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第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵は疑問を解決する ①
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ターランド伯爵領の統治者であるラウド・ニアス・デュ・ターランド伯爵は、上がってきた報告書のひとつに首を傾げた。
「うん……?ペンティモン伯爵……?彼は確かあと十日間ほどこちらに滞在するはずでは……?」
それは先に申し込んだ訪問を取り消し、明日にでも領都から発つという伝言である。
二日ほど前に到着したかの伯爵は現在ターランド家が領都内に所有する別邸に家族で滞在しているのだが、夫人が領都を中心とした観光をしている間にラウドに会いたいという申し入れをしてきた。
彼にはリグレと同い年の令息がおり、それを目通りさせてエレノアとの婚約を持ちかけようという心積もりでいるはずだとわかっているが、貴族としては申し込みに早すぎるということはないため会うことを了承している。
だが先にその令息がどんなものかと同じ貴族学園に所属している息子に聞いてはみたが、国軍の政務部に所属するペンティモン家の跡取りは何かとリグレに張り合って上位成績者であることを誇り、いちいち自分の知識をひけらかすように絡んでくるので面倒くさいと思っているようだった。
「……彼が義弟となるとしたら、リグレはどう思う?」
「アーウェン以外にですか?」
まさかエレノアの夫としてではなく、もうひとりの養子として問われているのかとリグレは目を瞬かせたが、父に訂正される前に質問を正しく理解し、あり得ないと首を振った。
「彼は現在、我が校のレリー・ジュンペニー嬢という介護室の室員にその……行き過ぎた言葉をかけていて……その前にも寮管理員の事務職に就いている平民の女性に対して、そ、その……同室者を追い出すから添い寝をしに来いと命令していたり……」
「はぁ?!」
リグレと同い年──十一歳の少年であればまだ母親や乳母に甘えたい気持ちはあるかもしれないが、しかし中等部に進む十三歳までには親離れしているのが常識だ。
そういう意味も込めて、貴族令息は遅くとも十歳までには貴族学園の寄宿舎に入ることが義務付けられている。
しかしリグレの言い方ではそんな子供じみた思考ではなく、明らかに色を含んだモノを感じた。
「その女性は……?」
「もちろん断っていました。しかし、ペンティモン伯爵令息は『自分の父親は王宮に勤めているため、その伝手で今の職を失わせることができる。そんな目に逢いたくなければ、今夜部屋に来て自分を慰めろ』って……たとえ平民と言えど、婚約者のいる女性に対して権力を振りかざすなどあり得ません!」
「う、うむ……まあ、そうだな……」
「僕としては同い年なのに、そんな未熟な者を義弟になどしたくはありません!あ、もちろんアーウェンは別です!アーウェンはまだ十歳にならないんですし……まだまだしっかり僕が可愛がってあげなければならないんですから!それでも、アーウェンがノアの乳母であるラリティスに添い寝をお願いしたなんて聞いたことがないですし……」
どうやらリグレは同級生が年上の女性に対して「部屋に来るように」と命じた理由はわかっているようだったが、それに伴う行為がどんなものかはわかっていないようで、ラウドとしては安心していいものやら、この先彼に待ち受ける性教育に対して悩むべきかと思ったが、とりあえずはそこが問題ではない。
「うん……?ペンティモン伯爵……?彼は確かあと十日間ほどこちらに滞在するはずでは……?」
それは先に申し込んだ訪問を取り消し、明日にでも領都から発つという伝言である。
二日ほど前に到着したかの伯爵は現在ターランド家が領都内に所有する別邸に家族で滞在しているのだが、夫人が領都を中心とした観光をしている間にラウドに会いたいという申し入れをしてきた。
彼にはリグレと同い年の令息がおり、それを目通りさせてエレノアとの婚約を持ちかけようという心積もりでいるはずだとわかっているが、貴族としては申し込みに早すぎるということはないため会うことを了承している。
だが先にその令息がどんなものかと同じ貴族学園に所属している息子に聞いてはみたが、国軍の政務部に所属するペンティモン家の跡取りは何かとリグレに張り合って上位成績者であることを誇り、いちいち自分の知識をひけらかすように絡んでくるので面倒くさいと思っているようだった。
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まさかエレノアの夫としてではなく、もうひとりの養子として問われているのかとリグレは目を瞬かせたが、父に訂正される前に質問を正しく理解し、あり得ないと首を振った。
「彼は現在、我が校のレリー・ジュンペニー嬢という介護室の室員にその……行き過ぎた言葉をかけていて……その前にも寮管理員の事務職に就いている平民の女性に対して、そ、その……同室者を追い出すから添い寝をしに来いと命令していたり……」
「はぁ?!」
リグレと同い年──十一歳の少年であればまだ母親や乳母に甘えたい気持ちはあるかもしれないが、しかし中等部に進む十三歳までには親離れしているのが常識だ。
そういう意味も込めて、貴族令息は遅くとも十歳までには貴族学園の寄宿舎に入ることが義務付けられている。
しかしリグレの言い方ではそんな子供じみた思考ではなく、明らかに色を含んだモノを感じた。
「その女性は……?」
「もちろん断っていました。しかし、ペンティモン伯爵令息は『自分の父親は王宮に勤めているため、その伝手で今の職を失わせることができる。そんな目に逢いたくなければ、今夜部屋に来て自分を慰めろ』って……たとえ平民と言えど、婚約者のいる女性に対して権力を振りかざすなどあり得ません!」
「う、うむ……まあ、そうだな……」
「僕としては同い年なのに、そんな未熟な者を義弟になどしたくはありません!あ、もちろんアーウェンは別です!アーウェンはまだ十歳にならないんですし……まだまだしっかり僕が可愛がってあげなければならないんですから!それでも、アーウェンがノアの乳母であるラリティスに添い寝をお願いしたなんて聞いたことがないですし……」
どうやらリグレは同級生が年上の女性に対して「部屋に来るように」と命じた理由はわかっているようだったが、それに伴う行為がどんなものかはわかっていないようで、ラウドとしては安心していいものやら、この先彼に待ち受ける性教育に対して悩むべきかと思ったが、とりあえずはそこが問題ではない。
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