動き、同じくらいの素早さで背後に近付いていた葉の付け根をすっぱりと切り取った。
そしてそのままの円の動きで足元に這い寄っていた根の先も切り落とす。
勢いがついていたのか切られた根はその這い寄るスピードのまま遠くへ弾き飛ばされ、まるで痛みを感じるかのように幹のように太い茎がくねってその先で咲いている大輪の花がブルンブルンと大袈裟に振られて、ぷつりと大きな花片が何枚か千切れ堕ちてきた。
それらはひらりとかふわりとか可愛らしいものではなく、ズシンと音を立てて地面に落ち、土埃を舞い上げる。
「………こっ……のっ……」
何故か、怒りが沸く。
沸点に達したまま、バルトロメイは地面を蹴り、一気に巨大花の茎に駆け寄り、あっさりと地面スレスレから横切りに剣を振るった。
ズル。
ジュル。
ジュル。
そんな粘液の音を立てながらゆっくりと茎はズレて、重たい花部分を大きく振り回すように地面に倒れた。
その様自体はとても美しいと思えるものだったかもしれないが、儚い散り際とは裏腹に、ドォォォォンッと地響きを伴う重音を立ててその巨大な花部分と茎は地面にめり込み、さらに動けない男たちを巻き込んで動かなくなる。
ドロリとした樹液というか粘液が茎の切り口から溢れ出て、地面下に残った根がそれを吸おうとボコり、ボコりと這い出てきた。
<……貴様たちも、逝け>
ザクリ、とひと振りごとに根は千切られ、最後に残った茎と根の結合部分が真っ二つにされると、さすがにその植物性の魔物は蠢くのを止めた。
辺りを見回すと人の形を保ったままの骨がたくさん床にある。
どうやらあの粘液は生物を溶かしてしまうらしく、息をするだけしかできなかった者たちをすべて巻き込んで息絶えたらしい。
よく見ればバルトロメイの服もボロボロになっており、ドファーニから贈ってもらった新しい魔物製の革鎧でなければ丸裸になっていたか、それ以上に骨まで溶かされていたかもしれなかった。
だが、そんな惨状でも泣いているわけにはいかない。
いったいここがどこでこの先に進む場所を見つけるべきか、戻るべきか。
「…………ぅ…………」
コポリと粘液が弾け、微かな呻き声が聞こえた。
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