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憧れない者。
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普通冒険者になるというのは憧れよりも成り上がりを夢見る者が多い。
成り上がるのに金を稼ぐというのはもちろんだが、冒険者の中でも人気の職といえば『剣士』や『戦士』などの前衛、攻撃魔法が仕える『魔法使い』などである。
その中でも最高ランクの『勇者』にまでレベルアップすれば大きな討伐に向かわなければならない義務を背負うこともあるが、平和な状態であればまさしく最高の名誉と最高のギルド報酬と最高の賛辞を受け取れる存在となれるのだが──
「……興味、無いのか?」
「えぇと……」
「あの……マスター……」
「うん?」
息を止めるように身を潜めていた受付嬢が、恐る恐るという感じで紙の挟まったファイルを差し出す。
そんなものよりバルトロメイの反応が鈍いことの方に気を取られ、おざなりに差し出されたファイルを眺めたが、一瞬ギョッとしたように目を見開いてバルトロメイの顔とその紙とを視線を行き来させた。
「え…な……」
今はまだマロシュ老の依頼を完了してないため、そしてほとんど人助けでギルドを通さない仕事でもまったく魔物を討伐していないせいで経験値が入っていないのは当然なのだが、見たこともないマークがそこに表示されている。
幸運・対人運 ∞
「幸運…対人運…何だこりゃ……?」
「あの……それ、たぶん彼は神殿で誰かに師事されていたのでは……」
「あっ…ああ!それでか!いや、その割には魔力がまったく……?神官上がりなら少なくとも魔力か戦闘力がある……いや、ないからこそ逃げてきて冒険者に……?」
「いえ、あのそれは違うんじゃ……彼が登録した冒険者ギルドの町にある神殿では辞めた神官はいませんし、そもそも若い神官は1人もいないということです」
「えぇ……?じゃ、あ……こいつはどこの……?いや、それはどうでもいいが!」
どうでもいいことなのかどうか判断はつきかねる顔ながらギルドマスターは、バルトロメイの更新された冒険者カードを返してくれる。
それには最初のように『職業:なし』ではなく、ギルドマスターが言ったように『勇者(見習い)』と記載されていた。
ただし変わったのはそれだけで、他の部分は新しく表示された『幸運・対人運:∞』以外はすべて空欄のままである。
「うわぁ……あれ?」
改めてカードを手にしたバルトロメイは一瞬喜んだが、自分の能力のほとんどが表示されていないのに怪訝そうな顔をする。
それを見て受付嬢はまだ申し訳なさそうな顔をし、ギルドマスターは難しそうな表情を作った。
成り上がるのに金を稼ぐというのはもちろんだが、冒険者の中でも人気の職といえば『剣士』や『戦士』などの前衛、攻撃魔法が仕える『魔法使い』などである。
その中でも最高ランクの『勇者』にまでレベルアップすれば大きな討伐に向かわなければならない義務を背負うこともあるが、平和な状態であればまさしく最高の名誉と最高のギルド報酬と最高の賛辞を受け取れる存在となれるのだが──
「……興味、無いのか?」
「えぇと……」
「あの……マスター……」
「うん?」
息を止めるように身を潜めていた受付嬢が、恐る恐るという感じで紙の挟まったファイルを差し出す。
そんなものよりバルトロメイの反応が鈍いことの方に気を取られ、おざなりに差し出されたファイルを眺めたが、一瞬ギョッとしたように目を見開いてバルトロメイの顔とその紙とを視線を行き来させた。
「え…な……」
今はまだマロシュ老の依頼を完了してないため、そしてほとんど人助けでギルドを通さない仕事でもまったく魔物を討伐していないせいで経験値が入っていないのは当然なのだが、見たこともないマークがそこに表示されている。
幸運・対人運 ∞
「幸運…対人運…何だこりゃ……?」
「あの……それ、たぶん彼は神殿で誰かに師事されていたのでは……」
「あっ…ああ!それでか!いや、その割には魔力がまったく……?神官上がりなら少なくとも魔力か戦闘力がある……いや、ないからこそ逃げてきて冒険者に……?」
「いえ、あのそれは違うんじゃ……彼が登録した冒険者ギルドの町にある神殿では辞めた神官はいませんし、そもそも若い神官は1人もいないということです」
「えぇ……?じゃ、あ……こいつはどこの……?いや、それはどうでもいいが!」
どうでもいいことなのかどうか判断はつきかねる顔ながらギルドマスターは、バルトロメイの更新された冒険者カードを返してくれる。
それには最初のように『職業:なし』ではなく、ギルドマスターが言ったように『勇者(見習い)』と記載されていた。
ただし変わったのはそれだけで、他の部分は新しく表示された『幸運・対人運:∞』以外はすべて空欄のままである。
「うわぁ……あれ?」
改めてカードを手にしたバルトロメイは一瞬喜んだが、自分の能力のほとんどが表示されていないのに怪訝そうな顔をする。
それを見て受付嬢はまだ申し訳なさそうな顔をし、ギルドマスターは難しそうな表情を作った。
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