73 / 257
手助けする者。
しおりを挟む
言ってはなんだが、襲撃を想定して隊列を組み経験も積んでいた護衛たちに対して、とにかく自分たちの欲だけで徒党を組んだ者たちでは覚悟も力量も天地の差であった。
重傷の一歩手前ぐらいの怪我を負った者はいたものの、ほとんどはかすり傷かそれすらも負っておらず、ついでに荷物についても一切強奪はされなかった。
しかも彼らが当て込んでいた人的資源──『女』に関してはドファーニ商会の町支店に行けば従業員がいるので同行しておらず、ましてや奴隷なども連れていないため、最初から望みが叶うことはなかったのである。
「……結局僕は役に立ちませんでしたぁ…………」
「ハッハッハーッ!まあそういう時もあるぜ!次だよ、次!それまでにシッカリ実践訓練積んでおけって!」
ガックリと肩を落として丸くなったバルトロメイを、自分の馬も荷馬車に繋いだラジムという冒険者がバシバシと背中を叩いて慰めた。
偉そうなことを言ってはいるがラジム自身も3年前に冒険者登録したばかりの20歳の青年で、シェイジンの弟子である。
剣よりも馬の扱いに長けているため、いずれは冒険者ではなくどこかの騎士団に所属したいと思っているが、その加入試験のための資金を稼ぐために、師匠と共に旅をしていた。
今回の護衛依頼を受けたのは師匠であるシェイジンだが、彼自身が引退後の再就職先を見据えたのと、弟子のラジムに団体行動を経験させる目的もあるとバルトロメイに話してくれた。
面倒見のいい師匠にふさわしく、やはり気のいい弟子のラジムはどうやらバルトロメイを弟弟子の立ち位置にしたいらしく、何かと稽古をつけてくれるだけでなく、他の冒険者たちがバルトロメイにアレコレ言い寄ろうとするのも防いでくれる。
もちろんそんなラジムたちの妨害を快く思わない者や手癖の悪そうな連中は、ドファーニが伝令や世話焼き役として各グループに配置している従業員から報告され、次には依頼が出たとしても雇用契約には至らない。
それがわかっているのは何度もこの護衛依頼を直接指名されている冒険者たちで、彼らは積極的にバルトロメイにも不届き者たちにも関わらずに護衛に徹し、戦闘によって負傷した者はドファーニから十分な危険手当が約束されている。
だからといってバルトロメイがラジムに連れてこられれば親しく話をし、少しでも稽古をつけてくれと頼まれれば2人まとめて面倒を看てもくれる。
冒険者としてまったく経験のないバルトロメイと、3年ほど先輩といえどランク的にはまだDランクに上がり切れないラジムを教えるのは楽しいらしく、いつの間にか若輩者に指導をする熟練者グループと、それに反発する若いがランクの高い冒険者グループというふうに分かれてしまった。
重傷の一歩手前ぐらいの怪我を負った者はいたものの、ほとんどはかすり傷かそれすらも負っておらず、ついでに荷物についても一切強奪はされなかった。
しかも彼らが当て込んでいた人的資源──『女』に関してはドファーニ商会の町支店に行けば従業員がいるので同行しておらず、ましてや奴隷なども連れていないため、最初から望みが叶うことはなかったのである。
「……結局僕は役に立ちませんでしたぁ…………」
「ハッハッハーッ!まあそういう時もあるぜ!次だよ、次!それまでにシッカリ実践訓練積んでおけって!」
ガックリと肩を落として丸くなったバルトロメイを、自分の馬も荷馬車に繋いだラジムという冒険者がバシバシと背中を叩いて慰めた。
偉そうなことを言ってはいるがラジム自身も3年前に冒険者登録したばかりの20歳の青年で、シェイジンの弟子である。
剣よりも馬の扱いに長けているため、いずれは冒険者ではなくどこかの騎士団に所属したいと思っているが、その加入試験のための資金を稼ぐために、師匠と共に旅をしていた。
今回の護衛依頼を受けたのは師匠であるシェイジンだが、彼自身が引退後の再就職先を見据えたのと、弟子のラジムに団体行動を経験させる目的もあるとバルトロメイに話してくれた。
面倒見のいい師匠にふさわしく、やはり気のいい弟子のラジムはどうやらバルトロメイを弟弟子の立ち位置にしたいらしく、何かと稽古をつけてくれるだけでなく、他の冒険者たちがバルトロメイにアレコレ言い寄ろうとするのも防いでくれる。
もちろんそんなラジムたちの妨害を快く思わない者や手癖の悪そうな連中は、ドファーニが伝令や世話焼き役として各グループに配置している従業員から報告され、次には依頼が出たとしても雇用契約には至らない。
それがわかっているのは何度もこの護衛依頼を直接指名されている冒険者たちで、彼らは積極的にバルトロメイにも不届き者たちにも関わらずに護衛に徹し、戦闘によって負傷した者はドファーニから十分な危険手当が約束されている。
だからといってバルトロメイがラジムに連れてこられれば親しく話をし、少しでも稽古をつけてくれと頼まれれば2人まとめて面倒を看てもくれる。
冒険者としてまったく経験のないバルトロメイと、3年ほど先輩といえどランク的にはまだDランクに上がり切れないラジムを教えるのは楽しいらしく、いつの間にか若輩者に指導をする熟練者グループと、それに反発する若いがランクの高い冒険者グループというふうに分かれてしまった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる