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第一章 アーウェン幼少期
伯爵夫妻は異国の店を誘致する ③
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店主の妻であるパージェが持ってきた木箱や包み紙を手に取った侍女たちが、さっそく店の隅に並べられた土産物たちを箱に詰めていると、ロフェナがそっとラウドに囁いた。
「……旦那様、店の扉の前に先ほどの店員とは別の女性がおりますが。どうにか開けようとしているようですが、いかがいたしましょう?」
「えっ?!」
かなり耳聡いらしいパージェがその囁きを聞いてパッと顔を店の扉横にある窓ガラスから外の様子を伺い、傍で綺麗な色を付けられた木彫りの人形を抱き締めるエレノアを見守るヴィーシャムに向かって頭を下げる。
「お、奥様…奥様。お、お願いがあるのですが……」
「どうしました?」
「む、娘が……何故か、店の中に入れないみたいなんです……あ、あの……旦那様に娘を中に入れていただきたいのです……」
「えぇ?」
申し訳なさそうに頼んでくるパージェがチラチラと気遣う視線を飛ばす方を見ると、確かに窓ガラスの外で勢いよく扉を叩き、何か叫んでいる年若い女性がいた。
「ロフェナ!扉の前にこの者たちの縁者がいます!その娘だけをお入れなさい!」
「はっ!」
スッとロフェナが一礼すると、素早く扉の前に控えていた従僕が素早く扉を開け、まだ扉を叩き続けようとしていた娘の腕を掴んで引き入れると、また扉を閉める。
「え?え?ちょっと!あんたたち!うちの店で何をっ……」
先ほど追い出した女店員と似たような言葉を口にしたその娘は、母親が侍女たちに囲まれているのを見てそちらに駆け寄ると、その背に庇ってギロリと周囲の見知らぬ人間たちを睨みつけた。
「あっ、あんたたち!?ア、アタシの母さんに何かしたら、タダじゃおかないからねっ?!」
「……さすが父娘だ。同じことを言ってるな」
「ある意味、素晴らしい教育の賜物でしょう。自分の力量を顧みず、妻や母をこのように守ろうというのは見上げたもの。我が隊の者たちにもこのような教育をせねば……」
王都で大隊長であるラウドの代わりに邸と隊を護るルベラに代わって副大隊長を務めるギリー大尉がウムと頷く。
「そうだな。彼女への説明は両親に任せよう。では、ギリーはこの店と店主一家を護って、後ほど合流するように。ロフェナも外からの侵入者を許さぬよう、引き続き結界を張り続けよ」
ラウドの言葉に揃って皆が敬礼を行うのを見て、ようやく娘であるシェイラは店内中を見回す。
喧嘩や乱暴を働いている人間は誰もおらず、むしろ父親が料理を運んでいる様子を見て叫んだ。
「とっ、父さん?!何をしてるの?テアはどうしたの?いったいこの人たちは……」
「今日でこの店は閉店だ」
「え?」
「今夜から明日にかけて、引越しの準備をする。こちらにいらっしゃる護衛さんたちが俺たちを護ってくれるそうだ……もう、市長らにお前のことを狙われる心配はない」
「……ど、どういう……?」
言われていることが何ひとつ理解できず、娘は父と母の顔に視線を何度も往復させる。
「とっ、とにかく!今はここの物を持って行ってもらうんだ。アンタは厨房の物を荷造りしな!持っていきたいものは全部持って行ってくれるんだ。ああ……これで……もう、安心だ……」
とうとう緊張の糸が切れたのかパージェが泣きだすと、シェイラはオロオロと母親を慰めだしたが、侍女たちはパージェが娘に説明するのを遮ることなく手早く商品を包んでは箱に丁寧に詰めていく。
「……旦那様、店の扉の前に先ほどの店員とは別の女性がおりますが。どうにか開けようとしているようですが、いかがいたしましょう?」
「えっ?!」
かなり耳聡いらしいパージェがその囁きを聞いてパッと顔を店の扉横にある窓ガラスから外の様子を伺い、傍で綺麗な色を付けられた木彫りの人形を抱き締めるエレノアを見守るヴィーシャムに向かって頭を下げる。
「お、奥様…奥様。お、お願いがあるのですが……」
「どうしました?」
「む、娘が……何故か、店の中に入れないみたいなんです……あ、あの……旦那様に娘を中に入れていただきたいのです……」
「えぇ?」
申し訳なさそうに頼んでくるパージェがチラチラと気遣う視線を飛ばす方を見ると、確かに窓ガラスの外で勢いよく扉を叩き、何か叫んでいる年若い女性がいた。
「ロフェナ!扉の前にこの者たちの縁者がいます!その娘だけをお入れなさい!」
「はっ!」
スッとロフェナが一礼すると、素早く扉の前に控えていた従僕が素早く扉を開け、まだ扉を叩き続けようとしていた娘の腕を掴んで引き入れると、また扉を閉める。
「え?え?ちょっと!あんたたち!うちの店で何をっ……」
先ほど追い出した女店員と似たような言葉を口にしたその娘は、母親が侍女たちに囲まれているのを見てそちらに駆け寄ると、その背に庇ってギロリと周囲の見知らぬ人間たちを睨みつけた。
「あっ、あんたたち!?ア、アタシの母さんに何かしたら、タダじゃおかないからねっ?!」
「……さすが父娘だ。同じことを言ってるな」
「ある意味、素晴らしい教育の賜物でしょう。自分の力量を顧みず、妻や母をこのように守ろうというのは見上げたもの。我が隊の者たちにもこのような教育をせねば……」
王都で大隊長であるラウドの代わりに邸と隊を護るルベラに代わって副大隊長を務めるギリー大尉がウムと頷く。
「そうだな。彼女への説明は両親に任せよう。では、ギリーはこの店と店主一家を護って、後ほど合流するように。ロフェナも外からの侵入者を許さぬよう、引き続き結界を張り続けよ」
ラウドの言葉に揃って皆が敬礼を行うのを見て、ようやく娘であるシェイラは店内中を見回す。
喧嘩や乱暴を働いている人間は誰もおらず、むしろ父親が料理を運んでいる様子を見て叫んだ。
「とっ、父さん?!何をしてるの?テアはどうしたの?いったいこの人たちは……」
「今日でこの店は閉店だ」
「え?」
「今夜から明日にかけて、引越しの準備をする。こちらにいらっしゃる護衛さんたちが俺たちを護ってくれるそうだ……もう、市長らにお前のことを狙われる心配はない」
「……ど、どういう……?」
言われていることが何ひとつ理解できず、娘は父と母の顔に視線を何度も往復させる。
「とっ、とにかく!今はここの物を持って行ってもらうんだ。アンタは厨房の物を荷造りしな!持っていきたいものは全部持って行ってくれるんだ。ああ……これで……もう、安心だ……」
とうとう緊張の糸が切れたのかパージェが泣きだすと、シェイラはオロオロと母親を慰めだしたが、侍女たちはパージェが娘に説明するのを遮ることなく手早く商品を包んでは箱に丁寧に詰めていく。
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