間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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手助けする者。

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言ってはなんだが、襲撃を想定して隊列を組み経験も積んでいた護衛たちに対して、とにかく自分たちの欲だけで徒党を組んだ者たちでは覚悟も力量も天地の差であった。
重傷の一歩手前ぐらいの怪我を負った者はいたものの、ほとんどはかすり傷かそれすらも負っておらず、ついでに荷物についても一切強奪はされなかった。
しかも彼らが当て込んでいた人的資源──『女』に関してはドファーニ商会の町支店に行けば従業員がいるので同行しておらず、ましてや奴隷なども連れていないため、最初から望みが叶うことはなかったのである。

「……結局僕は役に立ちませんでしたぁ…………」
「ハッハッハーッ!まあそういう時もあるぜ!次だよ、次!それまでにシッカリ実践訓練積んでおけって!」
ガックリと肩を落として丸くなったバルトロメイを、自分の馬も荷馬車に繋いだラジムという冒険者がバシバシと背中を叩いて慰めた。
偉そうなことを言ってはいるがラジム自身も3年前に冒険者登録したばかりの20歳の青年で、シェイジンの弟子である。
剣よりも馬の扱いに長けているため、いずれは冒険者ではなくどこかの騎士団に所属したいと思っているが、その加入試験のための資金を稼ぐために、師匠と共に旅をしていた。
今回の護衛依頼を受けたのは師匠であるシェイジンだが、彼自身が引退後の再就職先を見据えたのと、弟子のラジムに団体行動を経験させる目的もあるとバルトロメイに話してくれた。
面倒見のいい師匠にふさわしく、やはり気のいい弟子のラジムはどうやらバルトロメイを弟弟子の立ち位置にしたいらしく、何かと稽古をつけてくれるだけでなく、他の冒険者たちがバルトロメイにアレコレ言い寄ろうとするのも防いでくれる。
もちろんそんなラジムたちの妨害を快く思わない者や手癖の悪そうな連中は、ドファーニが伝令や世話焼き役として各グループに配置している従業員から報告され、次には依頼が出たとしても雇用契約には至らない。
それがわかっているのは何度もこの護衛依頼を直接指名されている冒険者たちで、彼らは積極的にバルトロメイにも不届き者たちにも関わらずに護衛に徹し、戦闘によって負傷した者はドファーニから十分な危険手当が約束されている。

だからといってバルトロメイがラジムに連れてこられれば親しく話をし、少しでも稽古をつけてくれと頼まれれば2人まとめて面倒を看てもくれる。
冒険者としてまったく経験のないバルトロメイと、3年ほど先輩といえどランク的にはまだDランクに上がり切れないラジムを教えるのは楽しいらしく、いつの間にか若輩者に指導をする熟練者グループと、それに反発する若いがランクの高い冒険者グループというふうに分かれてしまった。


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