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お客様名 加瀬七海様

受付・4

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ふと意識が戻る。

何が起こったのかわからない七海の目の前には、さっきまでの妖精もがいなくなってしまって、代わりにきれいな女の人が座っていた。
「何回もごめんなさい……あっ、わかります?私……」
「よ、妖精さん………?」
さっきのキラキラした光の玉やそれから変化した妖精よりもずっと人間らしい・・・・・その人のことを、何故か七海は『ひかり』と名乗ったあの光の玉と同一だと理解した。

理屈なんて、わからない。

そのお姉さんが『そう』だから、そうなのだ。
「あっ!覚えててくれたんですね!すご~い!嬉しい!!お客様の中には、『楽しい』とか『話した』っていう記憶だけ残って、あんまり内容を覚えててくれない人もいるとか……」
「えっ、そ、その……ごめんなさい……」
その『お姉さん』がハァッと溜息をつくと、七海は何故か怯えて思わず謝ってしまった。
「あー……いえ。こちらこそ、ごめんなさい。ええと……確認のために、七海さんの氏名と年齢をもう一度教えてもらえます?」
七海がキョトンとして首を僅かに傾げるのに構わず、おねえさんが空中で指を弾くようにまわすと、何の音もせずに板ファイルと虹色の大きな羽根がついたペンがその手の中に現れる。
まるで魔法のようなその光景に七海は驚いてゴクンと唾を飲み込んでから、お姉さんに「どうぞ」と言われるままに言葉を紡いだ。
「しめい…ええと、なまえは『かせ ななみ』…はっさい……」
「うん…うん…う……えっ?!は、八歳っ?!」
カリカリと羽根ペンを動かして名前を書き留めていた輝は何故か驚いた声を出して顔を上げると、七海を見つめた。
そのまま大きく目を見開いて七海の顔にその視線を留めたまま、また年齢を繰り返す。
「はっ……さい……」
「うん。このあいだおたんじょうびで、はっさいになったの!」
「はっ…さ、い……」
七海は自慢げに右手をパッと開いて左手は人差し指と中指、薬指を立てて『八』とやってみせたが、輝はそっと目を伏せてそう呟きながら、さらにファイルに何か書き込みながら言葉を続けた。
「えぇ~と……そ…そか……そかそか……そう言えばそういうこともあるって……そうか……七海さ……いえ、七海ちゃんは八歳かぁ……じゃあ、どっか行きたい国とか『こんなことしたいな~』とか、希望ってあんまりないかなぁ?」
「え?」
輝の言っている意味がよく分からず、今度は七海の方が目を大きく開いて困ったような笑みを浮かべるその顔を見つめた。
「きぼう……?したい…こと……?」

あたしのしたいことって、なんだっけ?


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