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第一章 アーウェン幼少期
少年は謝罪を受ける ①
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また見る影もないほどに痩せていたらどうしよう──「目を覚ました」とは言っていたが、本当にただ目覚めただけで、起き上がることすらできなかったらどうしよう──
そう危惧するヴィーシャムの前で開かれた扉の奥には、確かに少しほっそりとした感はあるものの、しっかりとスプーンを持ってからとエレノアが作ったスープを口に運んでいるアーウェンの姿があった。
ベッドの上ではなく、ちゃんと椅子に座ってテーブルに着き、向かいには同じようにスープとパンを食べるエレノアもいる。
ふたりともわずかに成長して──はいなかったが、しっかりと背筋を伸ばして微笑みながら静かに食事を取っていた。
「あ!おかーしゃま!」
「母様!」
急いで自分の皿を空にすると、アーウェンは椅子を引いて立ち上がると、ゆっくりと義母の前に立つ。
「おはよう。アーウェン、エレノア。アーウェンはちゃんと食べられたみたいね……気持ちが悪いとか、不調を感じるところはないかしら?」
「お…おはようございます……えぇと……カラと、ノアのおかげで、美味しいごはんが食べられました!」
アーウェンの椅子を引いた後は直立しているカラと、テーブルに着いたままのエレノアをそれぞれ振り返り、ヴィーシャムを見上げて朝の挨拶をするアーウェンの目に揺らぎはなく、今までよりも力強く感じる。
「ええ……おはよう、アーウェン、ノア。そして……ありがとう、カラ」
「あい!おあよーごじゃます!!」
「は、はいっ……奥様っ……」
元気よく挨拶をするエレノアと、やや遅れてグッと息を詰めるようにしてから、カラも返事をした。
今家族よりも身近にいるのはロフェナではなくカラだろう──当然、アーウェンが目覚めてエレノアとふたりで魔力と祈りを込めたスープを平らげた姿に、思うものが込み上げてきたのだろう。
「今日は町長であるルアン伯爵ご夫妻がいらっしゃいます。アーウェンはロフェナと一緒にお義父様とルアン伯爵にご挨拶なさい。エレノアは私と一緒に、ジェナリー様と魔術師長様がお話されるのを聞きましょうね?カラも今後のアーウェンの食事やその他のことにまつわる話をする予定ですから、私たちといらっしゃい」
「は…はい……」
「あいっ!」
アーウェンの従者として共に伯爵たちが会う部屋で待機すると思っていたカラが戸惑い気味に返事をするのと対照的に、エレノアは元気いっぱいに右手を上げて手のひらを広げながら返事をした。
そのふたりの差に笑うヴィーシャムと、やはり態度が違うエレノアとカラを交互に見て、アーウェンは不安そうな表情を浮かべる。
「あ……あの……か、母様……カラは…僕と、一緒に行かないの?」
「ええ」
いつもの優しそうな声ではなく、きっぱりとした義母の返事に、アーウェンはビクッと震えた。
「アーウェン。必要なときにはいつでもカラはあなたの傍にいるでしょう。しかし、今のロフェナが本来の主人というべき義兄のリグレの傍にいないように、カラも自分の役目とは違うことを行い、あなたの傍を離れる時もあるのです」
「は…い……」
「そのように不安になることはありません。ルアン伯爵がいらっしゃっても、あなたひとりでお会いするわけではありません。もちろん、いずれはひとりで大切な場面にひとりで見えなければならないこともあるでしょう。その相手が敵だろうと、味方だろうと。まったく敵対の意思を持たない人が相手かもしれません。しかし、今日はお義父様がご一緒です。もちろんロフェナも控えています。必要以上に身構えることも、怖れを抱くこともありません」
その口調は厳しく、言い聞かせるというよりは学ばせる意思が含まれていることに、アーウェンは気づいたのかどうか。
