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分からせパート
第10話 立夏ちゃん、下呼び
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何やら教室内が静かになった。
何故だ。
……僕が何かしたんだ。
「今、立夏ちゃんって……」
七崎さんが声を漏らす。
水泳が男女混合と聞いて気持ちが上がっていた僕は、鹿波ちゃんのノリで七崎さんも下呼びにしてしまった。
だが、引くわけにはいかない。
作戦は、強引に攻める。
このまま押し通そう。
「嫌だったかな?」
「いや、じゃないけど……。どうして私のことだけ下呼びしたの?」
いきなり核心を突いてきた。
「……ねえ、どうして?」
そう言って、にじり寄ってくる七崎さんの様子は明らかにおかしかった。
息は荒く、頬が紅潮し、瞳は何やら欲望の光がギラギラと宿っている。
「立夏ちゃん……?」
「知ってますよ。下呼びしてくれたってことは……“そういうこと”なんだって」
……どういうこと?
「そういうことっていうのは分からないけど、僕はただ、立夏ちゃんともっと仲良くなりたいだけだよ」
「そうですか。私も日浦くん……いえ、大晴くんと仲良くなりたいな」
「じゃあ僕らは気が合うね」
顔を見合い、笑い合う。
「でも気を付けてね。誰にでも愛想をふりまいていると、いつか勘違いされて、そのうちストーカーみたいな女子が出てくるよ」
「それは怖いね。その時は立夏ちゃんに助けてもらうよ」
「本気で心配しているんだよ? けれど、大晴くんがそう言うなら分かった。危ない時は私が助けるね」
と、また2人顔を見合わせ、笑い合う。
先程から静かなクラスメイトたちは、僕たちを見守っているのようだ。
「ほんと、大晴くんは隙がありすぎて心配」
「隙ってどういうこと?」
「その内分かるよ。ただ今言えることは、もっと危機感を持った方が良いってこと。女子はみんなケダモノなんだから」
「立夏ちゃんもケダモノなの?」
ここで七崎さん……もう立夏ちゃんでいっか。
立夏ちゃんの笑顔が固まる。
「……さぁ? どうでしょう」
「あはは、はぐらかされちゃった。でも僕は立夏ちゃんがケダモノになったところも見てみたいな」
「っ、」
かなり露骨なアピールでからかうと、立夏ちゃんの言葉が止まった。
……ふう、いっぱい話した。
ヘタレな僕にしては女の子と自然に話せたと思う。
それに、こうやって挑発しても、この学園にいる限り中々手を出してこないだろう。
立夏ちゃんの次なる言葉を待っていると、高橋に肩を叩かれる。
「日浦くん、ちょっと外に出ようか?」
「そうだよ、日浦くん。俺らとお話しがあるから」
「え、なになに2人とも。え、ちょっと!!」
「あらあら。朝のホームルームまでには帰ってきてくださいね~」
にこやかな笑顔を浮かべる立夏ちゃんに見送られ、高橋と田中に連れられた。
*****
大晴が去った後。
立夏の周りには、残された女子たちが集まっていた。
「なになに!? 立夏さんと日浦くん、そんなに親しかったの~!」
「この前の体育の時、お姫様抱っこしたのだって、やっぱり2人はそういう関係なの!!」
「みんな落ちついて。私も急に話しかけられて、ビックリしたよ」
「で、実は付き合ってるとか?」
「ないない」
立夏は話を早く切り上げたいが、興奮が冷めない女子たちは、さらに彼女にズイッと近づいてくるだけ。
「本当に?」
「本当」
「生徒会特権で既に童貞を奪ったとかないよね?」
「大丈夫。そんなことしないから」
ハッキリとした立夏の言葉にクラスの女子たちは胸を撫で下ろしていた。
(それにしても、彼が私のことを下呼びにしてくれるなんて……これは、ちょっとは期待してもいいのかな)
何故だ。
……僕が何かしたんだ。
「今、立夏ちゃんって……」
七崎さんが声を漏らす。
水泳が男女混合と聞いて気持ちが上がっていた僕は、鹿波ちゃんのノリで七崎さんも下呼びにしてしまった。
だが、引くわけにはいかない。
作戦は、強引に攻める。
このまま押し通そう。
「嫌だったかな?」
「いや、じゃないけど……。どうして私のことだけ下呼びしたの?」
いきなり核心を突いてきた。
「……ねえ、どうして?」
そう言って、にじり寄ってくる七崎さんの様子は明らかにおかしかった。
息は荒く、頬が紅潮し、瞳は何やら欲望の光がギラギラと宿っている。
「立夏ちゃん……?」
「知ってますよ。下呼びしてくれたってことは……“そういうこと”なんだって」
……どういうこと?
「そういうことっていうのは分からないけど、僕はただ、立夏ちゃんともっと仲良くなりたいだけだよ」
「そうですか。私も日浦くん……いえ、大晴くんと仲良くなりたいな」
「じゃあ僕らは気が合うね」
顔を見合い、笑い合う。
「でも気を付けてね。誰にでも愛想をふりまいていると、いつか勘違いされて、そのうちストーカーみたいな女子が出てくるよ」
「それは怖いね。その時は立夏ちゃんに助けてもらうよ」
「本気で心配しているんだよ? けれど、大晴くんがそう言うなら分かった。危ない時は私が助けるね」
と、また2人顔を見合わせ、笑い合う。
先程から静かなクラスメイトたちは、僕たちを見守っているのようだ。
「ほんと、大晴くんは隙がありすぎて心配」
「隙ってどういうこと?」
「その内分かるよ。ただ今言えることは、もっと危機感を持った方が良いってこと。女子はみんなケダモノなんだから」
「立夏ちゃんもケダモノなの?」
ここで七崎さん……もう立夏ちゃんでいっか。
立夏ちゃんの笑顔が固まる。
「……さぁ? どうでしょう」
「あはは、はぐらかされちゃった。でも僕は立夏ちゃんがケダモノになったところも見てみたいな」
「っ、」
かなり露骨なアピールでからかうと、立夏ちゃんの言葉が止まった。
……ふう、いっぱい話した。
ヘタレな僕にしては女の子と自然に話せたと思う。
それに、こうやって挑発しても、この学園にいる限り中々手を出してこないだろう。
立夏ちゃんの次なる言葉を待っていると、高橋に肩を叩かれる。
「日浦くん、ちょっと外に出ようか?」
「そうだよ、日浦くん。俺らとお話しがあるから」
「え、なになに2人とも。え、ちょっと!!」
「あらあら。朝のホームルームまでには帰ってきてくださいね~」
にこやかな笑顔を浮かべる立夏ちゃんに見送られ、高橋と田中に連れられた。
*****
大晴が去った後。
立夏の周りには、残された女子たちが集まっていた。
「なになに!? 立夏さんと日浦くん、そんなに親しかったの~!」
「この前の体育の時、お姫様抱っこしたのだって、やっぱり2人はそういう関係なの!!」
「みんな落ちついて。私も急に話しかけられて、ビックリしたよ」
「で、実は付き合ってるとか?」
「ないない」
立夏は話を早く切り上げたいが、興奮が冷めない女子たちは、さらに彼女にズイッと近づいてくるだけ。
「本当に?」
「本当」
「生徒会特権で既に童貞を奪ったとかないよね?」
「大丈夫。そんなことしないから」
ハッキリとした立夏の言葉にクラスの女子たちは胸を撫で下ろしていた。
(それにしても、彼が私のことを下呼びにしてくれるなんて……これは、ちょっとは期待してもいいのかな)
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