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第一章 アーウェン幼少期
少年は『繋がり』が切れる ⑤
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光が収まると、アーウェンは嘘のように咳き込みを止め、カラもまた肌がひときわ明るくなったように見える。
だが──
「ノア!」
「エレノア!?」
今度は幼いエレノアがアーウェンの膝の上に覆いかぶさるように倒れ伏し、そのただならぬ様子に両親は慌てて駆け寄った。
「…………スゥ~…………」
仰向けにさえれたエレノアはカクンと首を後ろに倒し、口から涎を垂らしながら穏やかな寝息を立てている。
「寝……て、いる……?」
髪は金色からさらに透き通るほど色彩がなくなり、顔色はやや青白いものの、具合が悪そうな感じはない。
アーウェンのために控えていた魔術師も傍に寄ることを許されたため、エレノアの手を取り、じっくりとその寝顔から身体全体を見回した。
「……大丈夫です。おそらく魔力を限界まで放出されたための睡眠状態のようです。このような幼齢の令嬢では稀ですがかなりの魔力をお持ちのようでしたが……今さっきより前に、何か魔術を使われたのでしょうか?」
「あ」
魔術師の言葉に一同が安堵と困惑の溜息をつく中、ロフェナが声を上げると同時に、カラも思いあたったようにロフェナを振り返り、合点がいったと頷いた。
「……後ほどご報告する予定でしたが」
「エ、エレノアが、何かしたのか……?」
「あの……こちらの応接室に呼ばれる前、執事長が来られる前でしたが……エレノア様がアーウェン様と『お茶会』を開かれまして」
あの部屋にいたのは、アーウェンとエレノア、カラとロフェナ、そしてラリティスだけであったから、事の顛末をきちんと説明していなかった。
「……というわけで、お嬢様がアーウェン様にお茶のカップを差し出し、それを持つ手のひらをそのままアーウェン様が添えられて飲まれましたところ、なぜか『守護の力』が顕現されたのでございます」
「いや……バラットから『エレノアがアーウェンに対して『守護の力』を発揮したとは聞いたが……単に一瞬というわけではなかったのだな?』
「はい。いえ……そんなに長い時間だったわけではないと思うのですが……あまりにも尊い光で……その時はエレノア様に体調のご変化はありませんでした」
また解明しなければいけないことが増えた──そうは思っても、まずはエレノアが目を覚ますまで本当に安堵はできない。
いったんはふたりを休ませるようにと応接室から子供部屋へ移動させたが、母であるヴィーシャムがついていくのを止めることはしなかった。
ラウドが話を聞こうとするより、きっといい結果が出るはずである。
だが──
「ノア!」
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今度は幼いエレノアがアーウェンの膝の上に覆いかぶさるように倒れ伏し、そのただならぬ様子に両親は慌てて駆け寄った。
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「寝……て、いる……?」
髪は金色からさらに透き通るほど色彩がなくなり、顔色はやや青白いものの、具合が悪そうな感じはない。
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「……大丈夫です。おそらく魔力を限界まで放出されたための睡眠状態のようです。このような幼齢の令嬢では稀ですがかなりの魔力をお持ちのようでしたが……今さっきより前に、何か魔術を使われたのでしょうか?」
「あ」
魔術師の言葉に一同が安堵と困惑の溜息をつく中、ロフェナが声を上げると同時に、カラも思いあたったようにロフェナを振り返り、合点がいったと頷いた。
「……後ほどご報告する予定でしたが」
「エ、エレノアが、何かしたのか……?」
「あの……こちらの応接室に呼ばれる前、執事長が来られる前でしたが……エレノア様がアーウェン様と『お茶会』を開かれまして」
あの部屋にいたのは、アーウェンとエレノア、カラとロフェナ、そしてラリティスだけであったから、事の顛末をきちんと説明していなかった。
「……というわけで、お嬢様がアーウェン様にお茶のカップを差し出し、それを持つ手のひらをそのままアーウェン様が添えられて飲まれましたところ、なぜか『守護の力』が顕現されたのでございます」
「いや……バラットから『エレノアがアーウェンに対して『守護の力』を発揮したとは聞いたが……単に一瞬というわけではなかったのだな?』
「はい。いえ……そんなに長い時間だったわけではないと思うのですが……あまりにも尊い光で……その時はエレノア様に体調のご変化はありませんでした」
また解明しなければいけないことが増えた──そうは思っても、まずはエレノアが目を覚ますまで本当に安堵はできない。
いったんはふたりを休ませるようにと応接室から子供部屋へ移動させたが、母であるヴィーシャムがついていくのを止めることはしなかった。
ラウドが話を聞こうとするより、きっといい結果が出るはずである。
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