義母に言われたことを何とか噛み砕いて自分なりに理解しようと思ってはいるようだが、やはり家族以外の『他人』との関わる経験が少ないアーウェンからは、不安が拭いきれないようである。
そう危惧するヴィーシャムの前で開かれた扉の奥には、確かに少しほっそりとした感はあるものの、しっかりとスプーンを持ってからとエレノアが作ったスープを口に運んでいるアーウェンの姿があった。
ベッドの上ではなく、ちゃんと椅子に座ってテーブルに着き、向かいには同じようにスープとパンを食べるエレノアもいる。
ふたりともわずかに成長して──はいなかったが、しっかりと背筋を伸ばして微笑みながら静かに食事を取っていた。
「あ!おかーしゃま!」
「母様!」
急いで自分の皿を空にすると、アーウェンは椅子を引いて立ち上がると、ゆっくりと義母の前に立つ。
「おはよう。アーウェン、エレノア。アーウェンはちゃんと食べられたみたいね……気持ちが悪いとか、不調を感じるところはないかしら?」
「お…おはようございます……えぇと……カラと、ノアのおかげで、美味しいごはんが食べられました!」
アーウェンの椅子を引いた後は直立しているカラと、テーブルに着いたままのエレノアをそれぞれ振り返り、ヴィーシャムを見上げて朝の挨拶をするアーウェンの目に揺らぎはなく、今までよりも力強く感じる。
「ええ……おはよう、アーウェン、ノア。そして……ありがとう、カラ」
「あい!おあよーごじゃます!!」
「は、はいっ……奥様っ……」
元気よく挨拶をするエレノアと、やや遅れてグッと息を詰めるようにしてから、カラも返事をした。
今家族よりも身近にいるのはロフェナではなくカラだろう──当然、アーウェンが目覚めてエレノアとふたりで魔力と祈りを込めたスープを平らげた姿に、思うものが込み上げてきたのだろう。
「今日は町長であるルアン伯爵ご夫妻がいらっしゃいます。アーウェンはロフェナと一緒にお義父様とルアン伯爵にご挨拶なさい。エレノアは私と一緒に、ジェナリー様と魔術師長様がお話されるのを聞きましょうね?カラも今後のアーウェンの食事やその他のことにまつわる話をする予定ですから、私たちといらっしゃい」
「は…はい……」
「あいっ!」
アーウェンの従者として共に伯爵たちが会う部屋で待機すると思っていたカラが戸惑い気味に返事をするのと対照的に、エレノアは元気いっぱいに右手を上げて手のひらを広げながら返事をした。
そのふたりの差に笑うヴィーシャムと、やはり態度が違うエレノアとカラを交互に見て、アーウェンは不安そうな表情を浮かべる。
「あ……あの……か、母様……カラは…僕と、一緒に行かないの?」
「ええ」
いつもの優しそうな声ではなく、きっぱりとした義母の返事に、アーウェンはビクッと震えた。
「アーウェン。必要なときにはいつでもカラはあなたの傍にいるでしょう。しかし、今のロフェナが本来の主人というべき義兄のリグレの傍にいないように、カラも自分の役目とは違うことを行い、あなたの傍を離れる時もあるのです」
「は…い……」
「そのように不安になることはありません。ルアン伯爵がいらっしゃっても、あなたひとりでお会いするわけではありません。もちろん、いずれはひとりで大切な場面にひとりで見えなければならないこともあるでしょう。その相手が敵だろうと、味方だろうと。まったく敵対の意思を持たない人が相手かもしれません。しかし、今日はお義父様がご一緒です。もちろんロフェナも控えています。必要以上に身構えることも、怖れを抱くこともありません」
その口調は厳しく、言い聞かせるというよりは学ばせる意思が含まれていることに、アーウェンは気づいたのかどうか。
義母に言われたことを何とか噛み砕いて自分なりに理解しようと思ってはいるようだが、やはり家族以外の『他人』との関わる経験が少ないアーウェンからは、不安が拭いきれないようである。
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